傷だらけの男たち : 映画評論・批評
2007年7月3日更新
2007年7月7日より日比谷みゆき座ほかにてロードショー
犯人が負い続けた“傷”に注目
オスカー4部門受賞の「ディパーテッド」に続き、すでにディカプリオ主演によるハリウッド・リメイクが決定。まさに、世界が注目する「インファナル・アフェア」製作チームの最新作は、ふたたび2人の男が火花を散らすサスペンスである。
ときにバイオレントな顔をみせる、トニー・レオン演じるエリート刑事のヘイ。彼の部下から酔いどれ私立探偵になった、金城武演じるポン。まぁ、勘がよければ、冒頭のシーンで犯人の正体がわかってしまうだろう。だが、ふたたびハリウッドを魅了した脚本が焦点を置いたのは、単なる犯人探しではない。「なぜ、彼は犯行に及んでしまったのか?」という、犯人が負い続けた傷である。それを念頭に置いて観ることで、彼の深い悲しみがより伝わってくるという仕掛けである。それはまた、SARSや不況、レスリー・チャンの自殺といった、03年に連続した衝撃的な事件から未だ癒えない香港人の姿にも重なっており、本作も03年に起こるエピソードから幕を開ける。
ちょい不良なメガネ男子と化したトニーに、愛する女性の死を機に酒に溺れていくハードボイルドな金城という、主演2人の新たな魅力を拝むことはできる。だが、より重厚なドラマを追究した結果、「インファナル~」に比べ、サブ・キャラの掘り下げ方が甘いのは否めない。それだけに、前作をいい意味でハリウッド大作に変えた、リメイク・チームの力技が今から気になる。
(くれい響)