劇場公開日 2022年8月19日

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「香港加油」花様年華 ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5香港加油

2021年9月9日
iPhoneアプリから投稿

Netflixで。
ウォンカーウェイはブームの頃に「欲望の翼」「恋する惑星」くらい観たはず。でも当時の私にはむずかしかった。。
からの突然のトニー・レオンブームで重い腰を上げたわけです。

過去の回想であることを想起させる枠組みなので、なんとも言えないメランコリー感、つまりことが起きる前から充満している巨大な喪失の予感。
そのため序盤から2人の一挙手一投足に緊張感が漲ります。

子犬のような目🐶のトニー・レオンはもちろん、とにかくマギー・チャンの演技の細やかさがすごいと思いました。ほとんどセリフがなくても感情の揺れを雄弁に伝えてくる。
クールな低音ボイスに色気ダダ漏れの眼差し、そして完璧なスタイリング。。
あんな人が隣で寂しそうにしてたらそりゃ誰でもちょっとおかしくなっても仕方ない。

ウォン・カーウァイといえば映像のポップさが印象にあったため今回、脚本がうまいんだなーと感心してしまいました。
シチュエーションの作り方とか活かし方(たとえば大家さんの麻雀のくだりとか、互いの配偶者が登場しない画面、電話に出ないマギー→不在?→タイプライターの音→在室、みたいな最小限の表現での伝え方が)がナイス。

身勝手なパートナーや窮屈な生活にフラストレーションを抱きながら、かといって開き直り、はっちゃけることもできない奥手な2人は結局のところ似たもの同士。
まるで中学生同士みたいに不器用でもどかしく、でもたぶんきっとそういう相手だから惚れちゃったんだろうな。

かつての恋愛の終焉とかすかな始まり、もし別のタイミングで出会ってたら、もっと先の未来から振り返って見たら、などさまざまな可能性がパラレルに重なるところがおそらくこの作品の狙い。

「花様年華」とはいい時代、幸福だった過去を回想している歌謡曲から取られたタイトル。
それは返還によって変わってしまう香港そのものの暗示でもあるでしょう。「みんな出て行く」「今後が不安」なんてセリフもあったことだし。。
残念ながら未来人としてはその予感の結末も実際に知っており、ただ震えるしかないわけですが(そのうえ主人公は新聞社勤め)。

ただ中盤以降はややダレ感、単調さがあったかも。「キサス・キサス・キサス」の連打もちょっとギャグっぽかった。
オチは序盤からおおかた想像つくわけですが、それを基準にあっちかな?いやこっちかも?と細かい振幅にいちいち揺さぶられる。
逆に、その予感が明確になってしまうと、そんなでもないかな。
あと必殺のパターンが決まってるので、それの繰り返しでちょっと飽きるのもあるかな。

今ここにはない恋愛、かつてあったいい時代、目の前にありながら失うことがわかっているもの、などについての映画でした。

ipxqi