ロゼッタのレビュー・感想・評価
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画面に半分だけ映り込む「優しさ」
ドキュメンタリー監督だったダルデンヌ兄弟の特長といえば手持ちカメラだ。本作でも主人公ロゼッタのあとを追いかけるように続くカメラは実に印象的。
このカメラワークのせいなのか、映されている内容とは関係なく「怖さ」があるのもダルデンヌ兄弟の特長ではなかろうか。
何か突然ホラー映画のように怖いことが起こりそうな予感がある。まあ大概は何もないんだけどね。それでも観ていて過剰に体が強張って緊張感を生む。
本作は貧しい暮らしの少女がしたたかに生きようとする姿を描く作品だ。
他のダルデンヌ兄弟の作品でも見られる傾向だが、善と悪の境界線が中心かと思う。善と呼ぶのは少々大袈裟かもしれない。悪に落ちるのが精神的に許されるのはどこまで?自分の中に眠る良心が許容できる範囲はどこまで?そんな白でも黒でもない灰色を描く。
そんな中にダルデンヌ兄弟は一筋の優しさを差し込む。これもまた彼らの特長かもしれない。
ほんの少しだけ優しさがあれば世界は変わるかもしれないという想いなのだろう。
ダルデンヌ兄弟の作品の共通するメッセージのようにも思う。
今回の優しさはラストの一瞬にだけ表れる。
ロゼッタの告発により仕事をクビになったリケはバイクでロゼッタに対して嫌がらせをする。
死のうとしたがガス切れで死ねず、新しいボンベを運び込もうとするロゼッタは、生きることも死ぬこともできず絶望しうずくまる。
そんなロゼッタに歩み寄り助けようとするリケの姿でエンディング。
リケはロゼッタを恨んでいるから嫌がらせをしていたわけだが、それでも助けようとする少しの優しさ。
主に移民の貧困層を描くダルデンヌ兄弟の、皆が少しだけ優しくなれば何かが変わるのではないかという些細なメッセージが好きだ。
大それたことは言わず観る者誰にでも届く小ささがいい。
何もよくなどなっていないけれど、ラストのあの一瞬だけでロゼッタはまだ大丈夫と思える。
何故8番の窓口で生活保護の申請を受けないのか?
こんな馬鹿な母親は捨てるべきだ。
この主人公の母親もここまでかたくなに自我を通そうとするからには、真剣に逃げるべきである。
さて、この映画の映像は落ち着きがなく、目が回りそうだ。撮影効果がどこにあると言うのだろうか?視野が狭く、色や輪郭もぼやけていて、スッキリしない。そう言った効果をねらっているのかもしれないが、その得られた効果の成果が見えない。多分、終止『やりたくない事をせわしくやらせれる不快感』を描いているのだろうが、僕にとってはこの映画を見る事に不快感を感じた。
早く生活保護を受けて、母親を追い出し、病気を治すべきだ。必死で生きようとしているって言うが、この主人公の行動を見ていても、女性としての叡智が全く見えない。つまり、ジジイが描いた可哀想な少女のお話って事だ。まぁ、
多分、ここまで身を落とせば、女性ならば、身を売る事になる。しかし、ジジイはそう言った過酷な現実からは目を背ける。つまり、フォンテーヌは哀れで、エポニーヌは愚かで、コゼットの様な純真無垢な少女だけを物語は救済するのだ。
多分、少女は裏切って懸命に生きるのだろうが。
やっぱりね。そら、裏切った。
日本人はこの映画見て、これがフランス人と思うべからざり。フランス人はこう言った場合、組合を作る。組合を作って、労働者は団結して、搾取から自分達の身を守る。今でもそうである。この少女の行動がかなり特殊だったから、カンヌで賞を取ったと思う。故に『PLAN75』もフランス人から見たら、考えられない発想なのだろう。
つまり、親離れ出来ない、自己中心的な男勝りな性格の少女は、いくら可愛くとも、仕事にありつけないって言っている。そして、最後に音楽に才能があると勘違いしているけど、割りと穏やかなイケメン君が助けてくれるから、それを信じて彼に付いていきなさいって事でしょ。
追記
やっぱり、フランスのジジイの発想だ。
『シャーロットの姫』はイギリスのアーサー王伝説だ。フランス人には分からないのかなぁ?
仕事を見つけ、友達ができて、その中に私を見つけて。これがまっとうな...
仕事を見つけ、友達ができて、その中に私を見つけて。これがまっとうな生活であり、失敗しない様にと自分自身に言い聞かせて眠りにつくロゼッタを抱きしめてあげたくなった。
バイクの音が耳から離れない。うざったいのに、ほっとする。
懸命に生きる少女が、どうしても耐え切れず流した涙
総合:80点
ストーリー: 80
キャスト: 85
演出: 85
ビジュアル: 70
音楽: 0
出演者のすぐそばで回されるカメラ。音楽すら排して、映像はまるでドキュメンタリーのような生々しさ。映画が終わりタイトルバックとなっても音楽が流れないほどの徹底振り。それらの演出が真実味を帯びて迫ってくる作品。
キャンプ場でトレーラーハウスに住み、殆どホームレス寸前という貧困の境遇で、家族はお荷物でしかないアル中の母親だけ。時々原因不明の腹痛を抱えても医者に行く金などあるはずもなく、今日も仕事が見つからずに池でこっそりと魚を獲る。それでも強く懸命に前向きに生きようとする少女ロゼッタ。そんな彼女だからこそ、職を失ったときには感情を爆発させ、職を得るためには奇麗事だけではないことまでする。
孤独に生き抜いてきた彼女には、リケの見せる好意を素直に受け取ることが出来ない。彼女はあらゆる施しを拒否する孤高の気高い心を持つ少女である。怒りを爆発させることはあるけれども、いつも笑顔も見せることもなく、何があっても決して泣くこともない。それほどに孤立無援な戦いを続ける少女の心が遂に折れてしまったとき、耐え切れず初めて見せる涙。そんな生き様が心に響いた。
これできっと彼女は、時に人が無償の好意や優しさを見せることもあることに気がついたのではないか。人の温もりに気がついて人を信じられるようになるのではないか。いつの日にか彼女がささやかな幸せにたどり着くことを願った。それもリケと共にそう遠くない日に。
主演のロゼッタを演じるのは新人のエミリー・デュケンヌで、生年月日から逆算してこの撮影当時はほぼ役どおりのたぶん17歳くらいか。強がる幼さを見事に演じていて、かなり好感が持てた。
フランス語だからフランス映画かと思ったが、ベルギーを舞台にしたベルギー・フランス共同映画らしい。そういえばベルギーの言葉もフランス語だし、ワッフル屋が登場していた。
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