花様年華のレビュー・感想・評価
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プラトニックな美しい不倫劇
湿度の高い亜熱帯の気候、雨にうたれびしょ濡れのトニー・レオン、雨宿りするマギー・チャン。こうしたシーンが繰り返し現れる。狭いアパートにたくさんの人々が居住し住民たちは密な人間関係で結ばれている(彼らは決して底辺層というわけではない、それが香港なのだ)。二人もそうした人間関係の中、同じアパートの隣人として生活している。きれいとは言えない狭いアパートの共有スペース(階段とか)でのスレ違いと挨拶という当たり前の行為から始まり、二人のプラトニックな不倫は誰にも気づかれることもなくじわじわと進んでいく。それぞれが配偶者持ちなのだが、その配偶者の顔は最後まで映されない。そのためか、この不倫劇はどろどろしたものに描かれない。美しい映像と音楽が流れるなか、どこまでもロマンチックなのだ。それがカーウァイ流なんだろう。
セピア色に閉じ込められた美しさ
実際にセピア色という訳ではなく、全体の雰囲気がセピア色に彩られている良い映画だ。女優陣のチャイナドレスがとても美しい色と柄で仕立てられているのだが、何故かセピア色に思えてしまう。時間がこの映像には閉じ込められている。そして内容は、伴侶を持つ大人の「抑制」に尽きた作品。ここでも主人公たちは閉じ込められている。気持ちはとうに結ばれてはいても、肉感的な現実の結び付きはそこには無い。端折った形の「アベレールとエロイーズ」の如く歪なピューリタン的態度である。しかし、「抑制」がとても美しく描かれた内容である。映像もそれに合った美しい流れで見事捉えている。あの時代に撮られた素晴らしい作品である。
プラトニック!
ひょっとしたら互いのパートナーの故意で隣人になった二人が、言葉を交わすようになり、互いに好きな小説創作に二人で取り組むようになり互いに相手への愛が募っていくのに、あくまで一線を越えられないまま(だと私は思った; ;)二人だけの秘密のうちに別れてしまう過程を描く。
主な舞台は政治的な騒乱のあった1966年前後の香港。不均質なグレイや薄い緑、朱赤を基調としたセット。カットクリスタルを施した電気スタンド。華麗な、数々のチャイナドレス。雨の夜。スローで寄り気味、文学的なカメラワーク。
ただ一度の抱擁の他はほんの数回、肩や手に触れるのみの、厳しく抑制した性的表現がかえって官能的。
主演男優賞のトニー・レオンも良かったが、マギー・チャンの貢献度も高かったと思う。若い日の吉永小百合に似た顔立ち。清楚さを持ち合わせつつもその抜群のスタイルで人妻らしい艶やかな華を添えていた。
なるほど~つながったわ~
「2046」と。セット売りのようですな。私は「恋する惑星」と「天使の涙」セットの方が好きです。
今日でウォン・カーウァイ4K祭りが1巡したわけですが、マイランキングを発表します!(どうでもええ)
5位…「2046」:日本人が金城武や稲垣吾郎だったらもう少しポイントが高かったのだろうか…むむむ
4位…「花様年華」:どうしても様のきへんがしめすへんに見えてしまう…どうでもいいことだが。
↑の2編に共通しているのは不倫絡みなので共感しづらかった、ということ。
3位…「ブエノスアイレス」:主人公2人とも然ることながら、もう1人もややイケメン。やはりそういう映画はイケメンこそが相応しい。
2位…「恋する惑星」:片想いの切なさの表現が秀逸。恋に破れた巡査が約30年後に自分に似ても似つかない息子を持ち、しかも不思議なブレスレットに取り憑かれて、そのせいで息子にボッコボコにされ、MARVELファミリーの一員になろうとはその頃、誰も知らない…
そして、1位!「天使の涙」:初めてで感激したから?いいえ。何番目に見たとしても揺らがないでしょう。また見たい!
20数年ぶりの鑑賞
いやあ、ひさびさに鑑賞。4kリマスター版にて。
音楽と映像、やっぱり素敵ですね。マギーチャンのチャイナドレス、壁のクロス、カーテン、床のタイルの模様が芸術的でした。
映像は、最初の頃はグリーン系の色合いが多く、中盤から赤、ラストは白系統の色味でしたね。さすが、クリストファードイル、
音楽もよい。そういえば、サントラ盤、買ったなぁー。
トニーレオンとタバコの煙、雨粒、白タンクトップ、決め顔がほんとにカッコいい。。
映画館で再び観れて、良かった^_^
リマスター上映?のようですが、今見てもよい映画。
今年250本目(合計526本目/今月(2022年8月度)26本目)。
第二次世界大戦(狭い意味での日中戦争)が終わって、少し経った香港をテーマにする映画。テーマの大半はやはり「ラブストーリー」で、男女ともに「不純な愛」をバックに持つ映画です。
まぁ、確かにリバイバル上映といっても原作「それ自体」はかなり古いようで、確かに他の方が言われるようにいろいろ突っ込みどころ(毎日チャイナドレスを着る人がいるのかとか、(映画って、放映時間は決まっていますが)なかなか終わらないラストあたりの恋愛パートなど)気になる点もないわけではないですが、この方(監督)の一連の作品群の最初のほうにあたる作品で、それら含めて「のちの作品(まだ放映されていない。ミニシアターなので2週間に分割されている)ブラッシュアップされているのかな、というところの期待も込めて減点なしにしています。
なお、アマゾンやネットフリックスでは無料で見られるようで、その関係であれもこれも書くとネタバレになりかねないので、ネタバレになりうるような細かい評価は避けます。
作品としてはここにもあるように「今週の公開枠」ではあるものの、リマスター版という扱いでの「公開枠」で、だから特殊な扱い(すでに2年越しで感想を書かれている方がいる通り)になりますので、見る見ないはここの特集などもなく結構迷いは生じがちだし、そもそも論で(4Kリマスター版として。とはいえ、ミニシアター中心なので、2K扱いでの放映でした)放映されている映画館が少ないという部分はあるにせよ、これから見る方へのスポイルが生じるので、あれこれ書かないことにします。
あえていえば、多少なりとも戦後の香港の文化や、「演劇そのものの文化」(シェークスピアやモリエール、などは普通に出ます)知っていると有利かな、というところです。
そんなことある?!
お話としては、諸々突っ込みたくなる設定。
こんなに毎日チャイナドレス着てる人いる?!とか。
旦那さんと奥さんが一切映らなかったり。
毎回廊下のカットがインサートあったり。
映画としてとても面白い。
計算されつくれた演出
ウォン・カーウァイらしい色遣いとカット割り、進行。
そしてなんとも切ない。
マギー・チャンがなんとも美しいこと……。
この距離感だったからこそ、引きずったんだろうな。
人生にこんな思い出がひとつあってもいいかもしれない。
これはお気に入り
この監督さんちょっと苦手なんだけど、これは抒情的で官能的で文学的で芸術的で優雅で、ほんとに美しい。
ただし、いつでも観れるという作品ではありません。時間の流れがちがうから。
ゆったり時間が取れて少し感傷的な時に見るとほんとグッとくる。
元気はつらつな時にはたぶん最後まで観れない(笑)
香港加油
Netflixで。
ウォンカーウェイはブームの頃に「欲望の翼」「恋する惑星」くらい観たはず。でも当時の私にはむずかしかった。。
からの突然のトニー・レオンブームで重い腰を上げたわけです。
過去の回想であることを想起させる枠組みなので、なんとも言えないメランコリー感、つまりことが起きる前から充満している巨大な喪失の予感。
そのため序盤から2人の一挙手一投足に緊張感が漲ります。
子犬のような目🐶のトニー・レオンはもちろん、とにかくマギー・チャンの演技の細やかさがすごいと思いました。ほとんどセリフがなくても感情の揺れを雄弁に伝えてくる。
クールな低音ボイスに色気ダダ漏れの眼差し、そして完璧なスタイリング。。
あんな人が隣で寂しそうにしてたらそりゃ誰でもちょっとおかしくなっても仕方ない。
ウォン・カーウァイといえば映像のポップさが印象にあったため今回、脚本がうまいんだなーと感心してしまいました。
シチュエーションの作り方とか活かし方(たとえば大家さんの麻雀のくだりとか、互いの配偶者が登場しない画面、電話に出ないマギー→不在?→タイプライターの音→在室、みたいな最小限の表現での伝え方が)がナイス。
身勝手なパートナーや窮屈な生活にフラストレーションを抱きながら、かといって開き直り、はっちゃけることもできない奥手な2人は結局のところ似たもの同士。
まるで中学生同士みたいに不器用でもどかしく、でもたぶんきっとそういう相手だから惚れちゃったんだろうな。
かつての恋愛の終焉とかすかな始まり、もし別のタイミングで出会ってたら、もっと先の未来から振り返って見たら、などさまざまな可能性がパラレルに重なるところがおそらくこの作品の狙い。
「花様年華」とはいい時代、幸福だった過去を回想している歌謡曲から取られたタイトル。
それは返還によって変わってしまう香港そのものの暗示でもあるでしょう。「みんな出て行く」「今後が不安」なんてセリフもあったことだし。。
残念ながら未来人としてはその予感の結末も実際に知っており、ただ震えるしかないわけですが(そのうえ主人公は新聞社勤め)。
ただ中盤以降はややダレ感、単調さがあったかも。「キサス・キサス・キサス」の連打もちょっとギャグっぽかった。
オチは序盤からおおかた想像つくわけですが、それを基準にあっちかな?いやこっちかも?と細かい振幅にいちいち揺さぶられる。
逆に、その予感が明確になってしまうと、そんなでもないかな。
あと必殺のパターンが決まってるので、それの繰り返しでちょっと飽きるのもあるかな。
今ここにはない恋愛、かつてあったいい時代、目の前にありながら失うことがわかっているもの、などについての映画でした。
大人の恋愛
2021年6月22日
映画 #花様年華 (2000年香)鑑賞
大人の恋愛映画
#トニー・レオン と #マギー・チャン の官能的な魅力が溢れた映画でした
二人の関係がどこまでだったのかは見る人によってイメージとか理解とかが違うかもしれません
人によってはイライラするかも!
マギー・チャンの妖艶さとラテンスタンダード
イギリスのBBCが2018年発表した史上最高の外国語映画ベスト100のうち、ベスト10に、「七人の侍」「羅生門」「東京物語」「甘い生活」(フェデリコ・フェリーニ)らと並んで「花様年華」が選ばれている。第53回カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞をトニー・レオンが受賞している。
マギー・チャンの色鮮やかなチャイナドレス姿と気持ちを抑えた苦しい表情、そこから滲み出る妖艶さ。そして、スペインのアルモドバル監督を思い出させる「赤」を際立させる画面構成にマギー・チャンの物憂い表情はまさに「絵画」の様。個人的にはトニー・レオンは「インファナル・アフェア」の印象が強く別の俳優の方がよかったのではと思った。
そして何といっても音楽が良かった。バイオリンを基調とした悲しめの曲の間に、ラテンスタンダードが何度か繰り返し流れる。ナットキングコールが歌っている「Aquellos Ojos Verdes」「Te Quiero Dijiste」「Quizas Quizas Qquizas」の三曲。愛の歌であり、キサス・キサス・キサスの「多分ね」とはぐらかす歌であったり。ラテンでは超有名で大好きな曲。これが場面の切り替え時に効果的に流れるのでとても気に入っている。
全体のストーリー展開を追うのではなく、その場面の風景や背景、二人のしぐさや表情、そして音楽を味わうのがいいと思う。
Netflix
【鮮やかな赤に彩られた禁断の恋。梅林茂の美しくも哀切な弦楽曲が悲恋の二人の姿を際立たせている作品。抑制したエロティシズムが蠱惑的な魅力を生み出している作品でもある。】
ー 舞台は、1962年の香港から始まる。同じ日に同じアパートに越して来たチャウ(トニー・レオン)夫妻とチャン(マギー・チャン)夫妻。お互いに、連れ合いとの時間が少なく徐々に惹かれ合って行く・・。ー
■感想<Caution! 内容に触れています。>
・チャウのネクタイを見て”主人と同じネクタイ・・”と言う、チャン夫人の切なげな表情。
徐々に親密になって行く二人の発端である。
・チャウとチャン夫人がレストランで食事をするシーン。チャン夫人はチャウに”奥様の好きなメニューを・・”と頼み、チャウはチャン夫人に供されたステーキにホースラディッシュを優しく添える・・。
ー 抑制していたお互いへの想いが、表面に出るシーンである。嬉しそうなチャン夫人の横顔。それを、優し気に見つめるチャウ。ー
・劇中、頻繁に映し出されるクリストファー・ドイルによる、結婚指輪。
― クリストファー・ドイルは今作を最初に鑑賞した際には、余り気に留めていなかったが、「ある船頭の話」での美しき山河の風景や、鮮やかな近接ショットに驚き、「ばるぼら」の淫蕩感溢れるショットの数々で、その稀有な才能に遅まきながら気づいた・・。ー
・雨中の密会のシーン。
”独身の時は、色々出来た・・。結婚生活って難しい・・。”
”君は夫と別れない・・。僕が去る・・。ー
・花様的年華の歌がラジオから流れるシーン。
美しい調べと、二人にとっては皮肉な歌詞・・。
<その後、チャウはシンガポールに赴き、1966年に再び香港に戻った時には、華の様に楽しかった時を過ごした面影は残っていなかった・・。
実に、切なくも美しい悲恋を、華やかな赤で彩った作品。
趣がとても良く、トニー・レオンとマギー・チャンの切なくも美しき佇まいが印象的な作品。
森田芳光監督の「それから」
ーこの作品も不倫に踏み出す男女を描いている・・ー
でも、その美しき映画音楽で見る側を魅了した、梅林茂の哀切な弦楽曲も作品に彩りを添えている。>
微かな気持ち
お互いの境遇に惹かれあいながらも、チェン夫人は一線を超えないようにしていたのは、まだ夫に対して気持ちがあったからなのかと思った。
本当は不倫という良くない行為が、香港のジトっとした空気感のお陰であたかも許されているかのように思えた。
あまり説明のない映画だからこそ、視聴者が考察して考えるため、様々な捉え方があって見た後も面白かった。
全77件中、41~60件目を表示