木更津キャッツアイ 日本シリーズ : 映画評論・批評
2003年11月5日更新
2003年11月1日よりシネマライズほかにてロードショー
ペラペラの画面と頭悪すぎなエピソードの波状攻撃が快感
よく聞くけれどあまり好きでない言葉に「こんなの映画じゃない」というのがある。しっかし本作くらい“映画じゃない映画”ってのもそうないだろう。TVシリーズの映画版だというのは誰もが承知しているし、観客もその延長線を望んでいるのだろうが、それにしてもあまりに映画であることを放棄してないか? アングルや照明はのぺっと平板だし、モンタージュも非常に乱暴。いや、奇抜なアングルや超高速逆回転などのギミックはたっぷり見せてくれるのだが、繰り出せば繰り出すほど映画的な快楽から遠のいていく。
しかしだ。ペラペラの画面で頭悪すぎなエピソードが波状攻撃してくるこのスタイルを、いったん受容してしまえばけっこう快感と化してくるのが不思議。言い忘れたが僕はTVの「木更津」をほとんど観ていない。だから人物設定などがあっけらかんと省略されてる本作は、最初こそ何がなんだか判らないのだが、勢いだけがすべてと開き直った、騒々しいがとてつもなくパワフルな展開に慣れてくるうち、すべてをなんとなく理解してしまっている自分に驚いた。映画にとって人物や設定の説明などつまるところ不要じゃん、と気づかせるだけでも、この粗暴な作品の価値はある。ま、今回は徹底してバカとはいえ実は構成堅固なクドカン脚本のこと、2週間貯めた彼のドラマを一気に観ると異様に疲れる、そんな感じはあるけどね。
(ミルクマン斉藤)