劇場公開日 2001年7月20日

「独特の異世界とその裏事情を想像する」千と千尋の神隠し Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0独特の異世界とその裏事情を想像する

2013年3月16日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、TV地上波

難しい

総合:75点
ストーリー: 75
キャスト: 80
演出: 85
ビジュアル: 80
音楽: 80

 正直最初見たときは期待が高かった分、あまり面白いとは思わなかった。それまでの宮崎作品にある重厚な主題に比べて物語にあまりたいした出来事がなく、子供が迷い込んだ異次元の世界の温泉宿で働くというだけの話にそれほどは興味をひかれなかった。見ず知らずの自分に良くしてくれた人にお礼を言うことすら出来ない10歳の少女が、初めて直面する厳しい世間。悪くはないけれども、でもどこにでもいる世間知らずの普通の子供のよくある成長物語かなという程度。

 今回改めて見直してみて、前回に見たときよりも不思議と面白く感じられた。物語はやはりそれほどに素晴らしいとは思わないのだが、この奇妙な異世界と、それが制作された背景をもう少し理解しながら興味を持って見たからかもしれない。例えば千の教育係になったリンは実はまだ14歳でこちらも十分子供なのだが、この湯屋から鉄道に乗って出ていき自由になるときを待ちわびている。湯屋に捕らわれているにはそれなりの事情があるわけで、これが江戸時代ならば恐らく親の借金のかたに売られた遊女というところなのだろう。ここに働く者たちの多くがハクも含めて何かに縛られ捕らわれて生きている。千の精一杯の努力と成長だけでなく、神や物の怪を迎える湯屋の存在意義とそんなそれぞれの人々の背景も含めて考えながら見ると、映画の違った一面が見えてきた。
 映画にはそのような伏線がいくつかあるようで、中にはそれにたいして拡大解釈されたものやら都市伝説的な解釈まであるようだ。結局最後までこの世界や背景が何なのかはっきりしないので、自分なりの解釈で想像しながら見たのだが、千の経験した話だけでなく歴史的なことまで思いをはせることになり興味をそそられた。

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Cape God