スチームボーイ : 映画評論・批評
2004年7月15日更新
2004年7月17日より日比谷映画ほか全国東宝洋画系にてロードショー
知恵と勇気と科学の熱血空想冒険活劇
産業革命が始まっておよそ1世紀、世界に冠たる大英帝国の帝都ロンドンで、第1会万国博覧会が今まさに開かれようとしている19世紀半ば。その開催を目前にして、発明一家スチム家の祖父と父が開発した究極の蒸気エネルギー源“スチームボール”――この世紀の大発明が“お宝”で、その争奪を巡ってスチム家3代目のレイ少年の冒険がスタートする。
……と、プロットはいたってシンプルだが、祖父と父の確執の核となるのは、人類平和への貢献にもなれば悪魔の発明にもなりうる科学技術の両義性で、この不朽のテーマが作品のバックボーン。つまりは、ジュール・ヴェルヌの血筋をひく、知恵と勇気と科学の熱血空想冒険活劇なわけで、その醍醐味をストレートに堪能させてくれる2時間ちょっと。
タイトルが「鉄腕アトム」の英題“アストロボーイ”を連想させたり、監督が「メトロポリス」の脚本を手掛けたせいでもあるまいが、監督らしいこだわりを随所に見せながらも、テイストは手塚治虫に酷似しているのもおもしろい。そして、エンド・クレジットの“絵”は、ニュー・ヒーロー“スチームボーイ”誕生後の活躍ぶりをかいま見せてくれ、すっかり嬉しい気分になる妙手だ。
(高橋良平)