「メアリーのスピンオフってないかな?」プライドと偏見 masakingさんの映画レビュー(感想・評価)
メアリーのスピンオフってないかな?
英文学はあまり好まず、原作も読まず嫌いだが、鑑賞してまず思ったのは「メアリーが一番興味深い人物なのに完全に扱いが粗末でもったいないな」ということだった。あの不器用さと屈折具合は、とても優れたヒューマンコメディの素材になるはず。願わくば彼女なりの幸せを手に入れてほしい。
邦題は「プライドと偏見」だが、自分が高校生くらいの頃は、「自負と偏見」という邦題にされていた。いま書店へ行くと「高慢と偏見」である。初めてストーリーを知って、これは「高慢という偏見」だろうと思った。ただそれだとこの話の一部しか言い当てていないので「自負への偏見」というのが最もしっくりくるかななどとつらつら考えた。
「眺めのいい部屋」を想起し比較しながら見てしまった。ダーシーは、ジョージ・エマソンと比べると優しいが常識的に過ぎる。ジュリアン・サンズが演じたジョージのクレイジーなほどのスケールの大きさが、当時の階級社会の打破には必要だったのではなかったか。
キーラ・ナイトレイ演じるエリザベスは、ヘレナ=ボナム・カーター演じるルーシー・ハニーチャーチと同等の情熱と、ルーシーを上回る論理的思考力を兼ね備えていて魅力的だったが、個人的にナイトレイの笑顔が苦手で、誰か別の俳優だったら…と思う。ちなみに、ピアノの腕前はたぶんルーシーに軍配が上がるだろう。
ジェナ・マローン演じるリディアのプッツンぶりも豪快で、あとちょっとやり過ぎると薬物中毒者スレスレの感じが良かった。役柄の幅が広く、個人的に好きな俳優さんだ。
階級を超えた愛にはあまり興味がないが、封建的な社会で、メアリーのような不器用で屈折した女性がいかにして生きていくのかにはとても興味がある。世俗の権化のような母親との噛み合わないやりとりや、品性に欠けるキティとリディアに振り回される姿など想像するだに、ああスピンオフが観たいと思うのだった。
そうそう。音楽は素晴らしかった。これで1ポイント上げておくことにする。