「他に類を見ない完璧なハッピー・エンドに、涙が止まらない…😭」ザ・プレイヤー たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
他に類を見ない完璧なハッピー・エンドに、涙が止まらない…😭
ハリウッドにある映画スタジオの重役、グリフィン・ミルが引き起こしたとある事件と、その顛末を描いたブラック・コメディ。
主人公グリフィン・ミルを演じるのは『トップガン』『ジェイコブス・ラダー』の、後のオスカー俳優ティム・ロビンス。
殺人事件の調査を担当する刑事スーザンを演じるのは『カラーパープル』『ゴースト/ニューヨークの幻』の、後にショービジネス界のグランドスラム「EGOT」を達成することになるレジェンド、ウーピー・ゴールドバーグ。
👑受賞歴👑
第50回 ゴールデングローブ賞…作品賞(ミュージカル・コメディ部門)、主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)❗️
第45回 カンヌ国際映画祭…男優賞、監督賞❗️
第46回 英国アカデミー賞…脚色賞、監督賞❗️
第58回 ニューヨーク映画批評家協会賞…作品賞!
第8回 インディペンデント・スピリット賞…作品賞!
叛逆の巨匠ロバート・アルトマンが、商業主義に走る映画界への不満をぶちまける問題作!
ハリウッドを舞台にした現代劇ということで、65人ものスターが実名でカメオ出演を果たしている。
豪華カメオ出演らしいのだが、自分のような映画リテラシーの低い観客では、登場するスターに全然ピンと来ない😅
ピンと来たのはシェール姉さんとジェフ・ゴールドブラムくらい。あと刑事コロンボね。
『ダイヤルMを廻せ!』のポスターやヒッチコックの顔写真が大写しになるなど、おそらくヒッチコック作品のオマージュ要素も多いのだろうと思われるが、これも映画リテラシーの低い自分には伝わらないところだった。
メタネタもおそらくは多く仕込まれているのだと思う。
自分が気付いたところでは、ウーピー・ゴールドバーグ演じる刑事のスーザンが、オスカー像を持ってスピーチの真似事をやるシーン。
ここは本作が公開される前年のアカデミー賞において、『ゴースト/ニューヨークの幻』への出演により実際にオスカーを受賞したウーピーだからこそのネタなのだと思われる。
このように、本作は映画に詳しい人ほどニヤッと出来る要素が多く含まれている映画である。
『黒い罠』『卒業』『ロープ』『自転車泥棒』など、過去の名画についての言及も多く、特に『自転車泥棒』は物語のキーワードになっている。
これも『自転車泥棒』を観ていれば「なるほど!」となっていた可能性はあるが、自分は観ていないのでなんとも言えません…。
この映画、はっきり言って1時間50分は全然面白くない!
自分の映画リテラシーが低いから面白くないのか、とも思ったが、クライマックスの展開で全て腑に落ちた。
110分間の、長い長ーいフリ…からの、あのクライマックス!
まさにイピカイエー!な展開は、これが『キング・オブ・コント』なら優勝間違いなし🏆✨
爆笑してしまいました!🤣🤣🤣
ラスト15分を観るために、長い長い110分間を耐えなくてはならないが、その価値は大いにある。こんな映画観たことないもん。
大物プロデューサーのグリフィン。
彼の考える「良き映画」の条件は①サスペンス②笑い③バイオレンス④希望⑤ハート⑥裸⑦セックス。
そして彼がなによりも重視するのは「ハッピー・エンド」であること。
ハッピー・エンドこそが最重要ポイントであり、その前には「リアリティ」なんて不要だと考えている。
彼はまぁ言ってしまえば現代ハリウッドの権化。
表向きは「映画は芸術」という態度をとってはいるが、一番の感心事はその映画がヒットするかどうか。
試写会での観客の反応次第で、その映画のエンディングを変えることもある。
彼の仕事は1日125本もの脚本の持ち込みから、映画化するものを選ぶこと。選べるのは年間でたった12本。
12本/45,000本なのだから、とんでもない倍率である。
そんな仕事なので、当然ながら敵も多い。
そんな彼が、何者かから脅迫状を送られる。彼は疑心暗鬼から、罪のない脚本家を殺してしまう。そして、偶々出会ったその脚本家の恋人と恋に落ちてしまう。
そんな彼の罪がバレるのかバレないのか!?彼女との恋の行方は!?
…という、ベタといえばベタな内容。
本作はグリフィンの思う良い映画の条件が全て備わっている。
それにも拘らず映画は退屈極まりない。
サスペンスはだらっとしているし、ラブ・ロマンスも薄っぺらい上に飲み込みづらい。
もうこれは意図的に「ハリウッド的な良い映画」をおちょくっているとしか思えない。
「お前らの考えている映画論なんて、退屈極まりないんだよ!見せてやるぜオラっ!」
って感じで、とにかく定石を踏みながらもどこかズレているということが積み重なってゆく。
そして最後の「ハッピー・エンド」!
「一年後」から後の展開は全人類に見てほしい、正に完璧なコント🤪🎉こんなもん絶対笑うやろー!
こんなに悪意に満ちた「幸せな2人」からのTHE ENDは誰も見たことがなかっただろう。
作中でグリフィンが、ヒロインであるジューンに「君は真のアナーキストだ」と言い放つ。彼女は映画を全く観ないし本も読まない。
「真のアナーキスト」とはこの映画の精神そのものであり、また商業主義に塗れた現代において、映画も本も観る価値はない、という監督の強烈なメッセージであるとも受け取ることが出来る。
さらに、現代の映画界への批判に加え、懐古主義的な観客への批判も忘れない反骨精神が素晴らしい。
「オーソン・ウェルズとかヒッチコックとか昔の映画は良かった。今の映画?観てないけど。」
こういうスノビズムへの嫌悪感こそが本作の根底であり、だからこそ引用やカメオ出演、メタネタを多用しているのかもしれない。
「わかる人にはわかる。分からないやつはバカ。」みたいな姿勢をおちょくっているようにも感じられた。
21世紀に入り、商業主義の産物である安易な続編商法は、映画のユニバース化という新しいゾーンに突入している。
一長一短のある映画のユニバース化だが、間違いなく言えるのは、長く続けば続くほど新規参入が難しくなっていくということ。
「MCU」なんてドラマも始まってしまって、もはや新規参入不可能だろ、なレベル。
そして、過剰とも思える近年のポリコレ化。
観客の目を気にするあまり、逆に映画の持つ可能性を閉じていくことに繋がってはいないだろうか?
本作が作られてから30年経ち、映画業界の良くなったところ、逆に悪くなったところはどこなのだろう?などと考えさせられた一作。本質はあんまり変わっていないように思うけど。
つまらないことに意味がある、という映画界のパンク・ロック。
やっぱりジュリア・ロバーツとブルース・ウィリスは最高だぜ💥💥💥