「人生に仮託する航海、航海に仮託する人生」海の上のピアニスト あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
人生に仮託する航海、航海に仮託する人生
久しぶりに映画らしい映画を観た。筋書きはスッキリ、登場人物のセリフははっきり聞き取れ、無駄な映像的チャレンジはない。ヨルゴス・ランティモスとかアリ・アスターとかばかり観ているとこちらの精神的バランスがおかしくなるからね。たまにはこういう正統派の映画を観なくては。
この監督は「ニュー・シネマ・パラダイス」で映画と人生を並列してみせた。この映画では船と人生、そして音楽が一体になった姿を描く。船と人生っていうと「白鯨」のエイハブ船長とか「海底二万マイル」のネモ船長とかファナティックな話が多いんだけど、この場合は船乗りじゃなくてピアニストなんでね。スマートです。
私は、映画冒頭の乗客がアメリカを発見する(自由の女神を見つける)くだりと、ダニーが子供を拾い「1900」と名付けて育てるあたりがとても好きです。この映画、1900とマックスの交流が主体でその他の船に取り組んでいる人達があまり出てきません。もちろん、イタリア語完全版(170分!)は違うのかもしれないけど。
何と言っても、エンリオ・モリコーネの音楽ですね。先に書いた映画冒頭で集客の一人が自由の女神を見つけて移民たちがアメリカについたんだ、と感激、感動するシーンに高らかにモリコーネのオーケストレーションがかぶさります。
泣きそうになりました。ああ、もうモリコーネもバート・バカラックもいなくなったんだって。
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