劇場公開日 2019年4月12日

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「迫り来る飄々とした恐怖。真相を知らずにいられなくなる心理的作用に震撼。」ザ・バニシング 消失 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0迫り来る飄々とした恐怖。真相を知らずにいられなくなる心理的作用に震撼。

2019年4月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

知的

この映画の噂はずっと前から聞いていたが、なかなか見る勇気がなかった。なにしろあのキューブリックが絶賛するほどなので、うっかり足を踏み入れると、何か邪悪なものが心の中に入り込まれそうな気がしていたからだ。が、公開から30年もの月日が流れ、ようやく意を決して観た本作は、私の予想を大きく覆すものだった。バイオレンス場面は皆無だし、表立って恐ろしいことが起こるわけではない。

むしろ「忽然と恋人が消えた」という心の穴を突きつけられ、そこに「何らかの事情を知る男」のコミカルにさえ思えるほどの飄々とした日常と思考を対比していくことで、本作は実に不気味な手触りと陰影を生み出していく。冒頭のトンネル内の映像は実に象徴的だ。

気付かぬうちに徐々に引き込まれていく流れ、真相を知らずにいられなる心理的作用に、唸らせられる。もしかすると『セブン』などの後続のサスペンス作はこの影響を多少なりとも受けているのかも。

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牛津厚信