白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々のレビュー・感想・評価
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白バラのゾフィーのように信念を貫き通すこと。そんなことが若い頃の自分にできたであろうか。
「勝ち組」「負け組」とハッキリ区別したがる人が多い今の世の中では、自分さえよければそれでいいという個人主義の考えの人がほとんどなのかもしれません。裏切られたという「痛さ」を味わったことのある人じゃないと他人の痛みは理解できないかもしれませんし、優柔不断な世渡り上手じゃないと生きていけない世の中なのかもしれません。
前半、ビラ配りによって逮捕された21歳のゾフィーとベテランの尋問官モーアとの壮絶なまでの心理戦では、あくまで犯人じゃないことを主張していた彼女が家宅捜索によって得た資料から徐々に崩されていく過程において、ゾフィーの精神面での成長が見られると同時に、ナチスのモーアが何とか彼女を極刑を受けさせたくないという人間らしい気持ちを取り戻す描写が見事。「まだ子供なんだよ。早く大人になりなさい」とでも言いたげなモーアではあったが、仲間は売れないという確固たる信念を崩せない苛立ちを隠せない。そして、「母親も逮捕されるのではないか?」という不安のため、そこを攻められたらお終いだと観ている者も手に汗握る場面でもあった。
実際に前線のシーンなど出てこないが、スターリングラードでの敗北をひた隠しにするナチス。こうした戦争の生々しさの映像を一切排除して、非暴力の反戦運動を続けた若者の姿だけをとらえた演出は逆に新鮮に感じました。もしや淡々としたドキュメンタリーのような映画になるのではないかと危惧しましたけど、「正義は死なんぞ!」という父親の強い言葉に胸が熱くなりました。そして、99日の死刑執行猶予期間が覆されたあとのシークエンスには言葉も出ないくらい打ちのめされました。
このような映画を観ると、愛国心教育が取りざたされ、日本国憲法第9条を蔑ろにしようと目論む今の日本の政治とつい比較してしまう。共謀罪などという戦前の治安維持法にも通ずる悪法を通そうとするなんてナチスと同じだ。こんなきな臭い法案が可決されたら、戦争反対という言葉を使っただけでも投獄されることになりかねない。何しろ「戦争したら負けるかもしれない」とか「戦争はよくない」という信念を持つことが許されないのです。もし本当に制定されたなら、「反戦」という言葉を使ったレビューはすべて削除されるでしょう。すぐに逮捕されるかもしれません。いや、もうすでに公安から目をつけられているかも・・・5日間記事が更新されなかったら、新聞の死亡欄をチェックしてください・・・
【2006年映画館にて】
良心と知識と自由
ドイツの通りの名前に有名人の名が使われることが多い(ゲーテ、シラーなど)が女性はまだ圧倒的に少ない。その中でゾフィー・ショルの名前はよく使われる数少ない例だ。ミュンヒェンに行くとショル兄妹を祈念するモニュメントや展示や建物に多く遭遇する。
ショートカットのかっこいいゾフィー。映画ではセミロングだったが言葉に命があり適役だった。あの時代、女性が大学で哲学なども勉強したというのは本当にインテリの女性であり兄であり彼らを育てたリベラルな両親だった。だからこそ「あなたは恵まれているのに」とゾフィーを尋問する男は言う。自分はもともと服の仕立て屋に過ぎない、と自嘲気味に述べる彼の気持ちは誰もが理解できる事かもしれない。少なくとも人民法廷の裁判官よりマシだった。ベルリンからミュンヒェンまでわざわざ来たというその裁判官は大袈裟で狂ったような物言いをする、裁判場面で唯一の人間だった。あとは忖度と同調圧力とナチスのお陰でキャリアアップしたり過去を許してもらって保身を狙う人々。やましい思いでいっぱいのように見えた。あるいは凡庸(悪い意味ではない)。ナチス政権はそういう人々によって支えられたことがうまく映像で示されていた。最後の5日間に焦点を当てる構成が全体を引き締めていた。
ナチス関連の映画を見るのは辛いがこの映画の構成に惹かれて全部見ることができた。
信念とは、ヒューマニズムとは
主人公の信念を貫き通す姿勢に自分を重ねながら鑑賞していたら(予想通り)バッドエンドで、私の心ハートブレイク。
ヒトは未来に向かって理想を掲げることもするし、過去の出来事や歴史から学ぶこともする。
保身に走ることの出来ない自身の性質を突きつけられた、教訓にもなった一作。
信念を貫いた学生達
戦時中に実在したナチス抵抗勢力の組織「白いバラ」の主要メンバー兄妹、特に21歳の妹Sophieの視点で描かれた作品。
若干21歳にして取調室でもこの貫禄。
最初はゲシュタポを見くびっているのかと思いました。
泣きつけば幾らでも情状酌量されそうなのに「若き女子大生」は封印し、毅然とした態度を崩しません。
逮捕から3日間の取り調べで供述書にサイン。
4日目には無法裁判で死刑判決。
その日の夕方5時に処刑…。しかもギロチン(>_<)。
ナチス流裁判で、真っ赤な衣装を纏ったFreisler裁判官の怒号に唖然とします。きっとよく似せているのでしょう。そして座っているだけで弁護してくれない弁護人…。
兄Hansの答弁後、傍聴人らに気まずい雰囲気が流れる所が面白いです。みんな頭では分かっている、でもこんな狂気の世界を生き抜くには黙っていなければならなかった…。
大半が保身の為に間違った道を進んでも、何が正しいのか方向性を見失うことなく、そしてその信念のためなら命をかける価値があると行動した若き学生らの勇気が素晴らしいです。
両親との面会シーンは泣きました(T_T)。将来ある子供達を救えない悲痛な思いと、正しいことのためなら堂々としていなさいと処刑台に送り出せる凄さに言葉を失います。
Christophの子供達も父親を誇らしく思っていることでしょう…。ナチスでの職務内容によっては、遺族も年金を受け取れない場合があるのだそうです。色々学ぶことが出来ました。
やるせない…
明日は我が身
ナチ政権下のドイツで、ドイツ人大学生によるレジスタンス組織「白バラ」があることを、恥ずかしながらこの映画で初めて知りました。
物語は、彼らがヒトラー批判のビラを配り、逮捕される所から死刑執行までの数日間で構成されています。
主人公となるゾフィーは、己の命と引き換えに民主主義という己の思想と信念を貫き通します。つまり、死刑覚悟で裁判中にもヒトラー批判を繰り返します。
恐怖政治下では、声を上げない人が圧倒的多数ですが、彼女の様に臨界点を超えてしまい命を落とす人も少なからず存在します。
この様な行為自体、今の日本では考えられないことかと思いますが、歴史は繰り返されることを肝に命じて、彼女達が命を懸けて勝ちとったものを絶対に手放してはいけないと強く思いました。
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