シン・レッド・ライン

劇場公開日:

解説・あらすじ

太平洋戦争中の1942年、アメリカ陸軍の部隊がガナルカナル島へ上陸。兵士たちは日本軍と激しい戦闘を続ける一方、複雑な思いを抱えていた。手柄を焦る司令官トール中佐、彼に反発するスタロス大尉、志願して斥候隊に加わるウィット二等兵、勇敢なウェルシュ軍曹、戦地で知った妻の心変わりに困惑するベル二等兵。そんな彼らは大自然の中で繰り広げられる戦闘の果てに何を見たのか? 戦場の狂気、そして名もない兵士たちの苦悩を、20年ぶりに監督復帰したテレンス・マリックが描く。

1998年製作/171分/アメリカ
原題または英題:The Thin Red Line
配給:松竹富士
劇場公開日:1999年4月10日

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映画レビュー

4.0【“実存と内省。”今作は、激烈なガダルカナル島での日米の死闘を描きながら、兵士の頭に過る想い、恐怖、生と死、虚無、善と悪を印象的なショット、多数のモノローグを交え描いた異色の戦争映画である。】

2025年3月25日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

興奮

知的

難しい

ー 今作では、多数の有名俳優が登場する。
  ショーン・ペン、ジム・カヴィーゼル、イライアス・コティーズ、エイドリアン・ブロディ、ジョン・キューザック、ニック・ノルティ、ジョン・C・ライリー、ジャレッド・レト、ウディ・ハレルソン、ジョージ・クルーニー、ジョン・トラヴォルタ・・。
  だが、頻繁に逃亡を繰り返すウィット二等兵を演じたジム・カヴィーゼルや彼を担架兵として使うウェルシュ曹長を演じるショーン・ペン、軍功を上げようと無謀な作戦を指示するトール中佐を演じたニック・ノルティ、兵を護るためトール中佐の命令に従わないスタロス大尉を演じたイライアス・コティーズ以外は、ワンショットでの出演のみである。
  まるで、戦争における兵士は劇中で語られるように”幾らでも代わりがいる。”とでも言うように。ー

■1942年。アメリカ軍は日本軍の駐留するガダルカナル島を、太平洋戦争の重要な拠点と見なしてその占拠を計画する。
 ウィット二等兵やウェルシュ曹長をはじめとするアメリカ陸軍C中隊の面々も作戦に参加し、彼らを乗せた上陸用舟艇が美しい島に上陸すると、そこは静寂に満ちていた。が・・。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・今作の特徴は、激烈な日米の死闘を描きながら、随所で米兵たちの心理がモノローグで語られる事である。
 例えば、軍功を上げようと無謀な作戦を指示するトール中佐は”ここまで来るのに、おべんちゃらや屈辱を感じながら来たんだ・・。”など。
 つまりは、兵士の表面の姿だけでなく、内面も描いているのである。

・印象的なのは、その戦闘シーンの合間に描かれるガダルカナルの豊かな自然である。青い海、ワニ、梟、まるで闘いとは無縁のシーンが挟み込まれる事で、戦闘の異常さ、恐ろしさが対比されるのである。

・日米の兵士関係も、米軍=善、日本軍=悪という表層的な描かれ方はしない。どちらの兵も、死に面しては恐怖の表情を浮かべ、唯々死んでいく。
 印象的なのは、ウディ・ハレルソン演じるケック軍曹が"新兵のような手榴弾の鍼管を誤って抜いてしまい、下半身を怪我して死ぬ”シーンである。
 戦場には、唯々、死があり、僅かな差で生があるのである。
 その僅かな差が”シン・レッド・ライン”なのだろうか、などと少し考える。

・又、ベル二等兵が夢想する妻との愛撫シーンが度々描かれるが、後半彼の元にその妻から別れの手紙が来るシーンも、何ともシニカルである。
 彼は、愛する妻の元へ無事に戻る為に、戦っていたのではなかったのか・・。

<そして、今作のラストでは、兵士たちは舟に乗って島を出るが、日本軍に勝利したのかはまるで描かれない。そして、ウェルシュ曹長を演じるショーン・ペンの表情は嬉しさの微塵もなく、虚無的にも見えるのである。
 今作は、戦争という行為を兵士の内面にまで踏み込んで描いた、従来にない異色の戦争映画である。分厚い本を読み切ったかのような感想を得る作品でもある。>

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NOBU

3.0『お前を殺したくない』なんて言わないだろー。

2025年3月18日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
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マサシ

3.5日本兵もアメリカ兵もかわいそうとしか写らん

2024年9月6日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

怖い

確かに長い映画だ。
イントロは戦争を感じさせない。
舞台がガダルカナル島に替われば、そこは太平洋戦争の修羅場の一つになってしまう。

戦争シーンとしてはしょぼい感じだった。
日本軍はもっといたらしいし、戦争ではなく病気で死んだ人が多かったとも聞く。
ときおり聞こえてくる日本語がむなしかった。

なぜ、日本軍はグアム島をはじめ小さな島をいくつも占領したのだろうか?
太平洋戦争自体、経験者も少なくなり知らない人が増える中で、未だに太平洋の島々にはそのときの悲しみが消えていないだろう。
今だから言えるが馬鹿な戦争をしたなあ。

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♪エルトン シン

4.0″美(自然)″と″戦争(人間)″のコントラスト

2023年12月18日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

興奮

知的

本作は劇場公開時(1999年春)にはじめて鑑賞し、その後、BSやVODでも数年に一度のペースで合計10回は見ているはず。

1998年に公開された『プライベート・ライアン』と比較されることも多かった本作だが、まったく毛色の異なる戦争映画に仕上がっている。
個人的には、戦争映画、とカテゴライズすることにすら躊躇する。

ガダルカナル島の戦いを舞台にした本作にも、迫真の戦闘シーンは当然ある。

だが、どちらかと言えば、

ニック・ノルティ演じる猪突猛進型の中佐と、イライアス・コティーズ演じる部下想いの大尉との葛藤
(イライアス・コティーズが非常に良い味を出してる)

ジム・カヴィーゼル演じる優しい二等兵と、ショーン・ペン演じる歴戦の曹長との触れ合い

という2つの人間関係を軸に、戦争における日常を繊細に描写しつつ、
″戦場における人命優先″ ってどういうことなのか、
生命や生活を犠牲にして戦うことの意味はなんなのか、
を問いかけてくる重厚な作品になっている。

戦場に来ている間に妻を他の軍人に奪われてしまう戦友
→ 妻役の女優を敢えて耽美的な映像で表現し、陰鬱で殺戮とした戦場との対比が象徴的だ

山頂の日本軍トーチカに対して、歩兵による強襲を再三要求する中佐と、援護が足りないことを理由に拒む大尉
→ これは本当にどちらが正しいのか判断が難しいが、結局は中佐のやり方でトーチカを潰す、という結末にしており、大尉は更迭される

善悪や正邪を超えた部分で、見る側に「おまえならどうする(どう受け止める)?」という自問自答が場面ごとに繰り返される。

『地獄の黙示録』や『戦争のはらわた』などとは違った切り口で戦争や人間を浮き彫りにしようと試みた、かなり哲学的な戦争映画と言える。
というか、私はそう受け取った。

他の戦争映画よりも圧倒的に優っているのは、映画の舞台でもあるソロモンの風景の美しさである。

コバルトブルーの海、
深い緑に覆われたジャングルやそこを走る清流、
道なんかどこにもない草原、

心を奪われる映像美がとても印象に残る作品だ。
″美しい大自然″ と ″人が織りなす醜い所業・戦争″
との対比が心に残る。

『プライベート・ライアン』調の戦争映画を期待した向きには少し物足りない、小難しいものに感じたかもしれない。

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Haihai