劇場公開日 2003年5月17日

めぐりあう時間たち : インタビュー

2003年5月16日更新

緻密な構成、演技派俳優の豪華競演、そして数々の受賞とノミネートなどで話題の本作。今回、見事オスカー主演女優賞に輝いたニコール・キッドマンと、監督のスティーブン・ダルドリーに森山京子氏がインタビュー。その発言から、この映画の成功の鍵が見えてくる。(聞き手:森山京子)

ニコール・キッドマン&スティーブン・ダルドリー監督インタビュー

■ニコール・キッドマン
「鼻のことばかり聞かれるけど、別に似せようと思ったわけじゃないわ」

スティーブン・ダルドリー監督から聞いた話では、「めぐりあう時間たち」の3人の女優のうち、最後まで出演を渋っていたのはニコール・キッドマンだ。もっとも、彼女に言わせると、「渋っていたんじゃなくて、とても出来ませんと一度お断りしたの」ということになるのだが。

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「バージニア・ウルフを演じる自分が、全然想像出来なかったの。エミリー・ブロンテには前から惹かれるものがあったから、文学者を演じるとしたら彼女かなと考えたことはあるけど、ウルフは無理だと思った。それでなくても私は、うまくいかないんじゃないかと考え込んでしまう方なのよ。なのに、スティーブンと話しているうちに、私にも出来ると確信を持たされてしまったの。彼は本当に誘い上手。どんな相手でも思うように動かしてしまうんだもの」

そんなに尻込みしたウルフ役だが、いざやると決めたら、怖いもの知らずで突き進む。それがニコールだ。ウルフの伝記や資料を読み漁り、録音されていた声を聞き、付け鼻で顔の印象まで変えてしまうのだから。普段の心配性の一面と、演技に対する大胆な情熱の落差は、デンゼル・ワシントンが「主演女優賞は鼻の差でニコール!」とジョークを言った時の、彼女の照れ笑いにも出ていた。

「みな鼻のことばかり聞くんだけど(笑)、別に顔を似せようと思ってやったわけじゃないわ。ウルフのキャラクターに入り込んでいく段階で、自分の顔を使って何か新しいものを見せられるか探ってみた結果、ああなったの。普段は吸わないタバコをたくさん吸って、声のトーンを低くしたのも同じことよ。声を似せるためというより、自分の中にウルフという人を吸収したかったの」

とは言っても、美しさを損ねるような顔の改造を面白がってOKするなんて。他のハリウッド女優ではこうはいかないだろう。

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「それこそ、私が考えているポイントだわ。演じるキャラクターに忠実であることが、役者の第一の仕事じゃないかしら。顔や体は演ずるための道具なんだから、自分の顔にこだわるわけにはいかないわ。それに、才能があっても仕事を貰えない俳優はたくさんいるのよ。そんな中で、やり甲斐のある役を恵まれたんだもの、その役を生ききるためには、何でもやらなくちゃいけないのよ」

この前向きの熱意が、時に気の強さと誤解され、計算高いとバッシングされたこともあるニコール。だが、トム・クルーズとの離婚後は、彼女本来のフェアな意識と真面目な頑張りが認められてきたようだ。

「明日は何が起きるか判らない。それが人生なんだって、つくづく学んだわ」

と、離婚当時を振り返るニコール。

「だから良いことも悪いことも、そのまま受け止めなくちゃ。オスカーを貰ったから全てOKだなんて思えない。幸運は、やってきた時と同じように素早く去っていくものよ。感謝する気持ちを忘れず、自分に出来ることは何なのか、探し続けてチャレンジしていきたいわ」

カンヌでお披露目されるラース・フォン・トリアーの「Dogville」で、ニコールがどんなチャレンジをしているか、楽しみだ。

>>スティーブン・ダルドリー監督インタビュー

インタビュー2 ~スティーブン・ダルドリー監督
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