七人の侍のレビュー・感想・評価
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極上のエンタメ映画。
めーちゃくちゃ面白かった!!
これが素直な感想です。
1つのエンタメ作品として物凄く良く出来てる。
「名作」だの「歴史」だの、そんなの抜きにして、笑って泣いてしんみりして、最高のエンタメ作品でした。
自分の中で悪い意味でハードルを上げすぎてました。
時代劇だからとかモノクロだからとかそんなの全然気にする必要ないです。
バックトゥザフューチャーとかターミネーター2とか、ああいうエンタメの名作と同じ感覚でフラットに見て十分楽しめる映画でした。
70年前の映画なのにギャグシーンでみんなが声を出して笑って
キャラ立ちしまくってる侍達一人一人に感情移入して
気がついたら全員の事が好きになっている
「名作は色褪せない」って言葉を何度も聞いてきたけど、これほど忖度なしにめちゃくちゃ楽しめたモノクロ映画は初代ゴジラ以来でした。
仲間集めの前半パートがとにかく好み。
どのキャラも小粒ながら良いエピソードがしっかり付いてくる。
洋画で言うと「アルマゲドン」の前半なんかに近いノリです。
そんな気の良い奴らが1人、また1人と命を落としていくのは本当に辛くて。
でもそんな中でも大人達は若者を守ろうとしていて。そんな姿に涙している自分がいました。
2001年宇宙の旅よろしく、中盤で「休憩」が設けられてるのも最高でした。
今の映画にはほとんどない幕間の休憩。
これもこれで1つの体験として好きだったりします。
映画館で、スクリーンで見れてよかったと。
心の底からそう思える作品でした。
雑感・・
古き名作を観る喜びともどかしさ
午前10時の映画祭で4Kリマスター版を2025年10月に劇場の大きなスクリーンで観賞することの多幸感。
過去の名作を観賞することは、とても幸せなことだと思う反面、古さを感じてしまい乗り切れなかったり、当時の感動が削がれてしまうことがある。
本当に力がある作品は時代が経とうとも作品自体の魅力は変わらないのは間違いないことだが、やはりその時ならではの時代感を感じ取れないのも事実だろう。
つまり昔の映画というフィルターにかけて、何らかの補完をしてしまうことは致し方ないことだと思える。
つまり当時に観て感じただろう感動を得られない、もどかしさがそこにある。
この偉大な作品に現在観たレビューで3.5しか付けられないもどかしさ、当時なら4〜4.5あるいは5点満点を付けただろう感動を得ることの出来ないもどかしさ。
あと新4Kリマスターによる驚くほどの画質も称賛に値するし喜ばしい限りなのだが、反面美し過ぎて人物と背景が合成ぽく感じてしまい、無用な違和感を感じたし、悪く言えば加工しているのだからCG画像なんだなと思う。
音の飛んだ傷だらけのフィルム画像でノスタルジーにふけって観たい訳ではないが、時代性を感じずその時代に素直な一映画ファンとして封切り館で観たかったと、ただただ思うばかり。
207分もの長尺をダレることなく見せ切り、あらゆる映画要素が詰め込まれた金字塔と呼ぶに相応しい偉大な作品「七人の侍」、過去に戻ることが出来ないならば、今現在の最高の状態で劇場の大スクリーンで大いに堪能するしかない。
野武士との戦いに至るまでの前半の面白さ
報われなくても善きことをする——戦後日本を癒し支えた「敗者の倫理」
3週間限定の4Kリバイバル版上映。ずいぶん以前、ビデオで2回ほど観ているはずだから、もう観なくてもいいかなと思いつつ、映画館で観たことがないしので、錦糸町TOHOに行ってみた。20代と思われる若い人がかなり多かったのが意外だった。
初見に感じる場面が多かった。この映画を元に作られたたくさんの映画、特に「荒野の七人」や「マグニフィセントセブン」などとごっちゃになって記憶がずいぶん改変されてしまったようだ。
冒頭の盗賊集団が馬で駆け抜ける場面から記憶になかった。ここだけで、騎馬のスピード感と重量感に圧倒され、そして、最後まで圧倒され続けた。これまで70本の感想を書いたけれど、完璧な映画が現れた時のために5点満点はどんなに感動してもつけなかった。しかし、新作ではない、この70数年前の映画に満点をつけざるを得ない。
エンドロールもなくスパッと迎える終演後、拍手が起こった(僕はぼうっとしちゃって拍手できなかった)。とにかく圧倒的な映画であることを確認できてよかった。世界的にそういう評価が定着しているから、言うまでもないのだけれど、それを実際にスクリーンで観て確認するかしないかは大違いだ。
今回、気づいたことをいくつかまとめておきたい。
まず、この映画が作られた時代背景との関連について。
本作は1954年で71年前に公開された白黒映画だ。
戦後9年。GHQ占領が1952年に終わり、やっと検閲なしで映画を作れるようになった時代。リミッターなしで全力で最高の作品を作るーー。そういう黒澤監督と、日本の映画人たちのチームの想いが伝わってくるし、その想いで団結した一流のプロたちの最高の仕事の凄みを感じさせられる。
「スター・ウォーズ」の生みの親ジョージ・ルーカスが黒澤からの影響を公言しているのは知っていた。僕はキャラクター造形のことだと思っていて、それは確かに観て取れた。
同時にストーリーの流れ(映画の構造)も酷似している。主人公が決意し、個性豊かな仲間を得て、世界のために戦い、達成する。これは、ハリウッド映画のテンプレでもある「英雄の旅」の構造そのものだ。
この構造は1949年に刊行されたジョーゼフ・キャンベル「千の顔をもつ英雄」で提示され、近年のハリウッド脚本術の本を読むと、さらに細部に渡ってマニュアル化されている。黒澤はキャンベルの本は読んでいないようだ。映画史研究にはちゃんと書いてあるのだろうけれど、知らないので推測すると、この「七人の侍」が「英雄の旅」の構造の強さの実証例となって、ルーカス始めテンプレとなるほどハリウッドに強い影響を与えたということなのではないだろうか。
ただ、大きな違いもあると感じた。典型的な「英雄の旅」は主人公の成長と自己実現の物語。成長した主人公は、困難だけれど世界にとって素晴らしいことを成し遂げて、人々から賞賛される。つまり、世界に貢献し、貢献した人々から強く承認されることでさらに報われる。
しかし、「七人の侍」では、主人公たちは貢献した相手から承認される場面はなく、自己実現した!という分かりやすいカタルシスは描かれない。最後の場面では、ファンファーレがなって、人々から賞賛されるかと思いきや、人々は以前の生活に戻り、田植え唄などを歌って、以前の生活に戻れたことを喜んでいるだけである。そして、主人公も「また負けた」と言っている。
人々からの承認はないし、主人公も多くの人を死なせた罪悪感や、もっと上手くやれたのではというような後悔を感じているようだ。
つまり、英雄には報酬も勝利の喜びもないのだが、ただ一つ「私は私にやれる善きことを精一杯やった」という倫理的な満足感は感じていると思いたい。「負けてもいい、自分にやれる善きことをやればそれでいい」というこの物語は、終戦からまだ10年経たない日本人の大きな癒しになったのではないだろうか。
それに、新自由主義、個人主義が進んだ70年後の今こそ、こうした職業観や倫理観は改めて見直し、自分の中に実装したいものでもあると思う。
主人公の勘兵衛を演じる志村喬は、この作品の2年前の黒澤作品「生きる」でも主演を務めている。こちらはお役所仕事を長年続けてきて定年間際の市役所のさえない市民課長が、ガンになってしまい、最後の仕事として公園作りに奔走する物語だ。誰もその仕事ぶりを承認しないのだけれど、主人公は「私にできる善きことがある」と、その小さな仕事のために残りの日々を使う。
報酬も承認もいらない。生きてきた証として自分のできることをやる。
自分が自分を承認できればそれでいいーーこの姿勢は、「七人の侍」の勘兵衛と完全に重なるし、公開当時の観客も志村喬演じる二人を重ねて見たはずだ。
勘兵衛と共に戦う侍と農民も、それぞれ違った動機と価値観を持っていて、一人一人が印象深い。特に印象に残るのはやはり三船敏郎演じる自由奔放な暴れん坊の菊千代だ。
英雄性のかけらも感じさせない破天荒で未熟でバカにも見える菊千代がトリックスターとしてこの物語では重要な役割を果たす。ここもしびれるところだ。
菊千代の侍姿はコスプレで、実は農民だ。農民らしい控えめさ、周囲と同調してコツコツ働く姿勢とは無縁の菊千代は、おそらく農村で浮き上がっていたのではないだろうか。そして、農村を離れ、戦国のどさくさに紛れて、浪人侍のコスプレをしたのだけれど、侍からも仲間にしてもらえない。どこにも居場所がない孤独な人物であり、アイデンティティも持てない根無草なのだ。
そして、どこに行っても浮いてしまう人物だからこそ、価値観も考え方も生き方も違う異質な人間=侍と農民を精神的に結びつけることができるというストーリーには引き込まれてしまった。三船演じる菊千代がいなかったら、この映画は随分地味な映画になっただろう。本作を元に作られたアメリカ映画では菊千代的なキャラは見当たらないように感じる。ハリウッドも、三船演じるこのキャラクターは再現不可能と諦めたのかもしれない。
若い人たちが大勢見にきていたのは、スターウォーズやアベンジャーズの原型がここにあるということが知られているからだろうか。いや、それら以上に面白い凄い日本映画があるという評価まで広がっているのだろうか。
有名な作品だけれど、劇場で見た人はもう80代、90代の先輩方以外には相当少ないだろう。大きなスクリーンで見なければ、真価はわからないし、何よりこの迫力も味わえない。この機会に観ておいてよかった。
TOHOシネマズさん、ありがとう。
【新4Kリマスター版上映】70年前なのに普通に(いやそれ以上に)面白いのがすごい!!
最新4Kリマスター版で初上映!より鮮明な音と映像で!
黒澤映画、いや、日本映画の金字塔!!
ですが何より、70年も経っているのに、今の感覚で普通に楽しめることがすごい!
まさに、映画の面白さが詰まってます。
前半の7人の仲間を集めるところから、キャラクターとエピソードがそれぞれ面白い。
今回は割と地味な、加東大介、千秋実、稲葉義男が良かった!
後編は、やはり何と言っても戦闘シーンのダイナミックさ、大迫力とリアリティ!
いわゆるチャンバラ映画、時代劇、のような上辺の『殺陣』(たて)とはまったく異なる、実践的な「戦い」、戦争がリアルに描かれています。
何本も刀を用意して、あちこちに立てたり、暴れる馬たちの危険な撮影など、数々のアクションシーン。
それだけでなく、その背景にある身分制度や、百姓たちの困窮した生活、そして百姓たちもまた生きるためには、落ち武者狩りなど強かさもある。
そのことが野武士の集団を生んでいるかもしれない。
百姓もまた、ただ弱い善人ではないというリアルまで描いているのがすごい。
「午前十時の映画祭15」では間に「休憩」があり、公開時同様に楽しめるものいいです。
4Kは凄いな
初めて映画館で見ました。4Kリマスタ版です。
長い映画なので途中5分位休暇がありました。
映画自体はTV放送の録画で見た事はありますが、それも随分昔の話。
SD画質とは大違い。とにかくセットや着ているものの細部が鮮明。
かなり凝った造りだとは思っていましたが、本当に凄いセットだ。黒澤明の拘りは凄いと聞いていたがこの時代からこのレベルとは恐れ入りました。
茅葺き屋根の農家の作りといい着ているものの程よいボロボロ具合といい本当にその時代に放り出されたかの様な作りに感動。再現具合が半端ない。
セット自体に年季を凄く感じる。何年前からそこにあるのか?って感じる位。
物語自体面白いのだが、三船敏郎演じる菊千代が猿の様にキャキャしていてお尻丸出しの演技。
いや大昔から分かっているんだけど本当に凄い演技をしている。他のキャストも皆全力だ。今の時代劇、少し前の時代劇でもここまではやらんだろうって感じの事をやっていて泣ける。
全てが大作を作り上げてると改めて感心した。
若干残念な所は刀で切りかかっても突いても血が出ない事だが、まあ仕方ないのかな。
やっぱり最後は百姓が勝つ
『百姓は雨が降っても嘆くし晴れ間続きでも嘆くそして風が吹いても嘆く……そぅいつでも嘆くのだ。。』 日本人は元来農耕民族なので…
この作品は数十年前に大森の映画館でリバイバル放映で観る事が出来た。今回は"午前十時の映画祭15"にて劇場鑑賞。黒澤明監督の原点であり世界の至宝である。この作品を表すには星5つでは全く足りず其れどころか星の数で表す事自体が失礼極りないと言える。
この作品と言えばあの雨の中での合戦シーンが余りにも有名だが、、、実は三船敏郎の役が素晴らしいのである。ある種の狂言まわしの様でもあり主人公の様でもあるそして時にはコメディアンの様でもある変幻自在の役回りを演じている。この役柄が素晴しくこの作品を超一級品へと押し上げている。またこの作品の魔法なのか207分の上映時間を全く感じさせない。
現在"午前十時の映画祭15"で新4Kリマスターによって3週間上映となっています。家のテレビでは無く是非劇場の大画面でこの至宝の作品を観て欲しい。昔同様トイレ休憩もちゃんとあるのでご心配なさらずに。。
【追記】
この作品では昔の白黒35mmフィルムであったので現在のようなワイド版ではありません。なので劇場の席もいつもより前よりの席に座った方が良いです。後方に座ってしまうと画面がいつもより小さく見えます。それではこの映画の迫力が半減してしまいます。少しでも前よりの席での視聴をお勧め致します!
神が作った映画。
いつか劇場で観たいと思ってた、国内外、映画はもちろん、アニメ、ゲーム含めてあらゆるコンテンツに影響を与えまくった日本が誇る世界のクロサワのレジェンド作品。
新宿、日本橋は満席で錦糸町まで行ってきました。
休憩ありで劇場にいたのは4時間くらいですか。最近、長尺な映画も多くなり、終わったあと長すぎるとか思うこともあるのですが、あっという間の4時間でした。休憩前の前半で、どんどん面白くなっていきますし、なんなら後半の体感時間の方が短く感じるくらい。もう、終わり?もう少しこの世界にいたかったと思うほど。
三船敏郎さんとセットで語られる作品なので、なんか重たい感じに思ってる方もいるかもしれませんが、ギャグ担当でビックリ。会場からも笑い起こるほどでした。
冒頭から百姓が野武士に襲われてる集落の用心棒になってくれる侍を探すところから始まります。それだけ読んでもへー何かおもしろいのかな?という感じですよね。はい、「マッドマックス」です。
で、百姓の会話シーンが続くのですが、なに言ってるか全然聞き取れない。言葉自体、殺すということをつっ殺すと言ったり、なじみのない言葉だからというのもありますが、後半まで観ると映像で補完したりもするので、最近だと「宝島」の沖縄言葉みたいに、ワザとわかんなくしてると思いました。このあたり、海外だと全部訳がつくので理解しやすく、だから海外の方が評価高いのかなと思いました。
あとは、キャラクター造形、ワンシーン、ワンカット、どこをとってもどこかで観たことがあると思わせる既視感がすごかった。これは、あらゆるコンテンツでサンプリングされまくってるからだと思います。そして、そのオマージュは現在進行形で続いているのだなと感じました。
このあたり、あとあと調べてみるのも楽しそうです。ボクは志村喬さんがモーガンフリーマンに見えて仕方なかったですし(セブン撮る時に監督が、「セブンスサムライのミスターシムラみたいに演じて欲しい」とか言ってそう)ババアが出た時はジブリアニメの実写きた!と思いました。モブの描き方とか三船さんの衣装、性格付けかもそうで、宮崎駿さんが影響受けてるのは間違いないと思いました。
神が作った映画。どのタイミングで観るかによって楽しみ方も変わるかと思いますが、是非劇場でご覧ください。
まごうことなき映画史に燦然と輝く傑作中の大傑作。絶対に映画好きなら一度は観てほしい作品ですね。
まごうことなき映画史に燦然と輝く傑作中の大傑作。
毎年必ず1回は観たくなりますが、今年は運よく「午前十時の映画祭15」にてなんと!新4Kリマスター版にて3週間限定上映。
グランドシネマサンシャイン池袋さんではありがたいことに19:00の上映回もあり、早速劇場へ。
場内は老若男女幅広いお客様でキャパ150席のスクリーンは満席の大盛況。
『七人の侍』(1954年/207分)
初公開は『ゴジラ』と同じ70年前の1954年。今思うと凄い映画の当たり年ですね。
制作費は当時の通常映画の7倍に匹敵するようですが、戦後わずか9年でこれほどの超大作を撮りあげた当時の映画界の勢いと熱量には敬服の念を禁じ得ません。
視覚的に印象深いのはクライマックスの豪雨の決戦シーンです。「西部劇が砂埃なら時代劇は雨だ」と、とにかく激しい豪雨の中で、今までの歌舞伎のような殺陣を廃し、時代考証に基づいた不格好で泥臭く、人を斬る効果音を使わず、刃こぼれまで表現した実にリアルで迫力のあるアクションは70年経った今でも決して色あせません。
「残る野武士があと何人か」「どのような陣形か」という説明も都度わかりやすくインサートされています。決戦のゲーム性とエンターテインメント性も非常に高いですね。
若いころはクライマックスの決戦シーンに血沸き肉踊りましたが、歳を取ると侍集めや、侍同士、または侍たちと村人の気脈が通じる前半部分に趣を感じるようになります。
とにかく橋本忍、黒澤明、小国英雄の脚本が完璧で飛び抜けていますね。七人の侍をはじめ、一人ひとりの農民に至るまで、個々の登場人物の性格や背景、思想信条が詳細に設定されていて、過度なセリフによる説明ではなく、さらりと彼らのたたずまいのみでしっかりと描かれています。
敗戦続きで歳を重ねた個性豊かな凄腕の浪人たちが、野武士から農民を守る大義のため、まるで自らの死に場所を求めるかのように島田官兵衛(演: 志村喬氏)のもとに集い、出自が農民の菊千代(演: 三船敏郎氏)の不思議な魅力に次第にチームビルディングされる過程は実に見事です。
また農民の描き方も、ただの弱者ではなく、武士の好き勝手な振る舞いのため臆病だけどずる賢く立ち回る存在に描かれているのも秀逸です。その臆病でずる賢い農民を万造(演: 藤原釜足氏)が具現化していますが、きちんとぼけた与平(演: 左卜全氏)が見事に中和しているのは上手い設定です。
最後も生き残った若侍・岡本勝四郎(演: 木村功氏)と万造の娘・志乃(演: 津島恵子氏)の恋模様も、勝四郎が農民となって志乃と夫婦になるような単純なハッピーエンドで終わらせないところは、「最後に勝ったのは百姓だ」という台詞の余韻を残す上で最適解ではないでしょうか。
逆に、敵の野武士に関しては、あまり台詞を喋らせない無個性な点も上手いですね。
個性的な侍たちは誰もが抜群に魅力的ですが、個人的には宮口精二氏が演じた痩身の剣客・久蔵がニヒルでクールで、しびれるぐらいのカッコよさです。強さのみを求道する宮本武蔵がモデルで、当初は三船敏郎氏の配役予定だったらしいのですが、急遽菊千代の役が必要になったのでスライドしたとのことですが、三船氏の久蔵でしたら、また全然違った作品になったでしょう。
特に今年にはいってAI技術が急速に進化。
映像化不可能なことはすでに一切なくなってきており、黒澤映画のようにきちんと奥の方でも誰かが演技をしている、常に雨が降っていることなど造作もなくなってきています。
最終的にはやっぱり脚本。
今まで以上にホンの面白さが映画の成否に関わってきそうです。
絶対に映画好きなら一度は観てほしい作品ですね。
「ホンモノ」を見た
ホンモノ。
それ以外の感想が浮かんでこない。CGもない1954年当時の映画製作に携わった先人たちに、後の名もない令和の映画ファンの一人として限りのない尊敬と感謝を贈る。正直に言うがこの作品は自宅で衛星放送か何かで見た経験はあるが、劇場で全編通しで見るのは人生初体験だった。午前十時の映画祭ありがとう。
4Kの最新技術で修復されたゆえ映像はクリアだった。が、音声(セリフ)がところどころ聞き取りづらく如何ともしがたい。ところがセリフが聞こえなくても役者陣の演技でもってスクリーンの状況がどう変化していくのか、どういう感情でいるのかがすべてわかる。これはすごいことだ。たとえば今日のH野圭吾の映画化作品のようにべらべらべらべらと喋る出演者のセリフですべて説明してくれる親切おせっかい極まりない作品とは対極を成す。「映画とはこういうものだ」という哲学を黒澤明をはじめ、現場のスタッフもまた共有している。最近の作品では「宝島」もそうだ。あれもうちなーぐちのセリフがわかりづらいがため低評価を被っている。もしも黒澤組が「宝島」を撮っていたら説明セリフなんか一言も使わずに撮りあげたに違いないのではないか?
そんなこともふと考えてしまった。感服。これが映画。これこそ映画。まさしく見事。
現在のエンタメの原型
マジックナンバー『7』
もう70年以上前の映画なんだ…
それであの長時間を一瞬たりとも飽きさせずに作り込んでるのって本当に凄い。(とか言いながら劇場では仕事の後観たからかちょいちょい寝落ちしてしまったので翌日もう一度観たくなって2日連続鑑賞🌀)
以下、箇条書き👇️
◯エンドロールならぬオープンロール(クレジットが映画の最初)で名前の書かれ方がアッチコッチ色んな方向見ていて読みにくい……
◯野伏←のぶせり、と読むことを初めて知った。しかし、野武士と野伏の違いは分からず。ま、とりあえず知らない言葉を知られるのはいくつになっても面白い。
◯農民与平が志村けんの変なオヂサンにしか見えない
◯菊千代いいねー山犬みたい(←作中でも言われてた)で可愛い。でも後半の戦のシーンでは上半身に比べて圧倒的に下半身の防具が身軽すぎ。山犬といえど、さすがに褌一丁はいかがなもんかと。おかげで後ろ姿はすべてぷりっケツ丸出しで、場合によっては下半身丸出しの変態仕様??と脳がバグる場面もチラホラ。
三船敏郎は羅生門でも何度か乳首出てたと記憶してるんだけど、乳首の綺麗さとかが売りなのかしら?
◯勘兵衛さん、全体を見渡せる戦略家で戦術家。自分も戦う頼りになる軍師。なんならもう神様みたい。あ、マジックナンバー『7』って七福神とか七つの大罪とかお釈迦様が生まれてすぐに歩いた歩数だとか、神様と関係ある数字だゎね。
◯お志乃ちゃん、盛り過ぎ。その上、「お侍のくせに弱虫!」と自分を抱かない男を罵る姿に恐ろしいほどの気の強さを感じました。
◯村の爺は普通に長老味溢れる可愛い爺ちゃん、村の婆はまるで妖怪。というかリアル湯婆婆(髪型はムッシュかまやつ)
◯久蔵さんのニヒルなダンディズム
◯勝四郎がお志乃におにぎり持ってく時に入っちゃう水溜まり、深過ぎてプチ湖ww
と、全体的にコメディ感強いと言うか人間のリアルをそのまま映し出した感じがして、世界のクロサワと言われる巨匠の超長編映画ってどんだけ気張ってるのかと思ってたけどわかりやすいし見易かった。
そしてところどころ、ありえないほど美しいシーン(例えば稲穂が風にそよぐシーン、とか)が出てくるの凄い。
購入した午前十時の映画祭15のパンフに書かれていたけど、3ヶ月で終わると踏んでた撮影が11ヶ月もかかったせいで、キャストの衣装の季節感がおかしくなったとか。菊千代くんはあの軽装で豪雨の中の合戦シーンを真冬に撮ってたとか可哀想すぎる……
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