サイダーハウス・ルール

ALLTIME BEST

劇場公開日:

解説

セント・クラウズの孤児院で生まれたホーマーは、父のように自分を育ててくれたラーチ院長の後を継ぐべく医術を学んでいた。しかし将来に疑問を抱き始めていた彼は、ある日若いカップル、キャンディとウォリーと共に孤児院を飛び出す。初めて見る外の世界、初めての外の仕事──ホーマーはリンゴ農園で働き、収穫人の宿舎“サイダーハウス”で暮らし始める。ほどなく軍人のウォリーは戦地へ召集され、残されたホーマーとキャンディは次第にお互いに惹かれていく。アカデミー賞で作品賞、監督賞ほか7部門にノミネート、助演男優賞(マイケル・ケイン)と脚色賞(ジョン・アービング)を受賞した。

1999年製作/126分/アメリカ
原題:The Cider House Rules
配給:アスミック・エース
劇場公開日:2000年7月1日

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5.0俺たちが作ったルールじゃない

2024年5月31日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

アメリカの大統領選挙と、それぞれの支持層に関わる動きの中で、今なお中絶禁止がホットな話題になっている。
最近でも、160年前の中絶禁止法が有効だと、アリゾナ州の最高裁が判断したり、今度はそれを州議会がひっくり返して無効化したりと、宗教的な問題や倫理観や女性の人権というよりは、幾分政治的な駆け引きを感じる。
ただ、日本でも経口中絶薬(アフターピル)がなかなか審査を通らなかったり、その使用の仕方について今も議論が分かれたりと、難しい問題なのは事実だろう。

この映画を初めて観た20数年前は、中絶について、それほど考えたこともなかったし、自分自身の知識も無かった。
配信で懐かしいタイトルを見つけ、今回、何気なく鑑賞したのだが、中絶に関わる問題に限らず考えさせられることが様々で、自分にとってタイムリーな映画だった。

映画の中で一番刺さったのは、季節労働者のリーダーのローズが、寝泊まりしている“サイダーハウス"の壁に貼られている“ルール”に対して発した「俺たちが作ったルールじゃない」という言葉だ。

為政者が統治する者に対して(あるいは、資本家が労働者に対して)一方的に示したルール。しかも、文字が読めないので、彼らはその中身を知らない。それ故に、何かしら得体の知れない存在感を持って、そこには厳然たる主従関係が存在していることを常に感じさせる役割を持った紙。

映画の後半でローズは問う。
「ここの住人は誰だ? りんごを潰してサイダーをつくり、後片付けまでしているのは? 酸っぱい空気を吸いながら暮らしているのは?」
そしてこう続ける。
「規則を作ったのは、ここの住人じゃねぇ。守る必要もない。俺たちが作るべきだ。今日から毎日。」

この言葉は、望まない妊娠により、様々な意味で子どもを育てられない親たちも、そして、その親や生まれた孤児たちに関わってきているラーチ院長はじめ孤児院の人々も、同様の思いなのではないか。
それ故にラーチは、ホーマーには医術を教え、経歴の偽造までして、自分の後釜に据え、孤児院の存在を守ろうとする。
自分はキリスト教に詳しくないので、孤児院の人々がどのようなスタンスの教義を信じているのか、映画の中の表現だけからは読み取れないが、現実問題として、毎日駆け込んで来る人々に対応している中で、その人に必要な措置を行っている孤児院は、まさに毎日、ルールを自分たちでつくり出している現場だ。

それにしても、何とか引き取ってもらおうと、養子を探しに来る人たちにアピールする子どもたちが切ない。
選ばれなかった子たちの尊厳を守りつつ、選ばれて行った子たちの幸せも祈るやりとりは、みんなで生み出した工夫なのだろう。

その他にも、様々な視点で考えさせられる問題がいくつも出てくるが、ストーリーとしてとても無理なくまとまっているのは、原作のジョン・アーヴィングが脚本を担当していることが大きいと思う。
それぞれのシーンごとの映像も美しく、心に残る。
また、りんごの収穫の仕方やコンテナの片付け方など、自分の経験とも重なり懐かしかった。

Huluで視聴。

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sow_miya

5.0【following様の鑑賞リストから選んで観てみた】 豊かな、あ...

2024年2月4日
PCから投稿

【following様の鑑賞リストから選んで観てみた】
豊かな、あまりにも豊かな対話に、ため息が出ます。
Tranquillo Ma Deciso(’おだやかに、決然と)。
人物たちのことばの波に、心が浮かび、押し流され、引き戻される。

見終えて、そのまま一人になりたくなりました。
しゃべりたくないし、聞きたくもないこころ持ち。

字幕が意味不明で、途中で吹替えにしたら、なんとか、それでも深くひたることができた。
M.ケインの声で物語を追えないのは悔しいけど、中村正さんの語りは素晴らしい。
大事なとこだけ後で原語再生した上で、両雄甲乙付け難し。
Wキャスト。

【印象深い会話を3つ】
「・・・みんな信じるかな?」
「信じるさ。。。信じたいからね」

「女性は大勢見てきたけど何も感じなかった」
 ※註:孤児のメアリ=アグネスに失礼(^^;)

「僕は医師じゃない。すみません、戻れません。」
「謝るのか?私は、謝らないゾ。何も後悔していない。お前を愛したこともね」
 ※ホーマーが涙を流す理由、こんな厚い心情、説明できない。

・・・BGMのピアノがズルいよ~モぉ(泣)。

【子供が成長するための通過儀礼】
子は、親のくびきから脱し、成り行き任せで振舞って、行き詰まり、自ら道を切り開く。
一方的に押し付けられた就業規則(Cider-house Rules)を破り捨て、己が人生の王座に着く。
それは、親が毎夜毎晩、子供に向けて願う希望。
「おやすみ、メイン州の王子達、ニューイングランドの王達よ。」
親の愛、子の成長に尊さを感じる。

すべてが美しく紡がれたお話をたどり、心が静かになる心地よさ。
半面、観念的な物語でもあり、細かい突っ込みどころも少々。
かなりブランク経ってるのに施術、危なくない?
あと、ラストシーンの演技はみんなちょっとクサいかな(ご愛嬌)。

からだの中に
深いさけびがあり
口はそれ故につぐまれる
(谷川俊太郎「からだの中に」抜粋)

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雨丘もびり

3.0まあ徘徊型ではあるが。

2023年12月31日
PCから投稿
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プライア

4.5原作が好きで

2023年8月29日
スマートフォンから投稿

サイダーハウスルールは原作が好きで、映像化されたのを知り楽しみにしていました。

映像になっても原作の世界観がしっかり感じられ、個人的にとても好きな映画です。

映画では語り尽くされなかった物語の片隅を覗くのに、映画を見るとまた原作が読みたくなる映画です。

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むらさき
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