ノー・マンズ・ランドのレビュー・感想・評価
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中間地帯の塹壕
中間地帯の塹壕の中だけでストーリーが展開する変わった戦争映画。
セルビア軍から攻撃され逃げるボスニア兵のチキとツェラ。塹壕まで逃げるも砲撃を受けて気絶してしまうツェラ。負傷したチキ。セルビアから軍曹と新兵のニノが塹壕を調べにくる。気絶したツェラを死体だと思って体の下に地雷をしかける軍曹。それがクセもので撤去出来ないジャンプ型の地雷。踏んでから足を浮かせると地上1メートルに飛び上がって爆発し、2000個の鉛の弾が飛び出して半径45メートル以内のものを殺傷するといつ凶悪なシロモノ。
終始カラダを浮かせるとドカンの状況で体重で地雷を抑えこんだまま話が続く。
塹壕の中でセルビアのニノもボスニアのチキが睨み合い、ツェラの地雷の撤去を待つ。UNが救出に来るんだけど、これにまた上官やマスコミが絡む。
途中で銃を手にしたら豹変したり、チキのガールフレンドのサニャのことをニノがたまたま知っていてちょっとだけ打ち解けたりもするんだけど、最後はやっぱり殺し合う。
人間が戦争をする理由、殺意のメカニズム、何故こうなる?というのをシリアスにシニカルに表してる。
「傍観することは加勢することだ」
「俺らの悲劇はそんなに儲かるか」など短いフレーズで戦争を表現する台詞も見事。小規模で短いながらも凄く内容の濃い映画。
あの爆弾はprom-1と言うらしい
わかりにくい戦争の話を、個人と個人の話に置き換えた映画。
個人的な主張がですぎなきらいもあるが、
確かにわかりやすく、作者の戦争観はスっと伝わってくる。
ただ、ブラックジョークで通すのかとおもったら
ジョークで済まなくなったのが個人的にモヤっとした
凄い戦争映画
「戦争って何でするの?」と聞かれてまともに答えられる人は多くないかもしれません。私もその一人です。民族が違うからとか歴史的にとかお金儲けするためとか。
この作品はボスニア紛争が舞台となっています。しかし、作品としては歴史や場所や背景を問うものではありません。世界中で日常的に行われている「戦争」が普遍的であるという作りになっています。
だから、登場人物も決して特別な人間ではなく、特別な人間としても描かれていません。
敵同士のチキとニノは、何故戦っているのかも分からないごく普通の人として、地雷の上に横たわるだけのツェラは手も足も出ない動けない弱者として、国防軍の指揮官は無責任な支配層として、その部下は良心はあるけど上層部の指示決定に忠実な従う人間として、そしてマスコミはネタを探しているだけの傍観者としてこの戦争に関わります。
最終的にチキとニノは死に、ツェラは「助ける手立てがない」と国防軍に地雷の上に置きざりにされます。私達が戦争で死んでいく人を見てみぬふりするのとまるで同じ。
「ノーマンズ・ランド」は鏡の様に戦争や社会の縮図を写しだした恐ろしいほど凄い映画です。
「何で戦争は無くならない?」
こう問いかけられた場合、この作品を観たから答えられることがあります。
私もまた一人の「傍観者」として存在しているのではないか。本当は動けないツェラと同じ運命にあるのに。そして、ほとんどの人もまた、ツェラではなく「傍観者」として存在しているのではないか。ツェラはそう、映画上の人物だと思っているから。
「殺戮に直面したら傍観も加勢と同じ」
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