「怒涛のどんでん返し」情婦 everglazeさんの映画レビュー(感想・評価)
怒涛のどんでん返し
アカデミー賞ノミネート作品。
心臓が悪く退院したばかりで皮肉たっぷり毒舌の法廷弁護士が、殺人容疑をかけられた男の弁護を引き受ける話。
前半が冗長で、要は捜査不足なのですが、公判中に次々と新事実が出て来て、中盤過ぎた辺りから一気に話が進みます。
推理の面白さは勿論、軽妙なやり取りも楽しめます。お色気要素は殆ど皆無ですから、邦題がイメージ的なズレを生じさせていると思いますけど、誰が「情婦」に当てはまるのかを後々考えたくなります。
everglazeさんへ、コメントありがとうございます。
日本語タイトルは余りいい題名ではないですね。と言って原題の『検察側の証人』は堅苦しく地味過ぎてインパクトがありません。ミステリアスな主人公に先入観を持たせるために、敢えて「情婦」と変えたのではないかと想像します。この映画の良さは、特に二重のどんでん返しの脚本の巧みさとキャスティングの妙にあると思います。悪女タイプの美貌と脚線美で一時代を築いたディートリヒが、既に50代半ばになっても美しさは衰えず、そのイメージを逆手に取った配役で、ワイルダー監督の企みにまんまと騙されてしまう。弁護士のチャールズ・ロートンは、見るからに老練の弁護士で人間洞察のスペシャリストと思わせて、結局は騙される失態を見せる。ロートンの貫禄と演技力が文句なしです。実の奥さんエルザ・ランチェスターの看護師とのやり取りのユーモアが、ミステリーの緊張感とのコントラストになっているのも良いですね。そして、美男スターの人気を誇りながら演技力で苦労したタイロン・パワーを悪役で使い、彼のイメージを覆した上で役者として活かしている。この配役は絶妙だと思いました。元々は舞台劇の映画化ですから、役者が揃っていないと成立しない題材です。ビリー・ワイルダー監督のストーリーテラーとしての素晴らしさは、実力ある役者を最大限に活かす職人技の巧みさあってこそと思います。