THE 有頂天ホテル : 映画評論・批評
2005年12月27日更新
2006年1月14日より日劇3ほか全国東宝洋画系にてにてロードショー
売れっ子三谷幸喜が豪華キャストで送るお楽しみ玉手箱だが
「ラブ・アクチュアリー」や「オーシャンズ11」を見て、「日本でも同様の映画は出来ないのか」と歯軋りしていた人も多いはず。売れっ子脚本家でもある三谷幸喜監督がやってくれました。ホテルを舞台に、年越しまでの2時間のドラマで出るわ、出るわの豪華キャストが。そんな玉手箱のようなお楽しみを味わうには十分。だが、心の底からは笑えなかったのである。
本作品はホテルの従業員と一癖も二癖もある宿泊客が、数々の問題を乗り越える人情喜劇だ。究極のところ、観客に「こんなホテルに泊まってみたい」と、思わせたら成功だろう。ところが老舗ホテルなのに、誰が見たって娼婦然とした篠原涼子がロビーをうろつき、客室係役の松たか子は、客の貴金属や服を勝手にいじる。クライマックスには、歌手を目指しているベルボーイ役の香取慎吾がスウィート・ルームで歌うと、隣のスウィート・ルームまでその歌声が聞こえてしまう。まさにドラマ「ホテル」の高嶋政伸だったら「申し訳ございません」と謝りっぱなしの事件がゴロゴロ。こんなホテル、イヤだ。
思えば三谷氏のドラマ「王様のレストラン」は、あの料理を食べてみたい、レストランへ行きたいと思わせる説得力があった。笑いも良いけど、まずはホテルとしてのリアリティ。そこをきちんと考えて欲しかったと、無類のホテル好きは思うのである。
(中山治美)