「邪悪が棲む老舗ホテルの惨劇!」シャイニング しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
邪悪が棲む老舗ホテルの惨劇!
レンタルDVDで鑑賞(インターナショナル版,字幕)。
原作は未読。
スタンリー・キューブリック監督ならではの映像美と迫真の演出で描かれる、目の覚めるような真の恐怖がそこにある。
「最も怖い映画」に選ばれるだけのことはありました。なんとそれは、数学的にも証明されていることなんだそうです。
不安を煽る音楽や些細な現象の積み重ねが生み出す不気味さが巧みでした。特に音楽の効果は凄まじい。「サイコ」のそれに通じるような不穏な戦慄が不安を掻き立て来ました。
豪雪に覆われた老舗ホテル。そこには底知れぬ何かが棲んでいました。その悪意に囚われ、次第に呑み込まれていく男をジャック・ニコルソンが鬼気迫る演技で表現していて鳥肌が立ちました。顔芸の賜物。正真正銘の狂人みたいでした。
妻と息子に襲い掛かる男。身近な存在に殺されかける。これ以上の恐怖は無いんじゃないかと思いました。執拗に追い掛けて来るから堪ったもんじゃない。ドアを斧で叩き割り、割れ目から顔を出して叫ぶ「お客様だよ!」が強烈過ぎました。
このホテルに棲んでいた悪意とは、いったいなんだったのでしょうか。明確な答えは示されず、「分からない」と云うことから来る理不尽な恐怖の真骨頂だと思いました。
ラストの写真も意味深。おそらく創業間も無い頃の舞踏会で撮られたものでしょうが、そこにジャック・ニコルソンも写っている。ホテルに取り込まれたと云うことなのか?
[余談1]
「レディ・プレイヤー1」でもネタにされていた場面を観ることが出来て、大・大・大満足でした。
[余談2]
ダニーの超能力「シャイニング」。タイトルにもなっているのに、いまいち活躍しませんでした。テレパシーでコックに助けを求めたはいいが無惨にも殺害されてしまいましたし、原作ではどうなっているのかが気になりました。
[余談3]
ジャック・ニコルソンが閉じ込められた倉庫のドアを開けたのはダニーなのでしょうか。それともホテル自身かしら?
[以降の鑑賞記録]
2023/02/05:Ultra HD Blu-ray(北米公開版,字幕)
※修正(2023/08/29)
補足します〜。
原作では「輪廻の呪縛」をしっかりと明言はしていないんです。
作品の裏に流れる設定という感じで、あくまで「暗喩」なんですね。
そこのところは、映画がむしろ大変良い演出をしていると思いました。
ラストの「写真にジャックがいる」とか、鏡を用いて「ジャックのあちらの世界に入り込み度の変化」を表現したりとか、バーテンダーやウェイターとの会話、イマジナリーラインも空間整合性も歪めた異常で異様な演出、、、の中に「輪廻」の示唆が含まれています〜。
キューブリック巨匠、お見事!と言ったところですね♪
pipiさん
とても詳しくて分かり易い解説を書いて下さり、ありがとうございます。
ようやく"シャイニング"のことが理解出来ました。
映画は完全なホラーに振っていますが、原作では輪廻の呪縛を打ち破るための戦いが展開されるんですねぇ…。
余談2に^ ^
「シャイニング」というタイトルは、原作者のスティーブン・キングがジョン・レノンの「Instant Karma!(インスタント・カーマ)」という曲の歌詞「we are all shining on」にインスピレーションを受けて考えたものです。
Karmaは東洋(仏教思想)で言うところのカルマ(業)
人間が因果応報によって輪廻転生を繰り返し、悪い事をした人は来世も報いを受ける、ってヤツですね。
つまり、ジャックはチャールズ・グレイディの生まれ変わりでもあり、デルバート・グレイディの生まれ変わりでもある。過去の罪によってホテルの呪いの中で何世代も輪廻転生を繰り返し、同じ悲劇・惨劇を繰り返す運命に囚われている。
ジャックがこのホテルへ来たのは偶然ではない。って暗喩なんです。
で、そんな闇の運命を打ち破る「善なる能力」「光の能力」がダニーの有している「シャイニング能力」なのだけれど・・・。
映画でのジャックはただのアル中DV父さんなので。(原作者のキングが怒る訳です。)
原作ではジャックは最後に正気を(ジャックとしての今生の記憶を)取り戻し、家族を守る為、自らの命を賭けて呪いのホテルと対決します。
ハロランも殺されずにウェンディとダニーを救出します。
「悪しきカルマ」に打ち勝つ人間の希望、光の力が「シャイニング」なんです。
今晩は
”ジャック・ニコルソンが閉じ込められた倉庫のドアを開けたのはダニーなのでしょうか? それともホテル自身?”
私見ですが、妻に倉庫に閉じこめられていたジャックを挑発していたブレイディを代表とするオーヴァー・ルックホテルの魑魅魍魎達が”ジャックが家族に厳しき躾けをさせるために”開けたものと思います。
では、又。