「ヤッたの? ヤッてないの?」アメリカン・サイコ ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)
ヤッたの? ヤッてないの?
面白いとは聞いていたものの、先延ばしにしていて、Netflixの配信が終わるタイミングに駆け込みて鑑賞。
あーおもしろかった!
し、めちゃウケる。
こんなにウケたのは「未来世紀ブラジル」以来かも知れない。
とにかく終始皮肉が効いててこちらをくすぐってくる。
ウォールストリートに生きるヤンエグたちの暮らしを当時のカルチャーとともに描くブラックコメディ。
オリバー・ストーンの「ウォール街」ではまだ食うか食われるかの騙し合いが描かれていたが、本作では仕事をしている気配そのものがない。
形式的に出社はするけど、頭にあるのは他人から見て自分がイケてるか、イケてないか、ただそのうわべだけ。
そのマウンティング合戦はほんとトレーディングカードとか、メンコの強さを競う小5男子と変わらないノリ。
白人・男性・エリートのみが参入できる戯れ。
町山智浩の評論本にも取り上げられていたけど、まあこういう連中はバブル日本にも実在したらしい。
ただ、彼らに「好きなものがない」というのはどうだろう?
空虚さを自覚するゆえに売れ筋のポップソングに過剰に移入する主人公は、「好き」とは言えないのだろうか。
その歌が好きなんじゃなく、投影された自己像を愛しているのだとしても、ほとんどのエンタメなんてそういうものでは?
自分の分身だから特別な思い入れがある。というのが愛ではないとしたら、「タクシードライバー」のトラビスに自分を重ねる秘宝界隈も同罪なのでは?
果たして自己愛の強い人間にはなにかを愛することはできない?
真の愛か否かなど、誰が何を基準に決めるのだろう?
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