コミカルにはじまるけれどスリラー領域へ変化するサムシングワイルドのような展開のロマンチックコメディ。さいしょはThe 40 Year Old Virginみたいな感じ。口べたで奥手なジョン(ベンチャップリン)。ロシアの花嫁紹介サービスによるとナディア(キッドマン)は英語も料理もできる花嫁にうってつけの人だったのに、じっさい会ってみたら言葉が通じない。帰国させようとするが性接待と憐憫にほだされて思いとどまる。が、彼女のいとこと称するおっかない男ふたりがやってきて・・・。
昔はじめてキッドマンをみたとききれいさに驚嘆した。今はAIで美人を描けるがおそらく初めて見たキッドマンはそういう感じだった。ようは絵に描いた人みたいだった。ポイントは寄った時の肌質感で、AI画では人間らしい“しみ”のたぐいが除去される。キッドマンもそんな感じで白陶器のようだった。
筑紫哲也だったと思うが近くでみたらあまりにきれいでビックリしたと語っていた。その発言は、じぶんは何人も世界の美女を間近で見てきたがそうそう驚いたことはない──と前置きしてのものだった。
さいきんフレイザー家やBeing the Ricardosの50代のキッドマンを見て、もちろんきれいな人に変わりはないが、そこはかとなくWildenstein値を感じた。いじるとだれもが彼女に近づき、いじるほど似ていく。ご存知とは思うが、なんども伸ばしたり注入したりするうちに中毒化するのだそうだ。マドンナみたいに。
だいじなのは、すこしいじったらそこでやめておくことだろう。
キッドマンは更年期へ対応するようにDestroyerみたいな汚れ役もやるようになったが00年代が黄金期だった。(じぶんが見た範囲内なので網羅性はないが)BirthやStepford WifeやDogvilleやThe Othersなど今もおぼえてるのが幾つかあるし作品のクオリティも高かった。酷評された奥さまは魔女のリメイクも個人的には楽しんだ。
Birthday Girlには美人局のような構造がある。金をもっていそうな孤独な男に女を送り、歓待しておいてから乗り込んで寄生する。だけどナディアもジョンの誠実さにほだされる。見るからにまじめそうなベンチャップリンだから納得できた。が、映画はロマンチックでもなく笑えもしない。甘甘でいけばよかった話をスリリング方向へ振っていて混沌としてしまった。ただしキッドマンは記憶にのこる演技と見た目をしていた。
ナディアはほんとは性悪女なのだが囲み目メイクがいらずらっぽく、キッドマンは英語を話せないロシア女にしか見えなかった。
批評は両論だったが、どちらの立場をとる批評家もキッドマンの演技は褒めていた。
今後ロシアはもうこんな無邪気なモチーフにはならないだろうしその意味でも懐かしかった。