劇場公開日 2006年11月18日

麦の穂をゆらす風 : 映画評論・批評

2006年11月14日更新

2006年11月18日よりシネカノン有楽町ほかにてロードショー

ケン・ローチが突きつける、依然としてリアルな真実

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一貫して“弱者”の立場から社会性の濃厚な主題を取り上げ、刺激的な映画を撮り続けてきたイギリス映画界の重鎮ケン・ローチ監督。1920年代初めのアイルランド独立戦争をめぐる最新作は、本年度のカンヌ国際映画祭で最高賞(パルムドール)に輝いたこともあり、彼の代表作の一本に数えられることになるだろう。

イギリスによる圧政からの解放と独立を目指すアイルランドの若者たちの闘争を軸に物語は進むが、老獪なイギリスの分断政策が事態をさらに陰惨なものにする。これは本作の力強さゆえでもあるが、この映画を僕らと無縁な遠いどこかでの出来事として見ることなんてできない。たとえば、イラクに派兵したアメリカと本作でのイギリスを重ねあわせてみること……。ただし、女性の役割を大きくするなどして静謐な叙情性もたたえるこの映画は、同時にある青春の終わりを描くものでもある。皆が思いを一つに巨大な敵に挑むとき、苛酷な戦いであっても若者たちの表情は誇りに満ちている。だけどその後、かつての仲間同士が銃を向け合う内戦が開始されたとき、青春の輝きが消滅し、救い難い重苦しさや悲しみが画面を支配するのだ。暴力による解決はさらなる暴力の応酬に陥るほかない……。この映画が突きつける真実は、残念ながら僕らにとって依然としてリアルなままだ。

(北小路隆志)

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