新・仁義なき戦い。 : 映画評論・批評
2000年10月15日更新
2000年11月25日より丸の内東映ほか全国東映系にてロードショー
異色キャストで生まれ変わった阪本版“仁義”
ギンギンのやくざ映画の感触が途中から伝わりだす。《「俺は生き様を背負っている。あいつは死に様を背負っている」/「紙一重じゃないですか」》など、高田宏治の科白もいい。そういえば先代の葬儀のあと、組員が歩きだす様子を望遠で捉えたショットがあって、そこで男たちの鉛色の顔・顔……が画面にぎゅうぎゅう詰めになる。監督は「顔」の阪本順治、今度はやくざ顔の展覧映画だ。しかも伝統的な東映やくざ俳優を遮断し、新しいやくざ俳優の型をつくりだしたのが出色。とくに蟹がでる酒宴での組長岸部一徳の薄暗い演技が逸品だ。タイトルは あの「仁義なき戦い」シリーズの続篇をおもわせるが、無関係 (音楽だけはアレンジを変えて踏襲されている)。時代設定も現代で、舞台も広島ではなく大阪、語り口も息急き切ったような深作欣二調じゃなく、印象は80年代のニューやくざ映画の延長といったところ。それで最後も幼なじみだった豊川悦司 (やくざ) と 布袋寅泰 (在日韓国人実業家) 二人の友情を謳うメロウな展開となった。作家映画ではなく娯楽映画を、と常に語る阪本の確信犯映画だろう。そのぶんギアチェンジをつうじ時間の流れ方が変わるいつもの阪本調が希薄になったが。
(阿部嘉昭)