トランスフォーマー : 映画評論・批評
2007年7月24日更新
2007年8月4日より日劇1ほかにてロードショー
ロボットたちが闘うアクションだけの作品ではない
車やジェット機、CDラジカセなどが、部品ひとつひとつを作動させつつ、瞬時にロボットに変形する様を1カットで描いたCG映像は圧巻! しかも、破壊されるビルなどは、すべて実写。見たこともない重量感あふれるスリリングなバトルの連続に、息を呑む。
とはいえ、善と悪とに分かれたロボットたちが、人類を巻き込んで闘うアクションだけの作品ではない。スピルバーグのアイデアで、16歳の少年サムを物語の軸としたため、正義の側のロボットたちの考えをサムと共に知り、表情のない彼らにいつしか感情移入してしまう。何より彼らが、人間を傷つけまいとする設定がいい。マイケル・ベイ作品では、派手なアクションに興奮しても、多くの一般市民が犠牲になっていることを連想させ、冷めることが多かった。だが、今回は、人間に危害が及びそうになると、正義のロボットたちが身を呈して守り、気持ちよく楽しめる。
シャイア・ラブーフが、イケてないサムを豊かな表情と声で体現。その自然な軽さと戸惑いが笑いを生む一方、ひたすら走ってヒーローとなり、親しみがもてる。サムが思いを寄せるミカエラに扮したミーガン・フォックスも、独特の存在感があって魅力的。また、秘密捜査官に扮したション・タトゥーロもおかしな味わい。正義のロボットたちの車への執着など、突っ込み所も多いが、スリルとユーモアがバランスよく溶け合い、嫌みのない自己犠牲と勇気が胸を打ち、一気に楽しめる。
(山口直樹)