劇場公開日 1954年2月6日

「バックボーンはアメリカの寄付社会・共助の精神?」素晴らしき哉、人生! talkieさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0バックボーンはアメリカの寄付社会・共助の精神?

2024年9月12日
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鑑賞方法:DVD/BD

<映画のことば>
一人の人生は大勢の人生に影響を与える。
その者が欠ければ、すべてが変わる。
わかったかね?
君の人生は素晴らしい。
それを捨てようなど、大きな間違いだ。

もちろん、評論子も住んだことがないので、その雰囲気はわからないのですけれども。
しかし、時あたかも「寛容の季節」のクリスマス。
孤立無援のジョージは、アメリカ社会が内包している共助(寄付精神)に救われたということで「人生だって、捨てたものではない」といったところでしょうか。

「One for all、all for One」(一人は皆のために、皆は一人のために)というのは、本来はラグビーのプレー精神を表すことばと聞き及びますけれども。

いずれにしても、本作のバックボーンには、「寄付社会」「共助社会」としてのアメリカがあることには、多言を要しないと思います。

そして、父子二代にわたってジョージが経営していた住宅融資組合というのは、日本になぞらえて言えば、「無尽」の仕組みらしいですね。

「無尽とは、一定の口数と給付金額を定めて加入者を集め、加入者が積み立てた定期的な掛金に基づき、抽選ないし入札などにより、順番に給付を受ける仕組みのこと」(日本無尽株式会社のHPから:三菱UFJ銀行のグループ会社?)
関東地方では無尽あるいは無尽講、関西地方では頼母子講(たのもしこう)あるいは単に頼母子と呼ばれることが多いようです(Wikipedia)。

そうであれば、本来はまったくの他人同士人たちが構成する相互扶助の組織という感じのようですね。
本作でも、相互扶助という、アメリカの国民性を暗喩するアイテムなのだろうと思いました。評論子は。

本作は、評論子が参加しているデスカフェで、2017年版が話題になったので、その鑑賞の前提として、まず本作を鑑賞することにしたものでした。
2017年版は未観ですけれども。
聞いた評では、同作は、また本作とは違った視点から描かれているようです。

1954年という製作年次をも併せ考えると、本作も、なかなかの良作ではあったと思います。

(追記)
聞くところでは、アメリカ国民の年間寄付額は、日本人30倍ともいわれ、彼我には格段の差があるようです。

それでも、日本にも(ささやかながら?)寄付の精神が根づいていることを、忘れてはいけないと思います。

「報恩仕法」という考え方のうちの「推譲」というのがそれで、江戸時代の篤農家・二宮尊徳が広げた考え方と聞きます。

[至誠]誠を尽くすという心の持ち方
[勤労]「至誠」を行動で表した状態
[分度]己の分を知り、贅沢を慎む(分に従って度を立てる=自己の財力に応じて予算を立て、合理的な生活設計を行う)
[推譲]至誠、勤労、分度に努めた結果として残った余剰を他に譲る。

別作品『飛んで埼玉』になぞらえて言えば、これは「神奈川県民」のバックボーンとも聞き及びますけれども。
そういう心がけは素敵だと、改めて思い起こさせてもらえた一本でもありました。評論子には。

<映画のことば>
友ある者は、幸せである。

talkie