劇場公開日 2023年11月23日

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「一番うさん臭いのはおまえだ。」ゴーストワールド あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0一番うさん臭いのはおまえだ。

2023年11月23日
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鑑賞方法:映画館

最初に思い出したのは「バグダットカフェ」。
制作年は10年以上離れているし縁もゆかりもない2本の映画だけど、一方は居所をみつける話で、もう一方は居所が見つからない話という両極端なところから。
居所を見つけられないのはもちろんソーラ・バーチ演ずるイーニド。映画の宣伝では疎外感を抱える少女2人がうんぬんとバディものの印象を持たしているが、「ブックスマート」なんかと異なるのはスカーレット・ヨハンソン演ずるレベッカは結構良い子ちゃんでしっかりと自分の居場所を確保しているところ。イーニドとは抱えている暗黒の濃さが全く違う。途中からレベッカの姿は背景に後退し、イーニドがもがく姿が話の主体となる。というかレベッカ自身もイーニドの悩みの一つになってしまうのです。共謀相手、同調者じゃなくてね。
主役の女子2人はもちろん光っているけど、この映画でのキモはスティーブ・ブシュミ演ずるシーモアです。そもそも外見からして怪しげで良いですね。オタクで女性恐怖の持ち主ということで、生き難さというところ、イーニドと心を通わせていくのだけど、この男は只者ではない。意外と抜かりなく立ち回ることによってイーニドを追い詰めていく。母親の介添えを受けて心理療法を受けていたり、エンドクレジットの後でコンビニにおける別撮シーンが挿入されるのは彼の二面性を表現しているんだと思いますね。すなわちシーモアは、イーニドがシンパシーを感じるような相手では実はなかったのだと思う。結局、シーモアもレベッカも、イーニドの父親、そのガールフレンド、美術教師と同じく、イーニドから見れば実体のない、うさん臭いゴーストのような存在だったということですね。

あんちゃん