キャスト・アウェイ : 映画評論・批評
2001年2月15日更新
2001年2月24日より日本劇場ほか全国東宝洋画系にてロードショー
トム・ハンクス、無人島にひとり
典型的な現代人(トム・ハンクス)が、孤島にひとり、取り残される。そこには追いかけてくる時間も、文明もない。あるのは生き残るための孤独との、そして自分との闘いだけ。そして4年が過ぎ、サバイバルに成功した主人公は、今度は自分を追い越していった時間と対峙しなければならなくなる。
「キャスト・アウェイ」はこけおどしとは無縁の、驚くほどシンプルな映画。ゼメキス監督がこれの合間に撮った「ホワット・ライズ・ビニース」とは対照的だ。事故描写の迫力はすごいが、孤島の描写にはほとんどせりふがなく、音楽さえ流れない。波の音だけ。これだけで観客を釘付けにできるんだから、ゼメキス、そしてハンクスはやっぱりうまいなあ、と唸る。無駄をそぎ落とし、観客の想像力に多くをゆだねる構成は、自信の証だろう。
主人公の失ったもの、そして得たもの、生きる意味。抑制が効いているからこそ、伝わるものがある。と同時にシンプルすぎて足りない部分(恋人との関係、主人公のキャラなど。ハンクスに頼りすぎか)も。最後に残った箱の中身を「ボックス・オブ・チョッコレイト」(By「フォレスト・ガンプ」) にしてくれたらよかったのに、と思うのは私だけ?
(若林ゆり)