パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち : インタビュー
続編ものやアメコミ映画が乱立する近年の大作群の中で、数少ないオリジナルものとして全米サマーシーズンのヒット街道をひた走る「パイレーツ・オブ・カリビアン」。「ファインディング・ニモ」といい、今年の夏は海洋物が強い? そんな本作の見所はキャスティングにあり。誰もがその個性を認めるジョニー・デップがキャプテン・ジャックを嬉々として演じ、彼を慕うことで若手2人も自分の魅力を引き出している。そんな役者たちの理想的な関係が見えてくる、若林ゆり氏のインタビューをお届けしよう。
ジョニー・デップ インタビュー
「海賊ごっこに夢中な子供時代のようで楽しかったよ」
聞き手:若林ゆり
「パイレーツ・オブ・カリビアン」の魅力は、ジョニー・デップが背負っている。彼の演じるキャプテン・ジャック・スパロウの個性あふれるキャラクターは、彼でなければ決して生み出せないものだ。ジョニーがこのキャラクターをキース・リチャーズのイメージから創り上げたのは有名だが、そのアイディアは脚本を読むとすぐ、明確な形で浮かんできたという。
「キャプテン・ジャックのイメージを練り上げていくのは、実に楽しかったよ。海賊ごっこに夢中だった子供時代に戻ったようでね。僕は船の上で太陽にさらされ、ひとりで航海している彼の姿をハッキリ知りたくて、熱いサウナでイメージを膨らませたんだ。すると平衡感覚がなくなってフラフラしてきた(笑)。まるで酔っぱらいみたいにさ」
そう言ってニッコリ微笑む彼の口元に、金歯がキラリ。役作りのために入れた金歯が、まだ残っているのだ。
「この金歯はね、実は最初、もっといっぱい付けていたんだ。やりすぎだって言われて減らしたんだよ。でも、撮影が終わってすぐにフランスへ帰ったから、気がついたらこれを取ってくれるはずの歯医者から5000マイルも離れてた(笑)。娘は気に入ってるみたいだよ。目下のところ、パパは海賊だって信じてる。家族でレストランへ行ったとき、娘は両親の職業を聞かれてね。ママは歌手で、パパは海賊なのって自慢していたよ。僕としても誇らしい気分さ」
映画では、2枚目ウィル役を受け持つオーランド・ブルームとの相性もバッチリ。
「キャプテン・ジャックは呪われた男でね。ウィルは呪われているわけじゃないのに、呪われた男と一緒にいることで、ある意味で呪われた状況に置かれるんだよ。かわいそうに(笑)。キャプテン・ジャックはハチャメチャで、ウィルは真面目ないいやつだ。そういう対照的な2人が、お互いを必要としている。キャプテン・ジャックを生かすためにはウィルの真面目さが必要だし、ウィルを楽しく見せるためにはジャックが必要って具合に、役者としての僕らもお互いの存在を必要としていたんだ。オーランドはユーモアがあるし、若いのにすごい役者だと思うよ」
それにしても、ジョニー・デップがジェリー・ブラッカイマーのブロックバスター映画に出るなんて、「映画界であり得ないこと」リストの筆頭を飾りそうな事件では?
「僕自身も驚いた。というのも、僕のところにはこういうタイプの役はめぐってこないと思っていたからさ。でも、ブラッカイマーに偏見があったわけじゃない。ただ、よく知らなかったんだ。フランスまで2回も会いに来てくれた彼の印象は、ナイス・ガイって感じかな。実際、その通りだった。僕がこの映画を台無しにしてしまうんじゃないかと心配していたディズニーのお偉方をなだめて、好きにさせてくれたんだからね。この映画に出ることを決めたのは、面白そうだと思ったからだよ。もちろん、『ラスベガスをやっつけろ!』よりは子供たちに楽しんでもらえそうだっていうのもあったけどね(笑)」