リディック : 特集
「リディック」ワールド攻略法
鷲巣義明
■宇宙年代記の幕が開く――「リディック」
「ピッチブラック」のリディックをフィーチャーした企画が始まった頃は、リディックが「ピッチブラック」のクリーチャーとのリターン・マッチをする話や、「ピッチブラック」以前の話など様々なアイデアが出されたが、トゥーヒー監督は物足りなさを感じていたという。
「リディックは悪人でアンチ・ヒーローだし、彼と戦う相手はもっと悪人じゃなくてはいけない。そこでロード・マーシャルを創造したんだよ。私は十字軍の活動に以前から興味があったし、宗教が人間に与える影響には、ある思いがあったからね。それをロード・マーシャルとネクロモンガー一族に託したつもりなんだ。だから本作はある意味、未来の歪んだ聖戦の話でもあるんだよ」
こうして作り出されたロード・マーシャルの存在は、リディックとは対照的な象徴として映る。己の肉体を酷使し、躍動感溢れるリディックは「生」をイメージさせるが、ロード・マーシャルやネクロモンガー一族は、バロック様式を基調にしたデザインの宇宙船や甲冑で統一されていて、どこか「死」のイメージがつきまとう。
リディックとロード・マーシャルの戦いは、どちらが正義で悪なのかが曖昧で、両者共、悪のように映る。これは、まるで今の戦争「ブッシュ・アメリカVSイラク」を象徴しているかのようだ。21世紀に到っては、邪悪な存在を倒すには、単なる正義感だけでは太刀打ちできないという隠喩として解釈しても面白いかも……。
これ一作で宇宙年代記が完結するというわけではなく、今後の展開によっては、壮大な世界観を有する宇宙年代記になる可能性を秘めているし、「リディック」には、それだけ膨大な情報量が詰まっている。そのため、リディックの夢に現れる謎の女性や、リディックがクリマトリアの刑務所で出逢う8歳の少年ブルーなど、やむなくカットされた部分もある。ファンにとっては、DVDで復活することを願うのみだが
■まだまだ広がる――リディックを軸に展開していく壮大な宇宙絵巻!!
「ピッチブラック」「リディック・アニメーテッド」「リディック」を観ても未だ解明されない謎は多い。しかし、肝心の主人公でもあるリディックが、なぜ現在のような犯罪者になったのか?という部分について、「リディック・アニメーテッド」の悪女チリングスワースは、「生きることとは、殺しのアーティストになること」と、リディックのことを表現していたが、これがちょっとしたヒントになるかもしれない。
また、「ピッチブラック」のリディックは運命を自ら切り開いてきたと思われていたが、「リディック」におけるシェイクスピア劇のような皮肉なラストを踏まえると、自分で切り開いてきた運命の道は、実は意外にも運命によって導かれていたのかもしれない……。
多くの謎をはらみつつも、既にキーラのスピンオフ企画が進行中だ。アメリカのケーブルTV局によって、「リディック・アニメーテッド」と「リディック」の間をつなぐエピソード……即ち、イマムのもとを去り、犯罪の道を歩み始めるキーラの姿が、TV映画の枠で描かれる予定だ。「リディック」はそれ単体でも楽しめる娯楽超大作だが、「ピッチブラック」と「リディック・アニメーテッド」を観てイマジネーションを膨らましてみれば、きっとさらに面白くなることは間違いない。そして今秋、アメリカで発売されるゲームによって、リディックの宇宙年代記は更に広がっていく……。