劇場公開日 2007年6月2日

監督・ばんざい! : インタビュー

2007年6月1日更新

89年のデビュー以来、映画の常識を次々と壊してきた北野武監督による13本目の映画「監督・ばんざい!」が間もなく公開される。新作は自らの分身とも言えるキタノ監督が7本の異なった映画を頓挫させ、最終的にある詐欺師母娘と朴訥な男のドラマを撮るまでの紆余曲折を描いたコメディ映画。前作「TAKESHIS'」に引き続き、再び自分と向き合った北野監督と、北野組初参加となった鈴木杏に話を聞いた。(編集部)

北野武監督インタビュー
「今回のは無茶なんだけど、俺は割と好きな映画なんだよ」

北野武監督
北野武監督

――世間では「映画の時代はもう終わりだ」と言われていますが、監督自身はこの映画というメディアの行き詰まりをどのように考えてますか?

「自分に対する映画のイメージがギャング映画、“死”を扱ったテーマと、固定されてきて、『TAKESHIS'』あたりで一番酷いところにきてしまって、『こりゃ、まずい。こういうイメージを全部取っ払わないと、新しい作品にいけないな』と思って、この『監督・ばんざい!』を撮ったんだよ。これを撮っている最中に、自分にとっての新しい映画の概念というのが分かってきて、この映画を撮ったことで、お陰様で抜け出しましたっていう感じになったんじゃないかな。これで、“ドカーン”と今までの自分のキャリアを全部取っ払ったから、また次にいけると思うんだよね。撮ってるときに、次のアイデアも出てきたし、大分楽になったよ。だから、『監督・ばんざい!』で頓挫する企画倒れの映画って言うのが、今の世界の行き詰まった映画みたいなものなんだと思うよ」

――行き詰まりのネガティブな力をプラスの方向に転じさせるために、何か特別な努力はしたのでしょうか?

「確かに俺は行き詰まっているんだけど、大抵、俺は行き詰まる前に逃げる方だからね。物事を突き詰めたことっていうのは一度も無いし。要するに、俺は今まで一つの仕事に収まっていたことはないんだよ。みんな逃げてるんだよね。漫才師になったのも逃げだったし。大学も機械科だったんだけど、『どうせ出世しないから』とか言って学園闘争の前に逃げてんだよ。そんで、浅草で漫才師になるじゃない。これも漫才ブームになる頃には『どうせ終わりだ』とか言って、逃げてるんだよ。その後もラジオへ行っては逃げて、映画に行っても逃げてっていう感じでね。俺は目先が利くんだな。ずっと一つの仕事に食い下がらないんだよ。映画についても、映画を愛していそうで、俺くらい映画に対して冷たい奴もいないと思うよ。『どうせ映画じゃないか』って内心思ってるしね。黒澤(明監督)さんは映画を愛してると公言していたけど、俺は映画に対して、LOVE(愛する)、LIKE(好き)でいったら、HATE(憎い)だからね。馬鹿にしている所があるんだよ。だから、平気で当たらない映画をこうして作り続けて来れたんだろうね(笑)。今までやってきて、一つしか当たったのがないんだよ」

追い詰められていた?! 北野監督
追い詰められていた?! 北野監督

――それは観客の方がついてこられないんじゃないですか?

「そう思いたいけど、実際に興行成績をみると、『なんで、こんな映画が入るの?』っていうのがあるし、タイトルを聞いただけで、その映画がどんな内容かがわかる映画ばっかりだし、『その映画は泣けるんですか?』とか下らないこと聞く人もいるしで、そういう奴らのために映画を作ってもなんだかなあって思うところもある。そういう映画の作り手には絶対なりたくないっていうのはあるよね。でも、『じゃあ、あんた客の入る映画を作ることが出来るの?』って言われると、それもそうだなと(笑)。それで、『監督・ばんざい!』では、客の入りそうな映画を作ってはみるけど、結局はお笑いに逃げてしまってるという感じなんだ(笑)」

「北野武監督インタビュー(2)」に続く

インタビュー2 ~北野武監督インタビュー(2)
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