オールド・ボーイ(2003) : 映画評論・批評
2004年11月1日更新
2022年5月6日より角川シネマ有楽町ほかにてロードショー
消し去られた韓国の15年間の意味するものは
酒癖は悪いが平凡なサラリーマンであるオ・デスが、突然何者かに拉致され、理由も知らされないまま15年間も密室に監禁されてしまう。15年後、やはり何の前触れもなく訪れた突然の解放。その後の物語は当然デスの復讐を軸に展開されていくだろう……。
韓国で大ヒットした「ブラザーフッド」や「シルミド」なんかが典型だが、最近の韓国映画を考えるとき、“歴史のリサイクル”とでも呼ぶべき傾向が特徴的だと思う。朝鮮戦争や南北分断の緊張、といった大きな政治=歴史的主題を正面から取り上げ、しかもエンターテインメント作品に仕立て上げること……。そんな文脈で日本の漫画が原作の映画「オールド・ボーイ」を、どんな風に捉えればいいかが気にかかる。
原作から5年間延長された監禁期間は、西暦で1988年から2003年までに当たる。その間、冷戦の終焉、南北対談や日韓W杯、経済成長とその破綻……といった激動の現代史を韓国は歩んでいる。デスはそんな15年間を消し去られ、タイムマシンに乗るかのようにして15年後の世界に連れ去れたことになる。“歴史のリサイクル”に関わる本作の戦略を僕らはどう理解すべきなのか。この15年間が実はただの幻にすぎなかったということ? それとも……。
(北小路隆志)