ザ・バニシング 消失のレビュー・感想・評価
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迫り来る飄々とした恐怖。真相を知らずにいられなくなる心理的作用に震撼。
この映画の噂はずっと前から聞いていたが、なかなか見る勇気がなかった。なにしろあのキューブリックが絶賛するほどなので、うっかり足を踏み入れると、何か邪悪なものが心の中に入り込まれそうな気がしていたからだ。が、公開から30年もの月日が流れ、ようやく意を決して観た本作は、私の予想を大きく覆すものだった。バイオレンス場面は皆無だし、表立って恐ろしいことが起こるわけではない。
むしろ「忽然と恋人が消えた」という心の穴を突きつけられ、そこに「何らかの事情を知る男」のコミカルにさえ思えるほどの飄々とした日常と思考を対比していくことで、本作は実に不気味な手触りと陰影を生み出していく。冒頭のトンネル内の映像は実に象徴的だ。
気付かぬうちに徐々に引き込まれていく流れ、真相を知らずにいられなる心理的作用に、唸らせられる。もしかすると『セブン』などの後続のサスペンス作はこの影響を多少なりとも受けているのかも。
キューブリックが絶賛に惹かれて
願望
サスキア‼︎
88年のオランダ、フランスの合作映画。
監督はジョルジュ・シュルイツァー。
オランダからフランスへドライブ旅行に来たレックスとサスキア。しかし途中で立ち寄ったドライブインでサスキアは忽然と姿を消した。
そして3年の月日が流れるが、レックスは新しい恋人がいてもサスキアを忘れられず捜し続けていた。やがてそれも限界に達し半狂乱に陥るレックス。ついにテレビ番組にて見えない相手に「真実が知りたい」と問いかける。結局新しい恋人はレックスの元を去るのだが、同時にサスキアの消息を知っていると語るレイモンという男が現れた。
知りたければフランスまで一緒に来いとの誘いにレックスは仕方なく乗り、レイモンに同行する。
道中、レイモンはある動機を語り始める。
26年前に思いついた実験。
悪事を働くには悪の心が必要ではない、という証拠であるということ。
殺人には「殺したい」という感情が働いているが、生き埋めにするならば「穴掘り」と「埋める」という単純作業で事足りる。つまり感情は必要なく、そうする事でレイモン自身に悪は存在せず、それが自身の正しさを証明する証拠にもなる、という理論。
レックスは「狂ってる」というしかなかった。
そして、レイモンはレックスに一杯のコーヒーを差し出し「これを飲めば真実が分かる」と告げる。
あまりにも怪しすぎる展開。
眠らされると分かっていて睡眠薬入りのコーヒーを飲むなんて愚の骨頂としか言いようがない。
真相を知らずに死ぬか。
真相を知ってから死ぬか。
いつしかレックスの人生はこの二者択一にのみの思考にしか従えなくなっていた。
ある意味、レックスもサスキアの末路に取り憑かれた結果、レイモンと同様の反社会性パーソナリティ障害に陥っていたのかも知れない。
目が覚めたレックス。
言うまでもないが暗闇の中。
かろうじてライターを照らすと狭い箱の中らしい。
いくら叫んでもどこにも届かない。
結局サスキアの最後がどうなったのかが描かれることはなかったが、レックスの末路を見れば一目瞭然と言わざるを得ない。
ラストカットはレイモンの無表情な顔、そして新聞に載ったレックスとサスキアの顔写真と行方不明の文字だった…。
スタンリー・キューブリックが大絶賛した本作。
近年まで日本未公開だったが2019年に満を辞して日本での劇場公開に至る。
サイコサスペンスの金字塔とも言うべき数々のキャッチコピーがつけられる名作であるが、あくまでも88年の作品でありハリウッドのような派手な演出は一切ない。
ソファに寝っ転がって観たが、途中で寝落ちしなかった。何か惹きつけられるものがあったんだとは思うが、一体なんだったのだろう。
そして、それ以上に不思議だったのは、予約録画をセットした記憶は一切ないのに、この映画が突然録画されていたことだ。
何故だろう?
既視感ありと思ったら「失踪」のオリジナル版だったんだ。 最初のトン...
主人公は「ラスコーリニコフ」か?
行方不明になった恋人を探し求める主人公と、その犯人の心理を描く物語。
異色のサスペンス・・・というよりは、人間の酷さをを描いた人間ドラマのように感じられます。
特に、犯人の描き方が不気味で秀逸です。
良き夫、良き父を演じながら犯行の衝動を抑えられず、冷徹に実行に移す犯人。
人間の不気味さと残酷さを際立たせる存在でした。
ただ、映画全体としてみれば捉えどころがなく、高い評価は難しい作品でもありました。
不親切さが心地好い。
犯行の一部始終
変態男が女を連れ去る事件をリアルに描いている。
カップルの女が連れ去られ男が3年にも渡って探し出し、ついに犯人を特定し、真相を探ろうとする。
真相を探る過程で犯人の回想による犯行の一部始終がリアルに描かれる。
間違って知り合いの女に声をかけて気まずい思いをしたり、声をかけた女の男に難癖をつけられたり、やっと車に乗せることができたかと思えば、くしゃみをして台無しになったりと成功するまでの紆余曲折をリアルに描いている。
そんな経緯をえてついには成功する訳だが、数々の失敗の描写があるゆえに成功したときのリアルさがより一層強化されている。
犯行の回想のシーンは徹頭徹尾犯人の主観で描かれていて思わず感情移入してしまう。
「予感」のコントロール
3つの「知りたい」が交差する最悪の追体験映画
妻を誘拐された男と誘拐した犯人、そして観ている側の3つの「知りたい」が交差する最悪の追体験映画と言うべき作品。
旅行中に妻サスキアがサービスエリアで急にいなくなってしまうという悲劇に襲われるレックスは諦め切れず、その後3年間、新しい彼女がいてもサスキアを探し続けて、メディアの力を借りて犯人に呼びかけたりしているうちに犯人と思われる人物から手紙が届く…
一方でもうひとつの視点として、ある男の姿が映し出され、その男レイモンは犯人なのである。この映画は、犯人が誰かということがテーマではないため、早い段階でおそらく犯人だということをバラしてしまう。
レイモンは、山小屋で叫んでみることで声が聞こえたかを近所に聞いてみたり、女性を車に連れ込む話術や眠らせ方の練習をしている。ときには自分で薬品を使って何分眠っているかを計っていたりと…何やらよからぬ実験を繰り返していて、時には失敗しておバカな部分が見え隠れするその男の願望は純粋に「悪」を「知りたい」というものだった。
レイモンの屈折した願望はどう生まれたかと言うと、皮肉なことに溺れていた子供を助けたことで「正義」とされたことがきっかけであった。「正義」は知ったから、その対照的存在の「悪」を追求したくなったというのだ。
娼婦を誘拐するのは簡単だが、それでは理不尽さが足りない、裁かれるべきではない人間が最悪の理不尽体験をさせられることが「悪」の所業だと考えていた男にとって、狙うべきは旅行客であったのだ。
家庭のある普通の男が人とは違う願望によって動かされて、純粋に「悪」になろうとする様子や過程を観ることは怖いのだが、気づくと観ている側もこの続きを「知りたい」と思ってしまっているのだ。
ついにレックスとレイモンは対面することになり、レックスは怒りからレイモンを殴るがひと段落すると、レイモンに「真実が知りたいなら車に乗れ」と言われ、強要されたわけではないのにノコノコと車に乗ってしまう。
普通だったら、妻を誘拐した犯人の車なんかに乗るわけはないし、対面したときに警察に通報することもできた余裕もあったのに、それはしなかった。つまりレックスは犯人を捕まえるということよりも、サスキアに何が起きたのかということを「知りたい」という願望の方が勝ってしまったのだ。
犯人との不思議な長距離ドライブで感じることのできる何とも言えない距離感や緊張感は、なかなか体験できるものではないし、途中でレイモンがパトカーに止められるシーンがあるが、ここでも警察に言うわけでもなく、逆にここで捕まって真実がわからなくなることの方がありえないと考えてしまったのである。
サスキアが誘拐されたサービスエリアで休憩をしながら、木の棒をいじいじしたりして「何だこの時間は」と思わされるのだが、これこそ「焦らし」であり、観ている側もまんまと「知りたい」という欲求を掻き立てられてしまっているのだ。
そして「このコーヒーを飲めば目が覚めた頃には真実がわかるし、サスキアと同じ体験ができる」と言われ、睡眠薬入りのコーヒーを飲むかどうかという、最悪の選択をさせられる。つまり殺されていたら自分も殺されることになるのだ。
このコーヒーを飲むかどうかの選択後の結末は是非、映画で観てもらいたい。文章で説明してしまったら簡単だが、物語の流れで知らされる「真実」は、何ともいえない余韻を残すことは間違いないだろう。
丁寧な伏線も見事
陳腐すぎ。自業自得の救われない映画
主人公以上に何があったのか気になる!
すっぴんのシネマストリップで映画ライターの高橋ヨシキさんが推していたのを聞いて、ずっと見たいと思いながらもポケモンGOを優先させていたけれど、ポケモンも飽きて来たし明日までなので急いで見て来た。
旅の途中で忽然と姿を消した恋人を、執念深く探すレックスの元に謎の手紙が届く。
その手紙の主はいったい何が目的なのか…
この映画の嫌な(褒めてます)ところは明らかにどうかしている犯人につい肩入れしてしまうところ。
練習と失敗を繰り返し、上手くいくかなとドキドキさせられ、上手くいった時にはちょっと嬉しくなってしまう。
それに振り回されるレックスの方が狂人に見える。
スタンリー・キューブリック監督が今まで見た映画で一番怖い映画と褒めたのも分かる緊張感のある映像であっという間に106分が終わってしまう。
伝説の未公開映画を見られるのは今だけ!
明日までだけど、劇場で見て欲しい。
徹底的に無駄が削ぎ落とされて非常にソリッドだ 画面に映るもの全てに意味がある
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