七人の侍のレビュー・感想・評価
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無駄な絵が一枚もない❗️
なんという画面!キャメラで映し出される画面、映像、絵にこれっぽっちも無駄がない。無駄な表情も無駄な動きもない。目の前に繰り広げられる絵にただただ圧倒された。セリフも素晴らしい(三船敏郎は滑舌悪いのでよく聞き取れない箇所あった)。志村喬の言葉の一つ一つ聞き漏らさないようにした。加東大介の頼もしさと千秋実の「中の下」だけれど居てくれるだけで有り難い存在感にやさしい気持ちになった。絶対死なないと思っていた、精悍な顔と鋭い腕前の宮口精二に思わず声がでてしまった。まだ前髪のある木村功のなんという清らかさと誠実。花の中に寝転ぶ姿はまだ子どもの顔だ。そして菊千代(三船敏郎)が前半では出たり消えたりなのが後半になるにつれて光り輝く。小動物みたいにしなやかな肉体といたずらっぽい眼差しの子ども好きの男。左ト全が亡くなった時、親に死なれた赤ん坊を抱いた時、「これは俺だ」と号泣する姿は哀しかった。
「七人の侍」を初めて見ることができた。我慢強くしたたかで小狡くて偏狭で卑屈な百姓の人生。学問を修め剣や弓や乗馬の鍛錬を行い己を律する侍、弱い存在に横暴と暴力を振るう侍。人間の複雑さをも描き込む作品に、監督らの個性が強烈に表れていた昔の多くの邦画の豊穣さにうっとりしつつ呆然とした。
「午前十時の映画祭」ありがとう。
ななにんのさむらい、じゃないよ
1954年にモノクロ、スタンダードサイズ、モノラル音声で公開された。1975年の劇場リバイバル時にはステレオ音声での上映。物の本によると、撮影時はモノラルで同録されたが、光学トラックだけでなく、磁気テープでのバックアップ音源が存在するとのこと。ステレオ化はこの音源がもととなった。このサイトのトップページにあるカラーのポスターには「4チャンネルステレオ音声」と表示されているので75年版のポスターなのだろう。この作品にはいろいろな版があり、三船敏郎出演部分のみアフレコして斬殺音(バサッバサッていう奴ね)を加えた音声ヴァージョンもあるらしいし、テレビ上映ではアスペクト比を変えてヴィスタサイズにしたものも観たことがある気がする。いずれにせよ207分もあるのでTVではカットされているシークエンスもあり、侍たちが相手の根城を逆に襲うシーン(平八が討死する)は久しぶりに観たかもしれない。ここは攫われていた利助の女房が焼死する割と陰惨な部分なのでカットしたくなるかも。
さて、今回の4リストア版は、もちろんノーカット(フィルム劣化で失われかけていたカットも回復)、音声は75年版準拠で、モノクロ映像はコントラクト美しく再現された。ベストの状況だと思う。観るべし、です。
さて今回、改めて発見した点は勝四郎(木村功)の重要性。やっぱり菊千代がどうしても目立っているものの(彼は単なる野生児ではなく「聖と俗」をシンボライズしているかにみえる)勝四郎が伝令として動くことによって黒澤明が意図したジョン・フォードの西部劇的な空間表現ができているところがある。このあたりが「荒野の七人」と違うところであちらさんの劇空間がどうしても薄っぺらいのは本家の勝四郎の役割をきちんと理解できていなかったからだと思う。
最後に、たまに「ななにんのさむらい」と言ってしまう人がいて嫌ですね。ここは純粋な数詞としての扱いだし、音読みの「にん」につながるのでやっぱり「しちにんのさむらい」が正しい。
と思ったら、劇中、志村喬さんが「七名(ななめい)」とセリフを言っているのでビックリ。昔から誤用っていうのはあるんですね。滑舌をよくしようと言う意図があったのかもしれないが。
これが星五つなのは当たり前
子供の時見て、テレビでオヤジが観てたがつまらないから見なかった。十代後半で観て、よくできた娯楽作品だとは思ったが、何しろ新しいものか旧作でも作風が斬新なのを追い求めていて、評価が定まらず。
羅生門、生きる、白痴、どですかでん、赤ひげとか娯楽作品ではない作品は評価したのですが。本作を凄いと思ったのは30歳以降かな。
登場人物が沢山いますがその心中を理解する範囲が増えるほど、エピソードの意味を感じると共に、評価が修正されました。
菊千代を演じた三船は難しい役だと思います。
浪人が集まって報酬もなく村人を助けるために野武士を撃退するなんてある得ないですが、なんかリアリティーがあります。日本の武士、侍の印象を海外に知らしめた作品です。
もう片方は用心棒の桑畑三十郎ですね。
こんな作品は作ろうと思って作れないと思います。作ったのですね。評価は年齢と共に時には激変します。
完璧すぎる理想
黒澤明ほど自分の理念を追求し、それを映像として表現できる監督は他にいないだろう。
『七人の侍』は黒澤明の内面を見事に映像化した、集大成とも言うべき作品である。
七人の侍はそれぞれが社会の内にある
①知恵 ②実務力 ③ユーモア ④優しさ(弱さ) ⑤武士道 ⑥理想 △本能
を象徴している。
特に三船敏郎演じる菊千代は、農民出身でありながら侍を名乗り、理性と情念のはざまで揺れ動く人間の矛盾や葛藤を体現している。
彼が水車小屋の赤ん坊を見て涙する場面は、その象徴的な瞬間だろう。
本作全体にも、理性と情動の対比構造が流れている。
武士たちは秩序と統御の象徴であり、農民たちは日常の不安定さや生存欲求を抱える存在として描かれる。
黒澤は、この両者の緊張と共存のバランスの中に共同体の在り方を探ろうとしているように見える。
また、本作は戦後の日本社会のメタファーとしても読むことができる。
農民たちは当時の一般国民、侍たちは外部から秩序を提供したアメリカ、野武士たちは戦前の軍部を象徴しているとも解釈できる。
黒澤はこうした外部から与えられる秩序(統治・保護・支配)が共同体を救うという一つの理想モデルを描きたかったのだろう。
本作で特に評価されているのは、その映画技法である。
屋外撮影の自然光を活かし、カメラ位置・構図・役者の動きが一体化した立体的な画面構成は驚異的。
4Kリマスターで鑑賞したが、立体感はまるで3D映像のように感じられた。
戦闘描写のリアリズムも秀逸で、CGでは決して描けない「馬と人間の泥まみれの混沌」が展開される。
その中で描かれる必要な死。そして最後に生き残るのは知恵・ユーモア・理想である。
私がこの映画を観るたびに感じる腑に落ちない感覚──それは黒澤明が理性を少し信じすぎているのではないか?という違和感だった。
今回再見して気づいたのは、完璧に構成された作品ゆえの、その「完璧性」が持つ限界(ある種の矛盾)である。
4K UHD Blu-ray (クラリテリオン版)で鑑賞
92点
総合芸術の金字塔
恋も戦いもハラハラドキドキ
何度観ても感動する、素晴らしい名画!
日本が世界に誇る大傑作中の大傑作!!
207分の長尺が体感2時間程度のあっという間、70年前の作品とは思えない、見応え満点の“人間を描いた”スペクタクルアクション巨編!!
前半分は傭兵のリクルート、後半分は村を挙げての野武士との死闘、というグイグイ引き込まれる見事な脚本で3時間半まったく飽きさせないのが驚異的
野武士達も酷いけど、農民の方も生きるために残酷・残虐だったり、姑息だったり、貪欲だったり、するというシニカルなメッセージは納得がいくし現代にも通じる普遍的なテーマ
キャスティングも素晴らしい
島田勘兵衛を演じる志村喬さんがめちゃくちゃシブい、菊千代を演じる三船敏郎さんがめちゃくちゃエネルギッシュ、そのほか 千秋実さんや加東大介さん等々の最高のアンサンブルキャストが最高です
1ショット1ショットにこだわりを感じる、大巨匠 黒澤明監督の画力に圧倒されます
特に馬に乗って村を襲撃する野武士達や火を放たれた家屋の燃え盛る炎、そしてクライマックスの雨の中でのバトルシーンは大迫力、さすが世界の映画史に刻まれる大傑作の風格を備え、本作を観ること自体が素晴らしく意義のある体験でした
いまさら
農民を知るための映画でしょうか。
言わずと知れた名作だか、いかんせん邦画はセリフが聞き取りづらく、更に年代物はまったく何を言ってるか、であったが、字幕、という便利な機能を知り、3回目にしてようやく全編見れました。余談であるが、この機能なら羅城門も観る気になれる。
さて、肝心の内容は、、
ハリウッドリメイク含め、7人ものはある程度観ており好きな映画ではある。そして本家本元。
物語、それぞれの侍のキャラ、というより気になるのは農民のボンクラ、無知能さぶり。そこの描写にただならぬこだわりを感じる。
当時の農民の無教養と、愚かさ、恍惚さと、侍の対比を通じた時代描写が裏テーマなんだろうか。ラスト、一夜の契はなかったものとして、農民に戻る娘。うむ、士農工商の壁はれっきとして越えられず、何人失おうとも、また田んぼを陽気に耕す。
最後に何人か侍は死ぬが、そこの死は必要なかったのかなあ。
持ち上げすぎ
黒澤明の最高傑作
監督脚本は"世界のクロサワ"黒澤明。
【ストーリー】
時は戦国末期。
戦乱につかれ、国内はことごとく荒れ果てていた。
あるうらぶれた寒村に、くり返し野伏たちの集団がおとずれ、狼藉をはたらいていた。
「このままでは村が滅ぶ。侍をやとって、用心棒として来てもらおう」
長老の儀作と若い利助は、町に出て侍をつのるがうまくいかない。
そんな折、盗賊が人質をとって家屋に立てこもる事件がおこる。
そこに居あわせた初老の侍が、髪を落とし、僧のふりをして盗賊を斬り伏せ、鮮やかに解決する。
男は島田官兵衛。
負け戦をいくつも重ねた、浪人であった。
官兵衛は仲間をあつめ、合計七人の腕におぼえある侍たちと、村を守る戦いにその身を投じる。
初めて見た感想は、
「長い」
「侍じゃなくて農民の話じゃん」
でした。
5年ほど漬け物にしておいて再鑑賞したら、まったく逆の感想になってました。
そのあいだに『用心棒』『椿三十郎』『羅生門』『隠し砦の三悪人』『乱』『影武者』『生きる』『赤ひげ』『蜘蛛の巣城』なんかをつづけて見て、どれも傑作級映画で、予習も終わったとさあ見なおしました。
いい。
まあこれがめっちゃいい。
侍たちの生きざまも、農民たちの苦しみも、それぞれ一方向にギュッと集合して流れてゆく重厚な群像劇で、そりゃジョージ・ルーカスや秋山瑞人が新作に取りかかる前に、必ず一丁見なおすわと。
剣戟も野伏との戦いも攻撃のタイミングがリアルで、この映画の影響で時代劇でリアル侍ムービーがたくさん作られたそうです。
こだわりのあるアクションのために、殺陣師、いわゆる剣術の振付に、本物の古武道の達人を呼んでます。
香取神道流の杉村嘉男さん、その後黒澤作品はじめ数多くの映画やドラマの剣戟指導を担当されたとか。
この方、国際古武道団体から、十段の称号を贈られてます……かっけえ……。
初期の黒澤チャンバラ映画は架空の舞台がおおく、この『七人の侍』もその一つなんですが、それでも説得力と生々しい生命感をおぼえるのは、演技演出を徹底しておこなうから。
数多い登場人物の、いずれもおざなりには撮られておらず、中でも傑出してるのは黒澤作品ではおなじみの侍頭・志村喬さんと、菊千代役の三船敏郎。
お二人とも、演技もいいけど剣戟もいい。
仲間を集めるあたりなんか、肉体の操縦術や身体能力の高さがうかがえて、見返したらたまらんですな。
撮影時のおもしろエピソードとしては、村が襲われて村人の女性が背中を矢で打たれて倒れたシーンに黒澤監督、
「殺された者があんな声をあげるわけがない!」
と撮り直しを要求したら、やられ役の女優さんがもろ肌脱いで背中をむけて、
「刺さってるでしょうが! 血が出てるでしょうが!」
とケガした部分をズイズイ見せてきたという。
なんか、防護用の板を入れてたそうですけど、ちょっと貫通しちゃってたんですって。あぶないね。
あんまりの迫力に、黒澤監督めずらしく主張をひっこめて、そのシーンは無事そのまま使われることになったそうです。めでたいね。
世界中の映画ランキングに入りまくる、日本映画の稀代の傑作。
白黒と嫌わず音が悪いと避けず、今からでもぜひぜひ見てほしい大傑作ですよ。
劇場で初鑑賞
燦然と輝く時代劇アクションであり、冒険活劇の最高傑作。
7人の侍(浪人)が、野盗と化した野武士の襲撃に悩む農民に雇われ、集落を守るべく、野武士集団との戦いに挑む姿を描く。世界で最も有名な日本映画の1つ。
劇場型の躍動感、気持ちが高ぶるストーリー、1人1人の侍たちの生き様と俳優陣の熱演、ダイナミックな戦闘シーンに満ちている。黒澤明監督ほど、画面を縦横無尽に使い尽くし、広大に見せる監督もそうはいないと感じた作品。
「チームを組んで目的を達する」というプロットが、西部劇だけでなく、世界中の映画に多大な影響を与えている。
武士と農民の葛藤、ユーモラスで人間味あふれたキャラクター、ロマンスも適切なタイミングで盛り込んでいる。機知に満ちた脚本に基づく、驚くべき冒険活劇であり、輝かしい時代劇アクションとして、最高傑作の1つだと思う。
【"勝ったのは、百姓たちだ・・。”今作は邦画が世界に大いなる影響を与えた名作である。だが、叱られることを重々承知の上で、以前から思っている事を、ドキドキしながら記す。怒っちゃ嫌よ。】
■作品内容については、これだけの名作であるので敢えて割愛する。
ご存じの通り今作は米国で2作がリメイク制作されている。
「荒野の七人」は配信で鑑賞し、その後アントン・フークア監督により制作された「マグニフィセント・セブン」は劇場で鑑賞した。
とても、面白かったモノである。
<感想というか、率直な意見。・・重ねて記すが、怒っちゃ嫌よ。>
・今作は、少し前に「午前十時の映画祭」映画祭で鑑賞した。とても面白かったのであるが、フラストレーションも感じたモノである。
フラストレーションの理由は、キッパリ書くが特に<休憩>の前の、名優揃いの役者陣の一部の台詞が聞き取りずらいのである。と言うか、何を言っているのか分からない部分も有った。
因みに、劇場で観た際には、私は40歳になったばかりで、且つ会社での健康診断での聴力検査は、全く問題なしで有った。
普段から、ブリティッシュ・ロックをハイハイボリュームで車内で聴いていたにも関わらず。
・志村喬さんが演じた勘兵衛の台詞は良く聞こえた。落ち着き払った言動や、野武士たちからの襲撃を恐れ、助けを求めて来つつ、一部の百姓が逃げようとした際の、毅然とした良く響く台詞は、沁みたモノである。
・だが、今作の主役の一人である菊千代を演じた世界の三船敏郎氏の台詞が、役柄もあるのかもしれないが、良く聴きとれないのである。
場合によっては仕草から、類推したモノである。
■勿論、最後半の激しい雨中での戦闘シーンは、白眉である。このシーンには台詞は要らない。斃れゆく剣の求道者、宮口精二演じる久蔵の姿。
七人の侍たちが、農民の為に命を懸けて戦う姿は名シーンである。
■で、久方ぶりに配信で鑑賞した。フルボリュームで。
だが、多くの台詞が聞き取れない。自然音と同時に録音していたのだろうか、聞き取れない。
そして、思ったのである。今作が、海外でも高い評価を得たのは、内容のハイレベルな事は当たり前としても、【字幕で】上映されたからではないだろうか、と言う事である。
<私が記載した事が的外れな事であれば大変申し訳ない限りである。だが、私はこの作品の内容を貶しているわけではない。逆にキチンとこの名作を細部まで理解し堪能したいのである。
出来得ればの話だが、この作品を最近多い日本語字幕付きで、何処かの配信会社で上映してはくれないだろうか。
私は、この名作をクリアーな音声で観たいのである。切なる願いである。>
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