「孤独な魂に捧ぐ」初恋(2006) とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
孤独な魂に捧ぐ
三億円事件の犯人が少女というのはかなり無理がありますが、映画の題材としては心打たれました。
途中は、2時間サスペンスの見過ぎで、いつ裏切られるんだろうなんてハラハラしながら観ていましたが…。
母親との再会場面に言葉を飲みこみ、続くクライマックスに感涙、ボロボロ。こんな心の繋がり持てたら幸せなんじゃないかな、なんで思ってしまいました。
若者がうっ屈しながらも、非生産的行為ばかりであったにしろ、まだもがきながら何かをしていた時代なんでしょうか。
この孤独感、閉塞感、空虚感、今の若者にも通じるんじゃないでしょうか。自分が何者なのか、見つけられない感じ。
宮崎さんの演技はさすがです。
みすずが犯罪に加担した経緯と、その後の切なさがリアルに伝わってくる。
舞台で、一人で語らせても、みすずの物語は完成してしまうのではないかと思う演技力。
反対に言えば、ジャズ喫茶の面々も、岸もいなくても成立してしまうような存在感。
ロケハン等の背景・舞台設定にはかなり凝ったと聞いておりますが、”あの時代だからあの犯罪”というリアルさ、みすず以外の犯人の必然性が伝わってきません。
(みすずの必然性は描かれているのですが)
原作未読。さぞかし内容は濃いものなのでしょう。それをまんべんなく映画にしようとして、すべてが上滑りになってしまった感じです。勿体ないです。
みすずの切なさは、ぜひ映画で堪能していただきたいですが、
映画は暗く、みすず以外の面々は頭でっかちで見苦しい。
”あの”時代を懐かしむ方と興味がある方はご覧下さい。
コメントする