監督・ばんざい! : インタビュー
鈴木杏インタビュー
「北野組は凄く心地良かったですね」
――北野組初参加となりましたが、監督の印象は?
「今までのイメージだと、バイオレンスな感じのものが強くて、凄い迫力があって、怖い方なのかなあと思っていたんですが、実際に会ってみると、静かな感じで、北野監督の映画に空との境界線が分からないような海が出てきますよね。あんな海のような方だと思いました。物静かなんだけど、たまに喋る一言がとても面白いんですよ。特に現場で突然話し出すことが、凄く面白いんです。アドリブは本当に凄いですね」
――北野作品というと、シナリオはあって無いようなモノと言われますが、今回は?
「一応、詐欺師の母娘という設定はありましたが、あまり信じないでねと言われてました。だから、役作りもリサーチもあまりしませんでしたね。それに詐欺師ではあるんですが、詐欺師というよりはお金に飢えている変な母娘という感じでした。そんな2人が玉の輿に乗ろうとするんだけど、どんどん貧乏になっていく話なんです(笑)」
――本作の撮影で直接監督からアドバイスされたことは?
「劇中で、あひるのぬいぐるみを持っているんですが、その動きとか、ズッコケるところですかね? 私自身の役に関してはあまり無かったです」
――北野映画の常連、岸本加世子さんとの共演は如何でしたか?
「お互いにペットのことを話し合ったり、撮影場所の近所で一緒に買い物をしたりとか楽しくさせていただきました。私は勝手に岸本さんの横に座って頼りにさせて頂きました。『HANA-BI』を小学校の低学年か幼稚園のときくらいに父親と一緒に見たんですが、独特の雰囲気、音楽、色、人と人との距離感っていうのは凄く印象に残ってます。未だに覚えてますね」
――今までの北野映画の中で、何が一番好きですか?
「まだ全部見返せていないので、どれか一つを選ぶの難しいです。でもビギナーとしては『座頭市』から入るのもいいのかもしれないですよね。『座頭市』は公開時に1人で映画館に見に行ったんですけど、入りやすかったです。あとは『キッズ・リターン』も好き。この前見たんですが、次の日はかなり元気になりました」
――北野演出の魅力は?
「北野組のチームワークは本当に素晴らしいです。余計なことは何も話さなくても分かり合える雰囲気で、特殊な空気、連帯感があります。それは凄く心地良かったですね」
――これからの目標は?
「これしか出来ないというのもあるし、やっぱり女優として生きていきたいですね。理想の女優像は粘土です。監督に色々と細工される素材のような存在になりたいんです。でもその細工されるような存在として現場にいるためには、体調管理も含めて、そんなに簡単なことじゃないと思うんですよ」
――やっぱり映画が好きなんですね。
「いまは『空中庭園』の豊田(利晃)監督とか、『スクラップ・ヘブン』のリ・サンイル監督とか邦画を追いかけるので精一杯なんですが、『バッド・エデュケーション』の(ペドロ・)アルモドバルとか『アモーレス・ペロス』の(アレハンドロ・ゴンザレス・)イニャリトゥとか、これからはもっと海外の映画も見ていきたいです。でも、24時間で生活していこうと思うと映画って本当に見るのが難しいんですよね。睡眠時間を削ってじゃないと中々難しいから、仕事がないときや元気なときじゃないと辛いですね」