サイダーハウス・ルール

ALLTIME BEST

劇場公開日:

解説・あらすじ

セント・クラウズの孤児院で生まれたホーマーは、父のように自分を育ててくれたラーチ院長の後を継ぐべく医術を学んでいた。しかし将来に疑問を抱き始めていた彼は、ある日若いカップル、キャンディとウォリーと共に孤児院を飛び出す。初めて見る外の世界、初めての外の仕事──ホーマーはリンゴ農園で働き、収穫人の宿舎“サイダーハウス”で暮らし始める。ほどなく軍人のウォリーは戦地へ召集され、残されたホーマーとキャンディは次第にお互いに惹かれていく。アカデミー賞で作品賞、監督賞ほか7部門にノミネート、助演男優賞(マイケル・ケイン)と脚色賞(ジョン・アービング)を受賞した。

1999年製作/126分/アメリカ
原題または英題:The Cider House Rules
配給:アスミック・エース
劇場公開日:2000年7月1日

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5.0人生とは

2025年2月5日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

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キウイジャム

4.0不可解な寮則

2024年8月27日
PCから投稿

サイダーハウスルールは超簡単に言うと妊娠中絶が道徳的に間違っていると考える若者が、実際に世の中を体験して、それが必要なものだと知る──という話です。

セントクラウドはラーチ博士(マイケルケイン)が院長をつとめる孤児院兼産院です。
博士は望まない妊娠をした女性の出産を手伝って赤ん坊を預り、ときには違法の堕胎も請け合う、博愛と現実主義を併せ持った赤ひげタイプの医師です。

孤児のホーマー(トビーマグワイア)はラーチ博士にたいして継父の恩義がありますが、外世界への好奇心が抑えられずりんご農園に就職します。

サイダーハウスルールが風変わりに見える理由は、登場人物が世に偏在する貴賤や差別から解放されているからです。
たとえばホーマーはラーチ博士の後継者としての医師から最底辺の期間農業労働者に転職します。北部とはいえサイダーハウスルールには黒人差別がありません。

倫理観が介入しないこともサイダーハウスルールの特徴です。ホーマーは職場仲介者であるウォーリー(ポールラッド)が戦地へ赴いている間に、あっさりとその妻キャンディ(シャーリーズセロン)の間男になります。仕事仲間のローズが懐妊したのは実父の子供でした。

英語のサイダーはりんご発酵酒のことだそうです。
サイダーハウスとはリンゴ農園の期間労働者が寝泊まりする宿舎であり、そこに誰も読んだことがない寮則(サイダーハウスルール)が貼ってあります。字をよめるホーマーが来たことでようやく書かれた内容があきらかになります。曰く、

ベッドでタバコを吸わない
飲酒したら粉砕機に触らない
屋根の上でランチをしない
暑くても屋根で眠らない
夜には屋根に上がらない

これらの寮則は、そこで現実におこっていたこと、たとえばキャンディと不倫したこと、あるいはローズが実父にやられていたこと、ローズの実父アーサーが自刀して決着をつけたこと──などに比べるとあまりにも的外れです。
現実には「屋根の上でランチをしない」ことよりも深刻な問題を抱えた期間労働者たちが無用のルールに縛られていることが風刺的にタイトルに反映されているのです。

そのことに敷衍して、中絶の問題は人命と倫理と宗教が絡み合い、反対に立脚する者の執心は頑ななものですが、世の中には望まない妊娠が存在します。
望まない妊娠が存在するのなら、それは外野の争論がどうであろうと、身籠もった当人が決めていいことです。
子を望まない妊婦に中絶をさせないのは、人権侵害以外のなにものでもありません。

すなわち「屋根の上でランチをしない」というルールをつくった者には、じっさいにそこで働いている者の気持ち=じっさいに妊娠した者の気持ちなんて分からない──とアーヴィングは言っているのです。

ウォーリーはビルマ上空で撃墜され下半身麻痺となり、ラーチ博士はエーテルの過剰摂取で亡くなります。ホーマーはローズの堕胎を請け負ったことで、ラーチ博士のあとを継ぐことを決意し、セントクラウドに帰ります。

2000年のアカデミー賞にてマイケルケインが助演男優賞、自身の小説を脚色したアーヴィングが脚色賞をとりました。筋書きが映画用に柔らかく変更されているそうです。

労働者のひとりをHeavy Dが演じていました。ロートルならNow That We Found LoveやマイケルジャクソンのJamでラップをやったHeavy Dを覚えているかと思います。

わりと知られた痛セレブ情報ですが、トビーマグワイアは誠実そうな見た目ですがモリーズゲーム(2017)でモデルとなったモリーブルームのポーカールームの最大顧客であり、性格は陰湿で最悪だった──と彼女に暴露されています。

imdb7.4、RottenTomatoes71%と77%。

サイダー(欧州読みのシードル)は酒だけでなく広義ではりんご飲料全般を言うそうです。80年代に大塚製薬からシンビーノアップルという炭酸飲料が販売されていました。当時は炭酸で果汁値の高いりんご飲料は珍しく、高価な飲み物でした。シードルというとあれを思い出します。

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津次郎

5.0俺たちが作ったルールじゃない

2024年5月31日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

アメリカの大統領選挙と、それぞれの支持層に関わる動きの中で、今なお中絶禁止がホットな話題になっている。
最近でも、160年前の中絶禁止法が有効だと、アリゾナ州の最高裁が判断したり、今度はそれを州議会がひっくり返して無効化したりと、宗教的な問題や倫理観や女性の人権というよりは、幾分政治的な駆け引きを感じる。
ただ、日本でも経口中絶薬(アフターピル)がなかなか審査を通らなかったり、その使用の仕方について今も議論が分かれたりと、難しい問題なのは事実だろう。

この映画を初めて観た20数年前は、中絶について、それほど考えたこともなかったし、自分自身の知識も無かった。
配信で懐かしいタイトルを見つけ、今回、何気なく鑑賞したのだが、中絶に関わる問題に限らず考えさせられることが様々で、自分にとってタイムリーな映画だった。

映画の中で一番刺さったのは、季節労働者のリーダーのローズが、寝泊まりしている“サイダーハウス"の壁に貼られている“ルール”に対して発した「俺たちが作ったルールじゃない」という言葉だ。

為政者が統治する者に対して(あるいは、資本家が労働者に対して)一方的に示したルール。しかも、文字が読めないので、彼らはその中身を知らない。それ故に、何かしら得体の知れない存在感を持って、そこには厳然たる主従関係が存在していることを常に感じさせる役割を持った紙。

映画の後半でローズは問う。
「ここの住人は誰だ? りんごを潰してサイダーをつくり、後片付けまでしているのは? 酸っぱい空気を吸いながら暮らしているのは?」
そしてこう続ける。
「規則を作ったのは、ここの住人じゃねぇ。守る必要もない。俺たちが作るべきだ。今日から毎日。」

この言葉は、望まない妊娠により、様々な意味で子どもを育てられない親たちも、そして、その親や生まれた孤児たちに関わってきているラーチ院長はじめ孤児院の人々も、同様の思いなのではないか。
それ故にラーチは、ホーマーには医術を教え、経歴の偽造までして、自分の後釜に据え、孤児院の存在を守ろうとする。
自分はキリスト教に詳しくないので、孤児院の人々がどのようなスタンスの教義を信じているのか、映画の中の表現だけからは読み取れないが、現実問題として、毎日駆け込んで来る人々に対応している中で、その人に必要な措置を行っている孤児院は、まさに毎日、ルールを自分たちでつくり出している現場だ。

それにしても、何とか引き取ってもらおうと、養子を探しに来る人たちにアピールする子どもたちが切ない。
選ばれなかった子たちの尊厳を守りつつ、選ばれて行った子たちの幸せも祈るやりとりは、みんなで生み出した工夫なのだろう。

その他にも、様々な視点で考えさせられる問題がいくつも出てくるが、ストーリーとしてとても無理なくまとまっているのは、原作のジョン・アーヴィングが脚本を担当していることが大きいと思う。
それぞれのシーンごとの映像も美しく、心に残る。
また、りんごの収穫の仕方やコンテナの片付け方など、自分の経験とも重なり懐かしかった。

Huluで視聴。

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sow_miya

3.0まあ徘徊型ではあるが。

2023年12月31日
PCから投稿
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