2046 : 映画評論・批評
2004年10月16日更新
2022年8月19日よりシネマート新宿、グランドシネマサンシャイン、シネマシティほかにてロードショー
「静」の魅力を引き出された木村拓哉の美しさ
出演シーンがカンヌ上映版から大幅に増えた劇場公開版がベールを脱いでも、やはり日本での話題の中心は木村拓哉になってしまう宿命の「2046」。しかし、これは結果的に意外なほどの木村拓哉の映画かも。なにしろ、「花様年華」の後日譚で木村が演じるのは、チャウがしたためる近未来小説「2046」で「失われた愛」を取り戻せる場所を目指す男。つまり、主人公の分身なのだから、ウェイトは大。
もちろん、過去の愛に囚われた中年男の煮え切らなさが全編に漂わせる気怠さに身を委ねることこそが、ウォン・カーウァイ作品の醍醐味ではある。だが、ややもすると物憂くなりすぎかねないムードのなかで、視覚に刺激を与えてくるのが美しき者たち。60年代パートのチャイナドレスの女たちの艶めかしさもさることながら、近未来パートでの物言わぬアンドロイドと木村。とりわけ、連ドラでの熱血キャラとうってかわって、「静」の魅力を引き出された木村の美しさときたら! ファンには悶絶もののはず。そして、俳優たちにそれぞれの母国語を話させたアイディアも効果的。
近未来感を醸しだしつつ、海外にむけて木村の演技力をよりミステリアスにして、木村にとって世界進出作としてはおいしい作品になったのでは?
(杉谷伸子)