「好きですが」マトリックス リローデッド Syuさんの映画レビュー(感想・評価)
好きですが
久しぶりに見たので感想を。
前作が分かりやすいヒーローものだったのに対して、やや小難しいテーマ感を持たせる話になっています。
その為、主人公が強くなって戦いに勝つ、みたいな爽快感は無くなってしまいました。
登場人物のセリフが、かなり持って回ったような言い回しになっていて、一見分かりにくいですが、要は救世主の登場も予定調和の内だったと言うことです。
これはマトリックスを作ったのがコンピュータである事を考えると、納得できます。
人間は自分の選択が未来を作ると考えますが、コンピュータは意識を持たず、あらかじめ与えられた命令に従って、取捨選択するため、その選択自体がそもそも分かりきったことであり、その結果もまた予測の範囲内と考える訳です。
自分の理解を超えた事を見る事は出来ないというセリフが度々登場しますが、意識を持たないコンピュータにとっても、人間の行動は理解を超えていたという事です。
そんな訳で、計算から逸脱した部分を処理するために救世主が作られ、それに対応する事で、コンピュータ的なマトリックスの均衡を保とうとしたのだと思われます。
ネオよりも前に、何度も救世主は登場しており、その度にザイオンが作られ、破壊されて来たという事ですね。
今回の救世主であるネオが、博愛主義よりも個別の愛情を優先するよう意識づけされていた、という事とスミスの登場によって、今までとは違った結末が起こる訳ですが、この辺の遊び心的な味付けがされた理由はちょっと不明ですね。
当時はスミスが何人も登場するビジュアルが話題になりましたが、この辺りは後編のレボリューションズの結末にも深く関係しており、なかなか考えられたシナリオだなとは思います。
ただ、アクションのキレと、重力や加速度の表現がいまいちなので、見ているとちょっと野暮ったい感はあります。
映画の内容としては、これはこれで良いと思うのですが、もうちょっと分かりやすいエンターテイメントなノリで作ったものも見てみたかったなと思います。