劇場公開日 2002年5月25日

ノー・マンズ・ランド : 映画評論・批評

2002年4月16日更新

2002年5月25日よりシネ・アミューズほかにてロードショー

冷徹な眼差しが卑劣な所行から笑いを誘う

旧ユーゴの紛争を題材にした映画は何本か公開されているが、この映画には画期的というべき魅力がある。「ブコバルに手紙は届かない」や「パーフェクトサークル」、「ボスニア」は、作り手にとって悲劇があまりに身近すぎることが、無意識のうちに映画の表現に限界を設定していた。「ウェルカム・トゥ・サラエボ」、「エグザイル・イン・サラエヴォ」、「ビューティフル・ピープル」は、作り手が、イギリス人、ボスニア系の亡命者や移民という自分たちの立場=距離を作品に反映することで、題材が映画的な広がりを持ちえた。

最前線を体験し、後にベルギーで映画を学んだタノビッチは、紛争を非常に身近に、かつ冷徹な眼差しでとらえる。その冷徹さは、敵兵の遺体の下に地雷を仕掛ける卑劣な所業から、笑いを誘う不条理な状況を生みだす。

皮肉な運命共同体となった兵士たちは、国連軍やマスコミを巻き込み、主導権を奪い合う。一連のドラマからは、感情的な憎しみ、官僚主義や話題性だけの報道姿勢などが次々に露呈し、最終的には人道的な姿勢も人命も無視され、表面的な紛争の図式に覆われる。そして観客が真実とともに取り残されるとき、その図式の虚しさはいっそう際立つのだ。

(大場正明)

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