カポーティ

劇場公開日:

解説

05年度アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演女優賞、助演女優賞、脚色賞の5部門にノミネートされ、カポーティ本人に生き写しの演技を披露したフィリップ・シーモア・ホフマンが主演男優賞を受賞したドラマ。1959年11月15日、カンザス州ホルカムで農家の一家が惨殺される事件が発生。「ティファニーで朝食を」で名声を高めた作家トルーマン・カポーティは、この事件に興味を覚え、小説「冷血」の執筆を決意し、現地へ飛び、事件の容疑者ペリーと面会する。

2005年製作/114分/アメリカ
原題または英題:Capote
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
劇場公開日:2006年9月30日

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映画レビュー

3.0これはものすごい映画だ。

2024年11月16日
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『ティファニーで朝食を』などの人気作家、トルーマン・カポーティが、実際に起きた一家惨殺事件をもとに、代表作『冷血』を完成させる過程を描いた伝記映画。物語の中心は、カポーティの心の彷徨だと思う。 実際の事件への取材をもとに『冷血』を書き上げた手法について、自らノンフィクション・ノベルと名付けたカポーティが、この作品以後、長編は未完のままで、死ぬまで書き上げることは無かった。 上品な知識人の皮の下にある、エゴイズムを持ったカポーティ。功名心と好奇心から、殺人事件の取材を始めたが、死刑囚と心を通わせることで、賢明さと人間性という、心が大きく揺れ動く。 カポーティの複雑な心理を見事に表した、フィリップ・シーモア・ホフマンの完璧な演技に尽きる。静かなトーンの中にも、魂を揺さぶる力強さと、並々ならぬ洞察力を持った、ものすごい映画だと思う。

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瀬戸口仁

4.0果たして「冷血」の意味は、犯人か、カポーティか、はたまた社会か…

2024年2月28日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

アメリカ文学と映画の関係についての書籍を 読んで、まずは「冷血」を先行鑑賞し、 この作品も比較鑑賞した。 先に見た「冷血」は、カポーティが “ノンフィクション小説”と名付けた原作 を元にしていることもあってか、 ドキュメンタリーのような雰囲気で カポーティは登場しなかった。 しかし、この映画で分かったのは、 彼は犯人と密接に関係しており、 「冷血」の方は “ノンフィクションだが、やはり小説” であったのであろうことを想像させられた。 一方、この「カポーティ」は、 当然ながら彼が主人公として登場して、 「冷血」の作者の内面描写に ウエイトを置いており、 フィリップ・シーモア・ホフマンの アカデミー主演男優賞受賞演技と共に 見応えがあった。 また、この映画では様々なことを新たに 知ることが出来た。 ・映画「アラバマ物語」の原作者が  女性だったこと。 ・捜査官の妻がカポーティのファンだった  ため、犯人の処刑までの間、  二人は親しい関係だったこと。 ・カポーティは「ティファニーで朝食を」で  著名だった作家の地位を使って  かなりの頻度で犯人に接見していたこと。 ・カポーティが犯人のために弁護士を  雇っていて、裁判の当事者だったこと。 等々。 当初は、ただ作家としての成功意欲で 事件の真相を書きたかった カポーティだったが、 彼の著作を判決に優位に使いたいとする 犯人の一人ペリーの思惑とは ズレを感じながらも、 また、それを知りつつも、 彼と似た境遇に絆された想いを引き摺る中で 「冷血」を著した。 そして、この「冷血」経験によって、 この事件から亡くなるまでの19年もの間、 カポーティは一作も書き上げなかったように この作品では示唆されたが、 実際はどうだったのだろうか。 また、“冷血”の意味をこの作品の中では、 犯人の冷酷な犯行か、 犯人と親しくしてまで進める冷酷な取材か、 と問われて カポーティは前者の意味と答えた。 しかし、執筆スケジュールを優先しようと する彼の気持ちが描かれたり、 弁護士手配が上手くいかないとの言い訳、 また「アラバマ物語」の作家から “あなたは救いたくなかったのよ”の台詞から、後者の意味を完全否定はしなかった。 果たして真相は、と自分なりに考えたが、 よもや、カポーティや犯人の境遇を生んだ “社会”を“冷血” と言っているのかも、と想像もしたのだが。 映画「冷血」がこの事件の社会的意味性に 重点を置いた作品としたら、 映画「カポーティ」は事件を通じての 彼の内面の思索に焦点を合わせた作品 のように思えるカポーティ絡み2作品の 鑑賞となった。

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KENZO一級建築士事務所

2.0知らないと退屈かな

2023年12月31日
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プライア

3.0『冷血』という題名の二重定義

2022年5月5日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

本作は『ティファニーで朝食を』の原作者が実際に起こった事件を題材にしたノンフィクションノベル執筆にあたり、とりわけ実行犯のひとりに情が芽生え、「友」としての自分と「商業作家」としての自分の葛藤を描く。 トルーマン自身の悲しい生い立ちや事件に対して「見たいように見たい」大衆に迎合しなければならない自身の立場、『アラバマ物語』で知られる“ネル”ハーパー・リーとの交流などを描く。 本作は小説『冷血』執筆から完成までの過程を描いている訳だが、作品の中で 「冷血」とは誰の事を指すのか?について言及される。 トルーマン自身は大衆受けを狙い、「男性的な」タイトルにしたというが、 この作品はトルーマン自身がもっと深い意味を込めたと私は解釈した。 それは大衆迎合主義の密やかな反抗であり、何もできない、むしろかえって傷つけてしまったかもしれない友人に対する彼なりのある種のけじめのようなものだろう。 それ以来、長編作品を上梓できなくなってしまったことがその何よりの証左だ。 自らを「冷血」な人間だと称すトルーマン・カポーティ。しかし彼は「あたたかい血」が流れている人間だったんだと感じさせる作品だった。

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スモーキー石井