「足し算をすれば盛り上がると勘違いしている、ダメな続編の典型例。」スパイダーマン3 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
足し算をすれば盛り上がると勘違いしている、ダメな続編の典型例。
アメコミ・ヒーロー映画『スパイダーマン』シリーズの第3作。
N.Y.市民に認められ、MJとの仲も深まり、公私共に絶好調のピーターだが、突如としてかつての宿敵グリーン・ゴブリンの装備に身を包んだ人物に襲われる。さらに新たなる敵、サンドマンも現れる。さらにさらに、宇宙からの飛来生物、シンビオートがピーターに迫る。
監督はサム・ライミ。本作では原案/脚本も担当している。
○キャスト
ピーター・パーカー/スパイダーマン…トビー・マグワイア。
メリー・ジェーン・ワトソン…キルスティン・ダンスト。
ハリー・オズボーン/ニュー・ゴブリン…ジェームズ・フランコ。
J・ジョナ・ジェイムソン …J・K・シモンズ。
ノーマン・オズボーン/グリーン・ゴブリン…ウィレム・デフォー。
新キャラクターであるピーターのクラスメート、グウェン・ステイシーを演じるのは『ヴィレッジ』『レディ・イン・ザ・ウォーター』のブライス・ダラス・ハワード。
製作総指揮/原作はスタン・リー。本作でももちろんカメオ出演しており、電光掲示板を見上げるピーターに名言を残すお爺さんとして登場する。
製作総指揮として、ケヴィン・ファイギも引き続き参加している。
映画シリーズの3作目は駄作になりがち、という法則に見事に当てはまってしまった一作。
名作だった『1』『2』と同じ監督が作ったとは思えないグダグダ加減。これまで監督に徹していたサム・ライミが脚本まで手掛けているのが原因なのだろうか?
3作目にも拘らず、相変わらずピーターとMJの恋愛はすれ違う。何故、シリーズで一番ダメなところを継承し続けるのか疑問でしょうがない。ピーターとMJの恋模様には誰も興味が無いことを、誰か監督に教えてあげなかったのか?
MJは相変わらずビッチだが、今回はピーターも悪い。もうダメだコイツら。
せっかく『2』でひと段落ついたんだから、今回はラブ・ストーリーを描かなきゃ良いのに。
今回は悪役がなんと3人も登場!ニュー・ゴブリンにサンドマン、そしてあの人気キャラクターであるヴェノムまで!コイツは凄えや!
…とは残念ながらならない。
ダメな続編の典型として、とりあえず登場キャラクターを増やして画面を豪華にするというのがあるが、本作はまさにこれ。
一人一人の描写が薄くなってしまって、ドラマが展開していない。
大体、サンドマンが本格的に登場するのが映画開始から1時間後、ヴェノムの登場に至っては1時間30分後くらい。時間配分おかしすぎるだろっ💦
スパイダーマンの登場シーンが少ないのもダメになっている要因の一つ。つまらない人間ドラマに時間を割きすぎている。
大体、今更ベンおじさんを殺した犯人は別にいるって言われても、後付けの設定だとしか思えないっつーの。
公開当時から思っていたけど、子供の治療のために金がいるからといって、銀行強盗をしていいということにはならん。何を最後良い感じ風にサラサラと逃げおおせてるんだ。逮捕しろ逮捕を。
描きたいのは、過ちは回り回って自らに降りかかる、他人の罪を許す寛容さ、みたいなことなんだと思うけど、うーん、上手く表現出来ていない。
やっぱりキャラクターが多すぎて、一つ一つの物語を語りきれていないのが問題なんだろう。
ネットミームにもなっているピーター・イキリ・ダンスシーンを見てもわかるように、今回はコメディ要素が多め。前2作がかなりシリアスだった分、何故今回はこんな感じなの?と思わざるを得ない。
自らの心との戦いというハードなテーマなんだから、作風ももっとシリアスで良かった。JJJ編集長のギャグはキレッキレだったので、コメディシーンは彼に任せて、他はシリアスに徹してくれていればよかったのに。
アクションもちょっとアトラクションっぽくて、今回のはあまり好きじゃない。
とはいえ、クライマックスのピーター&ハリーの共闘には燃えた🔥
本作の唯一良かったポイントであり、まぁここでしっかりと締めてくれたから、これまでのグダグダ感も許せるかな、という心持ちになれた。終わり良ければ何とやら。
本作でシリーズ完結。サム・ライミ監督お疲れ様でした。
最後はグダッたけど、今に至るまでのアメコミ映画ブームを作った功績を考えると、もっと評価されるべきシリーズなのは間違いない。
MCUファンの人には観てもらいたいシリーズだし、サム・ライミ監督の名前くらいは覚えておいて欲しい。