バニラ・スカイ : 映画評論・批評
2001年12月17日更新
2001年12月22日より日比谷スカラ座他全国東宝洋画系にてロードショー
いわば「アイズ・ワイド・シャット」の独身貴族版?
<注意!>
この原稿は、SPOILER(ネタバレ)を含んでいます。お読みになる方はご注意ください!
さすが、キャメロン・クロウ監督&夫人ナンシー・ウィルソンのコンビだ! ポール・マッカートニーの表題曲「バニラ・スカイ」をはじめ、ボブ・ディラン、ピーター・ガブリエルらの名曲がズラリと並ぶ、実に耳に心地よい映画だ。クロウが書いた脚本は、前作以上に「身」が詰まっている。シナトラとジャック・ダニエルの挿話があったり、モネの絵の隣にジョニ・ミッチェルの絵があったりと、音楽ファンにはたまらない台詞の連続で笑えるのだ。トム・クルーズの相手役2人の美女――夢想(理想!?)の女のペネロペ・クルス、地獄へ引きずり込む女のキャメロン・ディアス――も申し分ない。けれど……。
タイムズスクエアを人払いして撮影した夢のシーンで始まるように、すべてが“夢オチ”なのだ。いわば「アイズ・ワイド・シャット」の独身貴族版といった風。アレハンドロ・アメナバール監督の本家「オープン・ユア・アイズ」とは前半は一緒、後半は“悪夢の解説”が説明過剰に展開される。クルーズの大仰な演技が「甘くて酸っぱい」題材が似合うキャメロン・クロウ映画から、「甘美さ」を薄めてしまった。ジェイソン・リー(好演)が主役のほうがクロウ映画らしくなったハズ!
(サトウムツオ)