劇場公開日 2007年5月1日

スパイダーマン3 : 映画評論・批評

2007年4月24日更新

2007年5月1日より日劇1ほか全国東宝系にてロードショー

アメリカの現在が抱える問題がはっきりと浮かび上がってくる

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アメコミの読者にはおなじみの、サンドマン、ニュー・ゴブリン、そしてヴェノムが登場するシリーズ第3作では、さらにもちろんスパイダーマンと恋人MJとのラブ・ストーリーもあるという盛りだくさんな内容。だが不思議なのは、これらそれぞれのストーリーが絡まりあいながらひとつの大きな物語を作り出すのではなく、それぞれが同じストーリーを語る、という点だ。

語られているのは「悪人にもそれぞれの理由がある。だから安易に復讐してはいけない」というたった一つのことである。誰もが善と悪の極を持ち、その中にそれぞれの世界が広がっているというメッセージなのだが、それが何度も分かりやすく丁寧に語られるとき、アメリカの現在が抱える問題がはっきりと浮かび上がってくる。

そのあまりの分かりやすさはちょっと寒々しくもあるだが、この映画はそこに奉仕するだけではない。監督のサム・ライミの映画体験の豊かさが、「ひとつのストーリー」の中のさまざまなディテールの幅を広げるのだ。40年代から50年代にかけてのハリウッド・ミュージカル、ホームドラマ、それから70年代のディスコ映画など、細部から映画の歴史が湧き上がる。一方にこんな豊かなアメリカがあり、そして一方に寒々しいアメリカがある。しかしそのどちらもアメリカだ。まさにこの映画が語るストーリーを、この映画自身もまた生きている。

樋口泰人

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