劇場公開日 2003年5月17日

「【3人の世代を超えた『ダロウェイ婦人』の生と死の香り漂う一日を描いた作品。名匠スティーブン・ダルドリーによる見事な作品構成、且つ脚本が絶妙に上手い、格調高き哀しき作品でもある。】」めぐりあう時間たち NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【3人の世代を超えた『ダロウェイ婦人』の生と死の香り漂う一日を描いた作品。名匠スティーブン・ダルドリーによる見事な作品構成、且つ脚本が絶妙に上手い、格調高き哀しき作品でもある。】

2025年1月13日
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ー ヴァージニア・ウルフの『ダロウェイ婦人』を書架の奥から引っ張り出して来て、色々と確認しながら、観賞。-

■1941年、英国サセックス。作家のヴァージニア・ウルフ(特殊メイクをしたニコール・キッドマン)は、夫に感謝の言葉を綴った遺書を残しポケットに石を入れ、川に入って行く。

■1923年、英国リッチモンド。ヴァージニア・ウルフは浮かない顔で、『ダロウェイ婦人』の粗筋を考えている。精神を且つて病んでいた彼女は、少しその症状が出つつあるのか、憂鬱そうな顔をしているが、姉のヴァネッサ・ベル(ミランダ・リチャードソン)には秘めたる想いを持っていて、彼女がロンドンへ帰る際にキスをする。

■1951年、米国ロサンゼルス。ローラ・ブラウン(ジュリアン・ムーア)は、何処か満たされない思いを抱きながら、夫ダン・ブラウン(ジョン・C・ライリー)の誕生日ケーキを息子リチャードの手伝って貰いながら作るが、上手く行かずにそのケーキを捨ててしまう。
 友人のキティ(トニ・コレット)が訪れるが、彼女は子宮筋腫である事を告げ、ローラは彼女に涙を流しながらキスをする。
 そして、彼女はリチャードが”お母さん、行かないで‼”と叫ぶ中、車をあるホテルに向けて飛ばす。部屋に入ると彼女は愛読書『ダロウェイ婦人』をベッドの上に置き、更に数種類の薬の入った瓶を置き、横になるが水に呑み込まれる夢を見て我に返り、家に戻る。だが、この出来事はリチャードの心に傷を残してしまう。

■2001年、米国ニューヨーク。クラリッサ(メリル・ストリープ)は、HIVに犯された友人リチャード(エド・ハリス)の受賞パーティーの準備をしているが、リチャードは若き時にクラリッサと若き時に暮らした想い出に浸って、厭世観漂う表情をしている。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・今作は、ヴァージニア・ウルフの『ダロウェイ婦人』の内容と、ヴァージニア・ウルフが終生苦しんだ精神病及びレズビアンの性癖を、1951年のローラ・ブラウン、2001年のクラリッサの一日と連関させて描いている。

・クラリッサと言う名は、『ダロウェイ婦人』の名前であり、ローラ・ブラウンの息子リチャードは2001年のクラリッサの若き時の恋人である。
 又、リチャードと言う名は、ダロウェイ婦人の夫の名でもある。
 そして、リチャードは母の行為から受けた心の傷などもあり、クラリッサに”感謝の言葉を述べて”窓から身を投げるのである。
 そこに駆け付けた、老いたローラ・ブラウンは”誰も私を許さないでしょうが、私は死よりも生きる事を選んだの。”とクラリッサに告げるのである。

<今作は、3人の世代を超えたヴァージニア・ウルフの『ダロウェイ婦人』の、生と死の香り漂う一日を描いた作品なのである。
 名匠スティーブン・ダルドリーによる見事な作品構成、且つ脚本が絶妙に上手い、格調高き、哀しき作品でもある。>

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