劔岳 点の記のレビュー・感想・評価
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日本映画の王道。コレは本物!
CG、デジタル全盛のこの時代に、敢えて“人間力”で挑んだ本作。力技の感じられる、正に“本物の映画”でしたよ。
名カメラマン木村大作入魂の監督デビュー作。これまで、数々の日本映画の名作を撮り続けてきたその手腕は、本作でも如何なく発揮されております。『空撮を使わずに、山の映画を撮る』なんて、常人では考えられないことを、この映画ではやってしまっているんです。そしてその映像は、もう“圧巻”という他に表現のしようがないほど、見事な仕上がりで、スクリーンに映し出されます。ホント、素晴らしい!!ただただ脱帽です。
映画そのものは、非常に淡々としたペースで物語が進んでいきます。ホントに淡々としてまして、描かれているテーマからすると、もっと盛り上がりがあってもいいのでは?と感じられるほどでした。しかし全編を通して流れる、池辺晋一郎 氏の手による音楽と相まって、“古き良き時代の日本映画”というテイストがプンプンしてくる“大人の映画人による本物の映画”だったと思います。木村監督の思い、そしてそれを受けた役者達、スタッフ達の熱い思いが伝わってきます。
当時、地図の作成は国防の観点から行われていたのだということも、なかなか興味深い話ですし、“陸軍VS山岳会”というような争いがあったことも、歴史的に面白い話だと思います。ご存知の方もおられたでしょうが、吾輩は初めて知りましたので、結構導入部から話にひきこまれていきました。そういう歴史物(それも近・現代の)としての映画としても、充分見応えのあるものに仕上がっています。
公開前に、あちこちのTV特番で、監督やメインキャストたちが出演して、撮影時の裏話なんかを話してましたが、これが相当ムチャで面白かったんですよ!『そんなことしたら、死んじゃうよ!』てなことが、平気で山の上では行われていたようでして…。でも皆さん、とても充実した顔をしておられるんですね。うん、一つの大きな仕事をやり遂げたって感じで。この映画は“泣かされる”というより、その映像の美しさ、素晴らしさに“圧倒される”と言った感動が味わえます。やはり映画館の大スクリーンでこそ、その良さを体感していただきたいですね。興行の方も大ヒットだそうですが、この映画が当たるっていうのは、イイことだと思います。日本という国のマーケティングの健全性を認識する上でも。うん、ホントに“イイ映画”でした。
劒岳
日本映画の新しい名作
CGや空撮を一切使わず、文字通り体当たりでこのシャシンを完成させた演技陣にも撮影陣にも、惜しみない拍手を送りたいと思います。
日本を代表するカメラマンとして、数多くの仕事を手掛けて来た木村大作氏だからこそ撮ることのできた、拘りの映像は、時に息をのむほど美しく、時に過酷な自然の猛威を臨場感一杯に捕えてくれました。
この物語の一つの背景として、日本の近代登山を先駆して来たとの強烈な自負心を持つ帝国陸軍参謀本部は、創設間もない日本山岳会が未踏の剱岳を目指すことを知り、剱岳初登頂を是が非でも陸地測量部にさせねばならないと決めたことがあるのだけれど、その至上命令を下された測量技師たちは純粋で、日本地図の空白を埋めるために剱岳に三角点が必要だとの思いから、粛々と測量の仕事をこなしながら、登頂を目指します。
その過程で、何のために地図を作るのかを改めて考え、それはその地域に生きる人々のために作るのだ、との結論に達し、「人がどう評価しようとも、何をしたかではなく、何のためにそれをしたかが大事」だと悟ります。そして彼らは、初登頂に成功するのですが、剣岳山頂で彼らが目にしたものは・・・
この山頂直下で、案内人の宇治長次郎が測量手の柴崎芳太郎に、山頂への第一歩を譲ろうとしたのに対し「あなたはもう仲間なのだから、先に行ってください」と言い、他の技術者たちも力強く頷く場面には、山屋のはしくれとして、思わず涙がこぼれました。
そして、帝国陸軍の不条理さ。高級軍人の、人の命も尊厳もまるで意に介さない非情な姿(まぁ、そうでなければ戦争など遂行できませんね^^;)も、定型的ではあるけれど、良く描けていたと思います。
そして、演技陣・制作陣の職種を分けることなく、「仲間たち」として平等に並べられたエンド・タイトルにこの作品を仕上げたことへの誇り。この作品に関わったことへの誇りが、見事に表現されていたと思います。
僕は新田次郎の作品は好きで、かなり読んでいるのだけれど、この作品は読み落としていました。是非読んでみたいと思います。
「日本映画」の最新作
古き良き日本映画らしい日本映画でした。
日本映画を代表出来る作品だと思います。
近年の利益を見込んだ大衆作品がとても小さく見えました。
昔ながらの演出、愚直なまでに“生”にこだわったCG・空撮なしのリアルな画、
そのすべてが「日本映画」というジャンルに対して敬意を表していました。
僕のような若者にとってそういった古き良き演出は、逆に新鮮で、新しかったです。
浅野忠信、香川照之がメインキャストですが、この2人の存在感は抜群、流石の貫禄でした。
その台詞ひとつひとつが重みが有りました。
役所広司も良い味でした。
そして、僕は宮崎あおいさんのファンなので宮崎あおいさんが出てるから観に行った愚かな若者なんですが(笑)、宮崎あおいさんの存在感はまさに紅一点。
篤姫の以来の和服姿で、その容姿は貫禄のオーラを纏っていて、良き日本の妻を演じ切っていました。美しい存在感。
しかし、「(山登りの)男たちを支える家族」というテーマもこの作品では掲げていますが、そこはあまり描き切れていないのが残念でした。
測量士たちの生き様がメインで、家族は二の次になってしまっていたのが残念です。
全体的に真面目な…実直な作りの映画で、僕みたいな若者がもの申すのも申し訳ない程です。
ただ心のままに、感じたままに受け止めます。
撮影時の苦労を実感^^
木村大作監督の宣伝効果あってか
たくさんの年配の方々が観に来てましたね^^
とにかくスケールが大きい!!!
壮大な山岳地で、
実際に重い荷物を背負ってのキャスト陣の苦労が
そのまま映画の表情にリアルに滲み出ていて
自然と闘う男達の偉大な姿に涙が出ました。
特に香川さんの演技には圧巻!!!
本当に「山の男」って感じで迫力がありました^^
彼で正解っ!
私たちが何気なく見ている日本地図。
その中には、
昔の人たちの生と死を賭けた壮絶な生きざまが
隠れていたんですね。
これからは、
地図を見る時の気持ちが変わりそうです。
6月23日109シネマズ高崎にて観賞
驚愕の山岳映像なのだけれど、人物描写が足らなくて淡々としてしまったところが惜しいです。
昨年の完成ラッシュの感想通り、驚愕の映像でした。
冒頭の劔岳山麓の紅葉シーンは、山の頂上まで紅葉が登り詰めていて、息をのむ美しさです。立山連峰を仰ぐ映像は、一つ一つの山々のカットが重厚で神々しく映し出されていました。映像から推察される撮影位置から、撮影隊の困難さが忍ばれます。
本作は、ドキュメンタリーのように自然現象とも格闘していました。春から始まる本番の登頂シーンでは、山頂に近づくほど冬景色となります。吹雪の中でも登り続けるシーンや低気圧の通過で、考えられないような暴風雨のなかを出演者もスタッフも耐えながら撮影したシーンに感動しました。どうしてそうまでして映画に取り組むのかと。
それだけではありません。松田龍平は、雪崩のシーンで数メートルも穴のなかに実際に埋められてしまったり、劔岳南壁では、崖から墜落し、雪原を滑落していくシーンに挑戦していました。仲村トオルも、雪の崖から足を滑らし、ロープ一本にしがみつき助け出されるというシーンなど全編を通じて、危険なシーンが多々あり、よく無事で帰ってこられたものであると驚きました。
映像面ではもうしない分、ストーリーでは人間の喜怒哀楽がセーブされてしまったキライがあります。
何しろ中心人物の柴崎が寡黙な男なので、感情移入しづらかったのです。劔岳征服を競わされている日本山学会の一行にも淡々とした態度で、ライバル心のかけらも見せません。
宮﨑あおいが演じる柴崎の妻葉津よがとても甲斐甲斐しく、そっと夫に気付かれぬようお守りを登山リュックに忍ばせるなど、夫を慕う心情がとても良かっただけに、もう少し夫婦の葛藤を描いても良かったのではないでしょうか。
命の危険もある登山であるのに、裏庭にピクニックでも行ってくるかのように、無表情に柴崎は劔岳を目指すのです。葉津よが不安がるところがないのは、チョット考えられませんね。
カメラマン上がりの木村監督は、もう撮影に一杯一杯で、心理描写まで気持ちが回らなかったのではないでしょうか。
長治郎の葛藤も不十分でした。測量隊が山岳信仰の中心地を汚す行為だと非難する村人や行者の抗議の声を強調しておけば、息子との不和の理由がよく見えてきたことでしょう。でも、その息子からの手紙で、オヤジの仕事として認めてくれたとき流す、長治郎の涙には、ホロリときました。
どんな子供も親の背中を見て育つのでしょうか。
ホワイトアウトになって、吹雪で行く手が閉ざされても、登山者のためにベストを尽くそうとする長治郎の人間味に惚れました。香川照之の熱演ぶりは実良かったです。
さてストーリーのキモとして、陸軍の直轄の陸地測量部で唯一残った立山連峰の三角点設置に取り組むという内容。けれども軍部は、地図の作成よりも、山岳会に劔岳の初登頂を超されたくないというメンツで、柴崎に登頂を厳命します。
そのためストーリーでは、想像を絶する苦難のなかで柴崎はなんども、何のために地図を作るのか、その理由を求めて、苦悩します。
名誉とか対面とか、そうした計らい心を満たす目的でなく、何のために為そうとするのか志を問えという、先輩測量者の励ましは、柴崎だけでなく見ている観客にも、深く考えさせるテーマになっていました。あれだけ過酷な映像を見せつけられると、見ている方も、何であそこまでして地図を作らなければならないのかとため息が出そうです。
柴崎を心強くしたのは、山岳会のリーダー小島のメッセージでした。ともに劔岳の登頂の厳しさに直面するなかで、ただ上るだけの自分たちに比べて、測量という使命を背負った柴崎たちに深い敬意を示すのです。
そんな山岳会のメンバーに手旗信号で君たちも仲間だと伝えるラストシーンにジンときました。
とにかく200日も劔岳に閉じ込められて、こんな映像を取ったこと自体に感動してしまう凄い作品です。出演者たちの苦行ぶりを目に焼き付けるだけでも、CG慣れしてしてしまった映画ファンの目から鱗が落とせることでしょう。
実直な作品作り
「誰かが行かねば、道はできない」当時、測量隊が山に対して向き合ったであろう自然への畏怖と挑戦、それと同様の精神で撮影を敢行したスコープ・サイズの映像は、文句なしに美しく壮大で険しい。そんな自然を背景に、柴崎は淡々と任務を遂行し、それを見守る長次郎の目が優しい。このふたり、どちらが主役といってもおかしくない名演だ。
映画的な面白さという点では、「黒部の太陽」や「海峡」の枠を出ないベタな内容だが、作品作りが実直である。なんの前触れもなく浮かび上がるタイトルからも見て取れる。こうした時間と手間を掛けた映画は、ハリウッドを含めてももう作られることはないかもしれない。
そんな作品に関わることができた人々の誇りと歓びが、肩書きのないエンド・クレジットに威風堂々と表れていた。
ご苦労様です!
すばらしい映画でした
体感できる
アルペンルートに行きたい!!
絶景!この景色を見るだけでも価値有り!
この映画は日本地図の完成の為にまだ未踏だった劔岳を
登頂するまでの話なのですが、
その劔岳を登るための登頂ルートを検討するため、
その時点で雲より高い位置まで登っています。
そんなシーンが、冒頭から直ぐ用意されています。
絶景、絶景、ホントに凄いゼッケイなのです。
夕陽で雲の絨毯がオレンジ色に輝いている様は素晴らしい
絶景です。
役者も
浅野忠信や香川照之に、役所広司や宮崎あおい
といった芸達者な人達を集めているのですから水準以上です。
いちゃもんをつけるとするならば、
これだけの「ホンモノ」を集めている割には
胸に迫るものが弱いって事でしょうか。
でも、今回は
木村監督のこだわりにこだわった
劔岳の風景を
堪能する価値、おおありだ!
と思います。
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