劇場公開日 1980年12月23日

「色々と語りたくなる作品」シャイニング sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 色々と語りたくなる作品

2025年8月23日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

NHK BS4Kの録画鑑賞。
何十年か越しに、初めて最初から最後までちゃんと観た。

スティーブン・キングは、この映画に対して、ジャックが最後までダニーを追いかけ続けるという、ラストの改変をとても怒ったようだ。
原作では、亡霊に取り憑かれたものの、ジャックの中に残った父性愛や家族愛が、ダニーや妻を逃がしたということらしいので(未読のため、他資料参照)、テーマが変えられてしまったことへの怒りだろう。また、依存性や暴力的な加害行為の経験がある人々に対して、どちらの結末の方が救いがあるかと言えば、間違いなく原作の方だと思う。
今作が、そうした点や黒人の料理主任の扱い等、多数派の人々の内心の偏見に乗っかってつくられている部分は、時代的なことを考慮しても、やや気にはなる。
しかし、それ以上に、全編を映像と音と編集の力でまとめ上げ、「映画」でしかなし得ない作品をつくり出したキューブリック自身の作家性に、強く惹かれた。

ちなみに自分は、映画の中にあっても、ジャックの父性愛は残っていたと思う。
根拠は、ダニーの足跡。
曲がりなりにも、ジャックの知性からすれば、ダニーの機転に気が付かない訳がないと考えた。本気で仕留めたければ、引き返して近くの脇道を探すだろう。そこをあえて先に進んだのは、亡霊に取り憑かれながらも、ジャックの心の奥底にある良心がダニーを逃したのではないかと思ったのだ。

自分勝手な深読みのしすぎかもしれないが、今作は、そういうことを色々と語りたくなる作品だったことは確か。名作の証だと思う。

sow_miya
sow_miyaさんのコメント
2025年8月24日

kossyさん、ありがとうございます。そうなんですね。その偏狭さが作品の質を上げているのかもしれませんが、めんどくさそうな原作者なんだということを知れて、面白かったです。

sow_miya
kossyさんのコメント
2025年8月24日

スティーヴン・キング作品が映画化されると、必ず不満足みたいですね。それだけ独自の解釈ができる原作だとも言えるのでしょうね・・・

kossy
Moiさんのコメント
2025年8月24日

仰る通りかもしれません。スティーブン・キングは両親の深層心理にあるネグレクトなどのセンシティブな部分を小説内で描いていましたが、キューブリックはダニーやジャックのなんらかの力により憑依される力、または新たな超能力の発現に重点をおいて映画を描いてましたね。そこら辺が原作者の逆鱗に触れたのかと思いますね。

Moi
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