はなればなれに(1964) : 映画評論・批評
2001年2月1日更新
2023年4月29日よりヒューマントラストシネマ渋谷、角川シネマ有楽町ほかにてロードショー
ゴダール絶頂期の名作がついに日本初公開
「男と女と車が1台あれば映画はできる」と言っていたゴダールは、その言葉どおり「勝手にしやがれ」を撮り、この映画を撮り、「気狂いピエロ」を撮った。だが、いかなる運命の悪戯か、日本ではこの「はなればなれに」だけオクラ入り。今回、実に37年ぶりの初公開だ。
推理小説マニアの若者2人が愛車シムカを走らせ、北欧からやって来た女の子と3人組で強盗に入る──「ゴダールの映画史」では寝てしまった人も、これならオッケーのB級仕立て。授業中に手鏡をのぞくアンナ・カリーナのコギャルぶり(ハイソックスだ!)、3人がフロアで踊るマディソン・ダンス……ジャームッシュやタランティーノがハマるのも無理はないカッコよさ。だが、どんなにアメリカチックに戯れても、冬枯れのパリの霧のようにたちこめる「深い、深い、深い悲しみ」。
音楽ミシェル・ルグラン、撮影ラウル・クタールは、ジャック・ドゥミの処女作「ローラ」と同じ。“ヌーヴェル・ヴァーグの真珠”と讃えられた「ローラ」の日本公開も、製作から30年以上あとだった。この2粒の真珠には、青春の甘さと苦さと同時に、失われた時も閉じこめられているかのようだ。
(田畑裕美)