バーバーのレビュー・感想・評価
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つい自分と重ねてしまう
物語において寡黙な人は、思慮深く慎重な人物ばかりだ。その思い込みでずるずると進んでしまう。そして、ピアノの少女の一言でハッとする。そしてこれまでの自分の経験から、主人公の心境が手に取る様に見えてくる。次にそこにいるのは自分かもしれない。そんな可能性が現実味を持って突き付けられる。
後からじわじわきた
全編陰気で、
せっかく見つけたと思った希望も思い込みだったり…。
と書いてしまうと観たくなくなるかもしれません。
これは純愛映画です。
淡々としてはいるけれど、
深く流れる切ない愛がある。
主人公がそんな自分に向き合ったのは
絶望的な状況でなのですが。
観終わったあと、ジワジワときました。
何日か余韻が抜けなくてなんとも言えない感覚を味わいました。
好きなタイプのコーエン兄弟作品。
劇場公開時鑑賞。
一見平凡な日常が、ちょっとしたことでズブズブの底なし沼になって、主人公を飲み込んでいく。自業自得? 自己責任? みんなが常に正しい選択ができるなら、誰も苦労しない。どこで踏みとどまれば良かったのか。
まあ、ウッカリにも程があるが。
コーエン選手らしい作品
この兄弟の何とも形容しがたいブラックな雰囲気について考察してみました。
この人の映画は、セリフのやり取りや画面転換のテンポがズルッと外れます。言い換えれば間が悪い。つまり、話かけられた相手が答えるタイミングが1秒くらいズレるんです。そしてまた、その答えがふるってない。
この作品も、お話自体はかなり怖いと思いますが、このテンポのズレによって観る者は力を入れたいところで入れられないので、変にしらけてしまって登場人物に感情移入できず、滑稽味だけが残ります。この滑稽味をブラックと言っているわけです。
登場人物が基本ポーカーフェイスで自慢そうな顔をしているのも、この傾向に拍車をかけていると思われます。
この作品は上述のコーエン選手らしさが非常にわかり易く発揮されていると感じました。
ちょっと合わなかったな
冴えない床屋の元にふって沸いた投資話。ふとした出来心から便乗したら…というお話。モノクロ映像ではじめは画面に引き込まれたが、ストーリーに盛り上がりがなく、何度も寝てしまい、観るのに二日かかってしまった。真面目にコツコツ働きなさいという教訓を伝えたかったのかな?
What kind of man are you?
初老の床屋の理髪師がとある投資話に興味を抱き、妻の不倫相手を脅して大金を手に入れようとするが、事態は思わぬ展開になっていく。
ミステリーものではあるけれど、主人公が無口で諦観しながらも情熱的な人物で興味深い。全編モノクロ映像で美しい。
最後までどのような展開になるのか読めないミステリーとしても秀逸だが、コーエン監督の人生観を編んだような映画。すばらしい!!
髪型を変えるように・・・
人生を少し変えたかっただけなのに、何が起こるかわからないと言いますか、上手くこなしていく運の強い人もいれば、一歩踏み外し転落してしまう人もいます。 ドライクリーニングなんかに手を出さなければこんな事には・・・僕は脳足りんの人間なので
深く理解することはできませんが(笑)、この映画何か好きなんですよねえ(^-^)
ちょっとした欲と転落。「悪」としてではなく、人間の性質の1つとしての犯罪
『ファーゴ』(1995)では狂言誘拐,『バーバー』(2001)では脅迫。コーエン兄弟が描いたのは,ちょっと欲を出して簡単に大金を得ようとした結果,想定外の事態が発生し,金持ちになるどころか家族や自分の命まで失う人々だった。「こんなことになるなら、今まで通りの生活をしていればよかった」
『バーバー』の主人公の仕事は,床屋である。
「ちょっと欲を出して全てを失う」
「1日に0.3mmしか伸びないが,待っていれば必ず伸びる髪の毛」
劇中で明言されることはないが,この2つが対比されているようにも思える。
『ファーゴ』や『バーバー』における犯罪は,「正義」「悪」と言った観点から,断罪されることはない。登場人物たちは,しばしば「犯罪」という語によって示唆するような悪意を持たない、もっと素朴な人々だ。素朴な人間のちょっとした工夫,「欲」の延長として"犯罪"が描かれるのだ。
モノクロ版もカラー版も共にたまらなく美しい。
なぜかカラー版で見てしまった
現金で1万ドルを支払ったのに、最後では小切手になっていて、理解できない点もあった。
それにしてもベートーベンの「悲愴」がいい。しかし、主人公が音楽に関して全く無知であるのが微笑ましいですよね。気持ち良かったです。
終始沈着冷静
50年代(49年)の雰囲気がまず堪らない。
エドの野暮ったいスーツの着こなしもアノ時代だからこそのセンスで床屋の店内に子供達の髪型もナイスでまだロックンロールの洗礼を受けていないフィフティーズに比べると明るさが無い時代描写も良い。
B・B・ソーントンがハマり役でエドに愛着が湧くが何てつまらなさそうな人生ってか人間的に。
何が楽しくて日々を生きているのかって位に無愛想だし基本的に笑いもしない。
悪気も後悔も死ぬことへの恐れすら無いのか?てな無感情で無表情な掴み所が皆無だが魅力はある。
ある意味で感情が表現された事柄が変態的でもある。
何が起きてもどんなオチになろうとも一切乱れず感情のまま突き進むエドに哀愁と渋さが。
主人公の顔の渋さが面白い。
たいして悪い人間でもなく、なんとか夫婦でやりすごせそうだったのに弁護士にひっかきまわされてひどい事になったようにも見えるんだけど、よくよく考えると人に努力させて自分の人生に価値を持たせようとする人間て一番嫌な人種かもしれないので納得。
誰もが陥る
素晴らしい。この言葉に尽きる。コーエン兄弟は人間の本質を描くのが上手い。
毎日同じ事の繰り返し。これを少しだけ外見(髪型)を変えるように少しだけ人生の道筋を変えたいという感情のために何か嘘くさい話でも乗ってしまうのは誰もがあり得る話。
そしてそれが成功するも失敗するもわからない。しかしそれが人生である。こんなことを教えてくれた。
そして最後まで話の最後が読めない。こんなに考えさせられる映画は久しぶり。名作。
入り込まずには要られない
DVDの音声解説でもコーエン兄弟が語るように彼らの作品は頭を空にして観るべきなのかもしれない。 とは言っても、細部まで作り込まれた映像や40年代フィルム・ノワールに捧げられたオマージュを目の当たりにして深く入り込まずには要られない。
映画芸術の世界では昔から映像に組み込まれる比喩表現によって多くを語って来た。そして、コーエン兄弟はこうした比喩表現の巧みさに於いてトップクラスだ。
映画だけでなくこの世界で生産されるもの全ては"人間に"よって"人間"の為に作られる。
だから、映画に於いても例えSFでも、ミステリーでも、壮大なファンタジーでも、突き詰めれば向かう先は"人間"や"人生"の本質であると思う。
そして、彼らの作品も例外ではなく"如何に人間を描くか"、"どんな人生を表現するか"であり、その表現力が素晴らしいのである。
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