劇場公開日 1954年2月6日

「何度観ても泣ける自信がある名作」素晴らしき哉、人生! sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 何度観ても泣ける自信がある名作

2025年9月24日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

今から約80年前の作品。
カリグラフィーで記された紙が、一枚ずつめくられていくオープニングクレジット。もうそれだけで心を奪われる。

ニューヨーク州ベッドフォールズという小さな町に住むジョージ・ベイリーは、苦労して学費を稼ぎ、やっと大学に進もうとしていた。そんな折に父が倒れる。彼は、住宅金融の会社を継いで、ずっとこの町で過ごしていくことになる。
優しく正義感が強いので、友達には恵まれるが、溺れそうな弟を助けて左耳の聴力を失ったり、バイトしていた薬屋さんのミスを事前に止めたのに殴られたりと、小さな頃から割にツイてないジョージ。
それは大人になっても同様で、ジョージを快く思わないポッターの策略にはまり、自分には関係ないトラブルによって穴の空いた8,000ドルを、自分の生命保険で当てるしかないところまで追い込まれるのだが…という話。

彼を助けるために、天から遣わされたのは、2級天使で、クラレンスという名の小太りおじさん。
そのクラレンスの目線で、観客も一緒にジョージの半生を振り返る前半と、クラレンスがジョージの前に姿を見せて、自殺を止めてからの後半。
どちらもそれぞれに面白いが、あとは観てのお楽しみということで、内容に触れるのはここまで。

公開当時は、あまりヒットしなかったようだが、1970年代からは、毎年クリスマスになるとテレビ放映されてきた作品らしい。
自分も、何度観ても泣ける自信がある。
本当に名作だと思う。

ところで、今作は、放送大学の「231オーディトリアム」を録画視聴。
宮本陽一郎教授のコメントが最初と最後に入ったのだが、それがとてもよかった。

宮本教授は、コメントの中で「その感動がどのような力によって生み出されたのか。それを考えてみることは、ある国、ある時代の文化を知るための大切な窓となる」と語られていたが、その言葉にとても納得した。
映画の背景となっているその国のその時代の文化はもちろんのこと、その作品を観て感動している自分は、どの部分に感動しているのか考え直してみると、今の日本の文化的な状況との重なりで、見えてくるものが色々あると思ったのだ。(今作から何が見えてきたかは、個人的なことなので、ここでは触れない)

宮本教授が語られた、本作がつくられた1946年の背景と、監督のフランク・キャプラ監督のことは、なるほどと思ったので、少し書き残しておきたい。
まずアメリカは、第二次世界大戦中、女性の社会進出が経済を支えていたということ。それが、戦後になって1600万人の兵士が帰還することになり、彼女たちの仕事は、そっくり彼らに引き渡さないといけない状況になった。
そうしたことが、スムーズに行われるようにするためには、「文化の力を借りる必要があった」というのが宮本教授の話。
戦時中は、女性が腕まくりをして力こぶを握る「We can do it」というポスターが貼られて、国力を落とさないために、女性の社会進出が図られたが、戦後すぐにつくられた今作では、ヒロインは、家庭に入って子どもを育てる「良妻賢母」として描かれ、政府が望ましいと考える姿を描き出しているというのだ。
そんな今作の監督であるフランク・キャプラは、6歳の頃アメリカに移住してきたイタリア系移民だったとのこと。そんな出自もあってか、大戦中は、政府の求める戦意高揚映画の製作に取り組み、中尉まで出世して、アメリカンドリームを体現させてきたらしい。
政府から直接頼まれた訳ではないにしろ、キャプラのそういう時代の空気に敏感な部分が、民衆の心をつかむのかもしれない。

何気なく見える設定にも、そんな背景があるんだということに触れて振り返った本作は、より一層感慨深いものになった。

sow_miya
NOBUさんのコメント
2025年9月24日

今晩は。コメント有難うございます。
 矢張り、今作は絶対的な名作ですよね。ではでは。

NOBU
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