「天使」親切なクムジャさん なつさんの映画レビュー(感想・評価)
天使
OPから、もう傑作の予感もりもり。
白く滑らかな画像を黒い線が這い手に腕に伝いながら赤い花を咲かせつつ瞳のアイシャドウへ、そこから涙。
出所するクムジャさんは真冬の中、逮捕されたときのままの薄手のワンピースで黒く強い瞳でカツカツ歩く。
宣教師の白い人生をと差し出された豆腐を払いのけ落ちるのはシンバルのバシャーンという音。
この作品はそんな演出や幻想などがところどころに散りばめられているのでドキドキする。
刑務所の中で誰にでも親切だったクムジャさん。
言葉で、行動で、命をかけ、殺人を犯し、人々に親切をし復讐の為の駒を作り上げる。
濡れ衣を被せたパクに復讐するために様々な物を用意し、彼の同僚として人を送り込み、美しい妻を宛てがう。
全ての人々がクムジャさんの親切と優しさ、暖かさにまるで宗教の様に集い命令を遂行する。
赤いアイシャドウ、赤いヒールを履いたクムジャさんは親切ではなく多くの駒を持った復讐者となる。
パクとの子供の行方を追いオーストラリアまで行くも愛されて育ったジェーンは韓国に行きたいと着いて来てしまう。
パクを拉致し、これから拷問かな?と思っていたら足を撃ち抜くだけだったので少し物足りなさを感じたが、実はパクを捕まえなかった故に他にも子供も攫われていた事が判明。
計4件。
その家族を招集し、子供達の悲惨なビデオを観せる。
そして選択を委ねる。復讐するか、警察に渡すか。
この時「ヨット」のワードでゾワリと涙が出た。
少しダルいかと思ったけど、常識的に考えれば人を傷つける、殺すなど抵抗があるに決まってる。私だって嫌だよ。誰もが怯えながら武器を取る。
最後、ビデオを観て倒れたおばあさん。誰もが血飛沫を浴びぬ為ビニールを被っていたが1人気丈にも中に入り、首に一本のハサミ。それには孫の名前。
皆で後片付けをし、皆でケーキを食べる。
黒いケーキには赤い蝋燭。
犯人を殺しても子供は帰ってこない。その一連の行動はとても虚しく写った。そこに天使が通る。
赤いアイシャドウを拭き取り歩くクムジャさん。
ジェーンに白いケーキを渡し、白く生きてと。笑顔のジェーンはクリームを笑顔で舐めそのクリームをクムジャさんへ。
口を開けないクムジャさん。白く生きていけないのだ。
どんな思いでケーキに顔を埋めたのか。
白く生きたい思いなのか、悲しみなのか。
ジェーンのくだりとか全体的に少し長いかなとは感じたけどクムジャさんの人生を語るにはジェーンは欠かせない。
パクをスピーカーにしてジェーンに思いを伝え、3回以上謝ると言えたのが良かった。